出版社 : 早川書房
救命ポッドの冷凍睡眠から目覚めたギアリー大佐は愕然とした。なんと救出されるまでに百年がたっていたのだ。しかも、わが身を犠牲にして味方を脱出させた軍神にまつりあげられている始末。そんな彼に与えられた任務は、敵の本拠星系に攻めこんだものの大敗し、満身創痍となった艦隊を、司令長官として無事に故郷へと連れ戻すことだった!周囲を埋め尽くす強大な敵艦隊を前に、はたして彼がとった驚くべき奇策とは…。
人づきあいが苦手な14歳のジャックは、交通事故にあってから、不思議な体験をするようになった。人が消えうせるのを見たり、奇妙な会話をきいたりするようになったのだ。診察を受けるためニューヨークを訪れたジャックは、グランドセントラル駅で謎の少女ユーリに出会う。そしてユーリといっしょに向かった駅の地下9階、そこは死者の世界への入り口だった!ジャックとユーリは、昔、不慮の死をとげたジャックの母を探そうと決めて、地下の住人に話をきいていく。しかし、おそろしい番人たちが、ジャックを追いはじめていた…ジャックは母と会えるのだろうか、そして無事にもとの世界に帰れるのだろうか?アメリカ探偵作家クラブ賞(エドガー賞)最優秀ジュヴナイル賞を受賞したミステリ・ファンタジーの感動作。
すべては、若き古美術商アレックス・ベネディクトと、その相棒の美人宇宙船パイロット、チェイス・コルパスのところに持ちこまれた、ひとつのカップから始まった。一見したところありふれたカップだったが、コンピュータの解析によれば、およそ9000年前に造られたものと判明したのだ。しかもそこに描かれている古代文字から、抑圧的だった当時の地球を脱出してユートピアを築くべく出発したものの、その後消息を絶ち、いまでは伝説と化している宇宙船“探索者”の備品であることが確定したのである!もし、いまも銀河のどこかを漂っているこの宇宙船を発見できれば、巨万の富は約束されたようなものだ。しかも“探索者”が見つかれば、彼らが移住したといわれる植民星マーゴリアも発見できる可能性はきわめて高い。そうなれば、史上空前の大発見だ!かくて調査を開始したアレックスは、かすかな手掛かりから次々に新事実を手繰りだしてゆく。そしてアレックスの指示のもと、チェイスは愛機“ベルマリー”を駆ってリムウェイを飛び出し、テレパシー能力を持つアシユール人の惑星や、人類の故郷である地球にまで赴いて調査を続けるが…!?2007年ネビュラ賞最優秀長篇部門受賞作。
ハゾスは、シルヴィアが生んだ赤子を殺すことができずロベルトに託し、公けには、王女は想像妊娠であったとして、赤子の存在を隠蔽した。そして、彼女の不祥事に関与した者たちを訊問し、事実関係を詳らかにしてゆく。苦悩するグインは、シルヴィアと話し合おうとするのだが、彼女からは憎しみに満ちた罵声を聞くばかりで、ついにグインは訣別の言葉を告げる。そして皇帝アキレウスも大きな決断を迫られようとしていた。
気まぐれに駅の四番線ホームに現われて易を立てる謎の老人、通称ヨンバンセン。よく当たるということからしだいに評判を呼ぶことになり、その正体に迫ろうとする者まで現われる!?東京の下町を舞台にした、異色の連作人情ミステリ第2弾。
2161年、恒星間航行を可能にした人類は銀河系全域に進出し、8000におよぶ独立国家の連合体、銀河連合を作りあげていた。その開発の尖兵となったのがクラッシャーと呼ばれる集団だった。依頼があれば、航路の整備から惑星改造にいたる危険な任務を請け負う宇宙のなんでも屋である。その中でもトップクラスの腕利きであるジョウは、反乱の起こった連帯惑星ピザンへと、王女の依頼で、自らのチームを率いて向かうことになる。
惑星改造技術の発達により、人類が居住できなかった惑星にも植民が可能になったため、それまでの惑星国家は、太陽系全体をひとつの政府が統治する太陽系国家へと生まれ変わっていた。そんな太陽系国家のひとつタラオの大統領から、直接ジョウのチームに、銀河系の至宝と呼ばれる稀少動物、ベラサンテラ獣の護送という依頼があった。予想される宇宙海賊の襲撃を避けるため、ジョウはチームのアルフィンに陽動作戦を命じる。
モスクワのゴーリキー公園で雪の下から男女三人の射殺体が発見された。いずれも顔面を刃物で削ぎ落とされ、指先も切断されていた。捜査を命じられた民警の主任捜査官レンコは、人類学研究所に被害者の顔の復元を依頼する一方、被害者の遺留品から運命の女性イリーナと出会う。反体制派の彼女に次第に魅かれていくレンコ。そして捜査線上に浮かぶアメリカ人の毛皮商…ソ連社会の暗部をかつてないリアリティで描いた問題作。英国推理作家協会賞受賞作。
ゴーリキー公園の顔と指のない三つの死体ーそれは誰も触れることの許されぬソビエト社会の根深い矛盾を象徴していた。ようやくレンコは殺人犯の正体をつかむが、検事局長から捜査の終了を命じられる。彼はけっして掘り起こしてはならない過去を発見してしまったのだ。主任捜査官の地位さえも奪われたレンコは、メーデーの夜、ついに犯人と対決する。そして彼が海の彼方で見た、驚愕の真実とは?英国推理作家協会賞受賞作。
1997年、人類は星々に対する情熱を失い、宇宙開発計画は長い中断の時期に入っていた。星にとり憑かれた57歳のもと宇宙飛行士マックス・アンドルーズは、そんな世界で無為の日々を過ごしていた。しかし、木星探査計画を公約に立候補した女性上院議員候補の存在を知ったとき、彼の人生の歯車は再び動き始める。もう一度、宇宙へー老境に差しかかりつつも夢のために奮闘する男を、奇才ブラウンが情感豊かに描く古典的名作。
近未来の高度管理社会。15歳の少年アレックスは、平凡で機械的な毎日にうんざりしていた。そこで彼が見つけた唯一の気晴らしは超暴力。仲間とともに夜の街をさまよい、盗み、破壊、暴行、殺人をけたたましく笑いながら繰りかえす。だがやがて、国家の手が少年に迫るースタンリー・キューブリック監督映画原作にして、英国の二十世紀文学を代表するベスト・クラシック。幻の最終章を付加した完全版。
第一次大戦末期の1918年。ロシア革命の影響を受けて、アメリカ国内では社会主義者、共産主義者、アナーキストなどがさかんに活動し、組合活動が活発になる一方で、テロも頻発していた。そんな折り、有能な警部を父に持つボストン市警の巡査ダニー・コグリンは、インフルエンザが猛威をふるう中、特別な任務を受ける。それは、市警の組合の母体となる組織や急進派グループに潜入して、その動きを探ることだった。だが彼は、捜査を進めるうちにしだいに、困窮にあえぐ警官たちの待遇を改善しようと考えるようになる。一方、オクラホマ州タルサでは、ホテルに勤めていた黒人の若者ルーサー・ローレンスがトラブルに巻き込まれてギャングを殺し、追われる身となっていた。ボストンにたどり着いたルーサーはコグリン家の使用人になり、ダニーと意気投合する。ある日、ダニーは爆弾テロの情報を得て、現地に急行する。その犯人は意外な人物だった…。大反響を巻き起こした『ミスティック・リバー』『シャッター・アイランド』の著者が、満を持して放つ画期的大作。
第一次大戦は終結した。だがボストンでは、警官の待遇改善に意欲的だった市警本部長が急死し、ダニーの運命は大きく変化する。強硬派の後任の本部長によって、彼はスト破りの部署に異動させられたのだ。1919年のメーデーの集会の後、ダニーは暴行を受け、大怪我を負ってしまう。苦難の中で彼は、コグリン家の使用人だった女性を心から愛していたことを知った。二人は結婚し、ルーサーを含めた固い絆ができあがる。だが、ダニーの名付け親で黒人を憎むマッケンナ警部補が、ルーサーの過去を暴き出していた。マッケンナはルーサーを脅して、黒人の地位向上をめざす組織に壊滅的な打撃を与えようとする。さらに、市警の警官たちのあいだではスト敢行の機運が高まり、大きなうねりとなっていった。そしてついに警官たちはストライキを決行、ボストンは大混乱に陥る。しかも、その騒乱の先には、ダニーとルーサーにさらなる試練が待ち受けていた!動乱の時代のボストンを舞台に、壮大なスケールで描く家族と愛と友情のドラマ。
広告代理店勤務の男に突然訪れた災厄。原因不明の病、余命1カ月の宣告…。男は決意する、愛する妻と最期の旅に出ようと。思い出の地の頭文字を集め、AからZまで順番に。そこで二人は出会う。過去の自分たちに。盲目の老紳士に。神秘的な遊牧民の老女に。そして、砂漠の駱駝に…。やがて、スピリチュアルな旅の果てに、二人には運命の刻が-。
忠実な臣下たちとの再会を喜びつつケイロニアに帰国したグインは、国民から盛大な歓呼の声をもって迎えられた。そしてなによりも、グインの長の不在に心ふさいでいたアキレウス帝の喜びようはひとしおであった。しかしそのような光り輝く歓喜とは裏腹に、サイロンの王妃宮の奥深くで、シルヴィアは要人にあるまじき乱行に耽溺した結果、誰とも知れぬ男の子供を宿し、事態の急を知ったハゾスによる追及のさなか、出産する。
「私は人類をたいらげたい」-火星やまと基地の隊員4名が体験した、あまりにもあっけないファーストコンタクトを描く表題作、太陽系開拓時代に孤独な宇宙船を駆るニートの日常「Slowlife in Starship」、いつのまにか不老不死を獲得してしまった人類の戸惑い「千歳の坂も」、そして傑作長篇『時砂の王』に秘められた熾烈な闘いを描くスピンオフまで、心優しき人間たちのさまざまな“幼年期の終り”を描く全5篇収録。
ブルックリンに住む二人の少年ディランとミンガスは、同じストリートに住み、一緒に育った親友だ。しかし、ディランは白人、ミンガスは黒人。アメリカン・コミックや音楽への情熱で結びついていても、その友情には多くの試練が待ち受けていた。ある時、偶然にも空飛ぶ指輪を手に入れたディランは、ヒーロー「エアロマン」に変身して、ミンガスとともに街を守ろうと試みるが、それは二人の関係の転機となる-。ファンク、パンク、ヒップホップ、そしてグラフィティにドラッグ。全米批評家協会賞受賞作家が四年間の沈黙の末に発表した、70年代ニューヨークの息づかいが聞こえる傑作長篇。
現世に並びなき傑物と謳われたラニスター家当主タイウィン公亡き後、「鉄の玉座」の実権は、公の娘である王母サーセイ太后が握った。だが、王都の小評議会の参議を自らの取り巻き連で固めたサーセイは、専横のかぎりをつくし、臣民の信頼をも失っていく。一方、父タイウィン公を喪った責めを自らに向ける隻手の騎士ジェイミーは、「王の楯」総帥として禁欲的に自らの信ずる道を進む。それがため姉サーセイと反目し、なかば王都を追われる形で戦場へ戻ることになる。大陸の西に位置する鉄諸島では、前王の弟「鴉の眼」ユーロン・グレイジョイが御座につき、水軍を率い王土南部の略奪を開始した。さらに最南部のドーンでも反逆の胎動が始まっていた。機略に長けたマーテル家の大公ドーランは雌伏してその時を窺う…。七王国の大陸ウェスタロスは、いまや双獅子の玉座を狙う鴉どもの跳梁する下剋上の地と化した。新たな展開を見せる現代最高のファンタジイ・シリーズ、第四弾。
西暦二〇三八年、スリランカ-インド間を結ぶ巨橋を拠点とする「マザーズ教団」は、難病の子どもたちの末期医療に従事していた。教団代表の葵飛巫女はインド州軍の襲撃を予測し、巨橋を崩壊させて教団ごと避難する決意をする。攻撃開始の日、それぞれの理由で巨橋に居合わせた4人の男たちは、飛巫女の素顔と、人類の未来を左右する真の目的を知った。医学、財産、電脳、怪力-それぞれの要素に恵まれた男たちは、彼女のため命と才覚のすべてを賭け、太陽系最大の建造物・軌道エレベータの建造に挑む!架空戦記の俊英、初の本格SF。
サンディエゴ市警殺人課の刑事ロビー・ブラウンローは三年前、火事になったホテルから客を救おうとして、六階の窓から落下した。彼は奇跡的に一命を取りとめるが、頭を強く打ち、その影響で感覚に変化が生じることになった。共感覚という知覚を持つようになり、話し手の言葉にこめられた感情が色と形を伴って目に見えるようになったのだ。相手が嘘をつくと赤い四角が見えるため、嘘を見破れるようにもなった。彼は今、ひとつの事件の捜査にあたっていた。サンディエゴ市倫理局捜査課の捜査官ギャレットの死体が自動車の中で発見されたのだ。当初は自殺の可能性も考えられたが、何者かに至近距離から銃で撃たれたことが判明した。さらに、ギャレットが市を揺るがす内容のビデオディスクを持っていたことが明らかになる。そこには、売春婦のもてなしを受けている市の有力者たちの姿がおさめられていた。ロビーは特別な知覚を生かしながら有力者たちの調査を進めるが、やがて意外な事実が浮かび上がってくる…。『サイレント・ジョー』『カリフォルニア・ガール』でアメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長篇賞を受賞した俊英が、斬新な設定で描く会心作。