出版社 : 早川書房
夫の不貞の決定的証拠を掴んでほしい。依頼人の女性マーリーンはスペンサーにこう懇願した。彼女の夫トレントンは世界的大企業の最高財務責任者だという。調べを進めるうちに明らかとなる、奇妙な男女関係。やがてトレントンが会社で死体となって発見され、さらに同社の警備部長まで不審な死を遂げてしまう。事件を追うスペンサーは、巨大企業の暗部に足を踏み入れることに…。スペンサーが専門外の事件に挑む異色作。
公園のブランコから女性の死体がぶらさがっているとの報を受け、ダイヤモンド警視は現場に急行した。自殺かと思われたが、まもなく女性が絞殺されたうえで吊るされたことが判明する。元夫、現在の恋人、レストランのヘッド・ウェイター、ビジネスマン、次々と容疑者が浮上するが、ダイヤモンド自身は捜査に集中できない状況に陥っていた。彼のもとに不可解な恋文や贈物が執拗に届いていたのだ。ダイヤモンドは今も亡き妻を愛しているというのに、誰がこんないたずらを?そんななか、失踪していた元夫が首吊り状況で死体となって発見される。それは類例を見ない首吊り処刑の連鎖だった…。男と女の愛と業を謎に絡め、英国ミステリ界の巨匠ラヴゼイが放つ意欲作。
南西諸島エリアには政府により急速に観測網が整えられ、リアルタイム三次元音波探査システム“RETTDASS”が稼働し始めた。だが、それらの機器を駆使した科学者たちの警告も空しく、海底噴火によって初の犠牲者が出てしまう。岳志は弟の療養のため石垣島を訪れていたが、南西諸島の地下異変は日ごとに激しさを増していた。そして遂にキンバーライトによる大噴火が始まり、柚の身を案じる岳志は再び与那国島へ向かうー。
“ISEIC理論”を実践して琉球を救うには柚と岳志の協力が不可欠と、科学者たちは結論した。彼らの案内で、新型の大深度深海掘削船“いざなみ”の観測・研究施設を訪れた柚と岳志は、琉球の地殻変動の末期的状況を知る。南西諸島が次々と地震と噴火に飲み込まれ、与那国島にまで沈没の危機が迫る中、科学の成果と神への祈りを統合した大計画が、大地の怒りを鎮めるべく動き出す…生命圏のすべてを描破する全4巻、完結。
古代機械によって記憶を「修正」されたグインは、自分がケイロニアの豹頭王であることを思い出したが、逆に、パロの内乱前後からの最近の記憶がなくなってしまった。あれほど可愛がっていたスーティのことまで忘れてしまっていた。それはフロリーに、ミロク教の聖地ヤガへの旅立ちを促すようでもあった。そしてグインは忠実な臣下の迎えを得て帰国する。しかし彼を待ち受けていたのは、必ずしも歓喜の声だけではなかった。
あたしみたいにピーチセクシーな女っていないよね?滑らか素肌にギャラクシーXガールラメTシャツとタイトパンツ。トラブルシューター、ミミ、21歳。700もの種族-ダキツキ族、外側族、ドテチン族などなど-が入り乱れ、6つの社会階層を成す世界で、スラム育ちのあたしはしたたかに生きてる。違法コントチャンネルを潰す依頼をこなしたり、コンビニ老婆殺害事件に挑んだり。でも世界を揺るがす予測不能な大事件に巻き込まれてゆくなんて。
2020年、中国、チベット、カザフスタンに国境を接する山岳国家カルジスタンのキズルダー村では、先祖伝来の棚田を耕し、昔から変わらぬ生活を続ける人々が暮らしていた。中国系女性チュン・メイは、そんな村の女性のために、町にでかけてドレスや化粧品を調達し収入を得る“ファッション・エキスパート”だった。ある日、キズルダー村で、新システム“エア”のテスト運用が行なわれることになった。“エア”は脳内にネット環境を構築し、個々人の脳から直接アクセスを可能にする新しいネットワーク・システムで、一年後の全世界一斉導入が予定されていた。だが、テストの最中に思わぬ悲劇が起きる。メイの隣人タンおばあさんが、システムの誤動作が原因で事故死してしまったのだ。テスト中、メイは“エア”内でタンおばあさんと交感、彼女の全人生を体験する。それ以降、おばあさんの意識はメイの脳内に住みついてしまうが、まるでその代償であるかのように、メイは偶然“エア”にアクセス可能なアドレスを取得する。それをきっかけにメイの人生は急転回を見せはじめる。“エア”がメイに、そして人類にもたらすものとは…。SF界を代表する物語作家が、異質なテクノロジーと出会い、アジアの小村から世界を変えることになるひとりの女性の人生を、ストレートに描いた巨篇。英国SF協会賞/アーサー・C・クラーク賞/ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア賞受賞。
西暦2032年、未曾有の地殻変動により南西諸島に沈没の危機が迫っていた。領海と海底資源の既得権確保を優先する政府に対し、植物生態学者・南方洋司ら6人の科学者は、地殻変動阻止のため極秘プロジェクトを開始。彼らと共に与那国島を訪れた共感覚を持つ青年・伊波岳志は、島の巫女的存在である後間柚と出会う。彼女は大地の怒りを鎮めるため“14番目の御嶽”を探していた…日本SF史上最高の科学小説、待望の文庫化。
岳志が発見した“14番目の御嶽”への祈りを通して、柚は「大地の炎が琉球を焼き尽くす」という神の予言を聞く。その頃、水深6000mの南西諸島海溝では深海調査艇“しんかいFD”の武田洋平が、巨大な人工構造物を発見していた。“14番目の御嶽”との類似を検証する科学者たちの目的は、地殻変動を食い止める唯一の鍵、南方が提唱する“ISEIC(圏間基層情報雲)理論”の実践にあった。だが、海底火山に噴火の瞬間が迫る。
もはや来ることのない列車を待ち続ける老人の狂気と悲しみを描く「北部行きの列車」。まだ見ぬ家族から初めて手紙をもらった孤児の落胆を綴る「郵便受け」。まるで著者自身の無関心を象徴するかのような表題作「どちらでもいい」ほかに加えて、『悪童日記』へのつながりを思わせる単行本未収録の初期短篇「マティアス、きみは何処にいるのか?」を収録。沈黙をつづける著者の絶望と喪失感が色濃く刻まれた、異色の掌篇集。
ダーティペア・イン・ソード・アンド・ソーサリー!?バーバリアン・エイジは、超人気テーマパーク。最新テクノロジーで大陸まるごとひとつをヒロイックファンタジーの世界に仕立てあげてしまっているのだ。ところがここに犯罪組織が介入しているとの情報があり、WWWAのトラコン、ユリとケイが潜入捜査に乗り出した…しかし道は険しかった。ロバート・E・ハワードに捧げる、シリーズ初のヒロイックファンタジー。
2037年6月8日、国連平和維持軍のビセサは“断絶”と呼ばれる現象で、アフガニスタンの国境地帯からもうひとつの地球、ミールに移転させられてしまった。そこは、200万年にわたるさまざまな時代と土地がつぎはぎにされた世界だった。アレクサンドロス大王やチンギス・ハンが覇権を争うミールで5年にわたり苦闘したビセサは、なんとか故郷の地球に帰還する。ところが、戻ったのは、自分が失踪した翌日、6月9日のロンドンだった。その日、地球を史上最悪の大災害が襲った。突如、太陽が異常をきたし、太陽嵐を起こしたのだ。そのため、未曾有の磁気嵐にみまわれた地球では、あらゆる機器が壊滅的打撃をうけて大混乱となり、多数の死傷者が出た。だが、これはたんなる前触れにすぎなかった。月面にいる若き孤高の天文学者ユージーンは、さらに強大な太陽嵐が2042年4月に起こると予測した。それだけの規模の嵐になれば、地球上のあらゆる動植物はもちろんのこと、人類が生き延びることは不可能だ。そこで、科学者たちは前代未聞の大計画を企てた。宇宙空間に地球と同じ大きさの盾を設置し、太陽の巨大なエネルギーを防ごうというのだ。途方もない計画の実現に向け、科学者、宇宙飛行士が結集し、たった4年あまりで“太陽の盾”を完成させようとするが…英国SF界の新旧ふたりの巨匠、クラークとバクスターが、『2001年宇宙の旅』に始まる“宇宙の旅”シリーズを新たな角度から描く〈タイム・オデッセイ〉シリーズ、待望の第二弾。
血を流して横たわる被害者。何者かに頭を撃ちぬかれたのだ。そのかたわらには三枚のコインが…二十年前にボストンを震撼させた連続殺人鬼が犯行を再開した。かつて捜査を担当したサニーの父、フィル・ランドル元警部のもとにも、犯人からと思われる人を食ったような手紙が届く。闇に消えた殺人鬼が舞い戻ったのか?父に協力するサニーは、一人の男に焦点を絞り、危険な賭けに挑む。息づまる対決を描くシリーズ最新作。
火星で目覚めた素性不明の男は、自らを永久追跡刑事と称した。この世界を創造し、自由に改変する能力を持つ犯罪者・ボルターを追っているという。戦略情報局のケイ・ミンはその話を疑いつつも、彼の真摯で誠実な態度に惹かれていく。ボルダーの巧妙な世界改変による攻撃に対抗しつつ絆を深め合う二人だが、情報局の人工知性体・マグザットの介入も加わり火星崩壊が迫るー虚実混交の中で信頼と陰謀がせめぎ合う傑作長篇。
女性作家としてブッカー賞最年少受賞!喪失と再生をめぐる家族の物語。少女サイは、インド人初の宇宙飛行士を目指していた父を母と共に交通事故で亡くすと、母方の祖父である偏屈な老判事に引き取られた。老判事はすでに引退し、ヒマラヤ山脈の麓の古屋敷に隠居していたが、孫娘の出現は判事と召使いの料理人、そして近所の老人たちの慰めとなるのだった。やがてサイは、家庭教師のネパール系の青年ギヤンと恋仲になる。急速に親密になっていくふたりだが、ネパール系住民の自治独立運動が高まるにつれ、その恋には暗雲が立ちこめる-。時代の流れに翻弄されながらも力強く生きる人々の姿をコミカルに、チャーミングに描きあげるインド系著者の出世作。全米批評家協会賞も受賞。
タケルは、荒野をさまよう機械どもを狩り、ジャンク屋に部品を売り払うのを生業とする狩人だ。ある日捕らえた機械が突然奇妙なことをしゃべりだし、タケルは半信半疑ながらその提案に乗って、花屋のカーシャと電脳調教師の鴉とともに荒野の果てを目指すことになってしまう。人類の技術文明が崩壊し、荒野には危険な機械どもがさまよう混沌の未来、衰退の一途をたどりつつある人類は、起死回生の一手に打って出るのだが…。
天真爛漫な美女マリーナ、テレビ番組ディレクターのダニエール、そしてフリーランスのライターであるゲイのジュリアスは大学時代からの親友。みなニューヨークで生活し、30代になった今も仲良くしていた。それぞれ恋愛や仕事に悩んでいても、都会の忙しない日々は将来を考える余裕する与えてくれない。だが、新雑誌創刊を目指すカリスマ編集者シーリー、そして大学をドロップアウトした青年の出現によって、停滞していた三人の人生に変化が。マリーナの父で著名ジャーナリストのマレーをめぐるスキャンダルに巻き込まれ、友情に亀裂が走り、遂には大破局の時が…。鋭い人間洞察と重厚で野心的な物語が英米で絶賛された傑作長篇。ブッカー賞候補作。
美貌の熾天使セラフィの任務は、美神アフロディトの子を殺し地上に逃れた悪竜ジラフを捕らえ、天界の霊的秩序を脅かす危険を除去することだった。ゴビ沙漠横断に挑む1931年のシトロエン探険隊、戦火に包まれた紀元前48年のアレクサンドリア、そしてシェイクスピアが新作悲劇の想を練る1599年のロンドンへーセラフィの追跡行は、やがて虚実の境界を超え、『ハムレット』を侵犯していく。日本SF屈指の傑作、ついに復刊。
タイスを脱出したグイン一行は、それぞれの思いを胸にパロに入った。クリスタルでグインはリンダと再会を果たすが、リンダの喜びとは裏腹に、グインの記憶が戻ることはなく、タイスでの負傷の手当てとともに、ヨナによって催眠術を使った記憶の治療が開始された。ところが、リンダの手がグインに触れたとき“何か”が起こり、二人は通常の人間には見えるはずのない、時空を超えた世界をかいま見る驚異に遭遇するのだった。
小説家アラスター・グレイは、グロテスクな装飾が施された一冊の書を入手する。『スコットランドの一公衆衛生官の若き日を彩るいくつかの挿話』と題されたその本は、19世紀後半の医師による自伝だった。それは、実に驚くべき物語を伝えていた。著者の親友である醜い天才医師が、身投げした美女の「肉体」を救うべく、現代の医学でさえ及びもつかない神業的手術を成功させたというのだ。しかも、蘇生した美女は世界をめぐる冒険と大胆な性愛の遍歴を経て、著者の妻に収まったという。厖大な資料を検証した後、グレイは小説家としての直感からこの書に記されたことすべてが真実であると確信する。そして自らが編者となってこの「傑作」を翻刻し、事の真相を世に問う決意をした-。虚か実か?ポストモダン的技法を駆使したゴシック奇譚。ウィットブレッド賞、ガーディアン賞受賞。