出版社 : 春風社
老いた父をめぐる風景 北フランスの町、ペリクールで一人暮らしをしている老父アブー。旧家の末裔である父、絶対的な家父長として君臨していた父が、今や老いて認知症になっている。この父をどうしたらいいか。子どもたちにとって必ずしも愛しい父ではないが、立派に生きた過去を持つ父を交代で世話をし、その様子をメールで報告し合う。そこに子どもたち一人ひとりのこれまでの人生が自然と浮かび上がる。 父と子どもたちの関係、老い、介護を巡る物語。
民衆に触発された植民地朝鮮の文学世界。“近代朝鮮文学は民衆の力を感知する感性の鍛錬現場であった。”日本語の研究ではあまり扱われてこなかった作家や雑誌も取りあげ、日本における朝鮮文学・韓国文学の認識を一新、画期的役割を果たす一冊。
現代アメリカ文学を代表する作家の長編第二作(Outer Dark)の初訳。アメリカ南部に生きる人々の暗澹たる世界を活写する。 アウター・ダークー外の闇 訳者あとがき・解説
三世代の女性の日常を繊細な筆致で描いた名作「プレリュード」。生前には出版されなかったそのロング・ヴァージョン、初の邦訳。 アロエ ケザイアとトゥイ パットのこと 遠い場所、遠い声ー『アロエ』解題
最初に出版社に送った初稿版とそのゲラ刷りを大幅に改稿して出版した改稿版のテクストの配置順序の違いを詳細に比較検討。 序章 改稿に伴う偶然性と編集性 第1章 再帰的な語りの解体ー再配置以前の作品冒頭部 第2章 並置的な語りの構築ーテンプルの挿話の再配置 第3章 ホレスの経験の変貌ー出来事の時系列の再配置 第4章 ホレスの観察の棄却ー登場人物の呼称と再配置 第5章 遡及的記述の尾骶骨ー成就しない予示と再配置 終章 再読に伴う断片化と未完化 補章1 時系列の指標の加筆 補章2 サートリス家の変貌 補章3 ふたりの母親の変貌
初期から後期までのオースティン作品における笑いの性質が変化する過程を、笑いの対象となる登場人物や事件に焦点を絞り検討する。 序章 第1部 第1章 暴力と犯罪にまみれた世界 第2部 第2章 娘の結婚に躍起となるミセス・ベネット 第3章 愛とは無縁のミスター・コリンズ 第3部 第4章 自分を中心に世界が回る─ミスター・ウッドハウス 第5章 劣等意識に囚われるエルトン夫妻 第6章 オースティンの人間哲学を読むーミス・ベイツ 第4部 第7章 優劣に囚われるエマ 第8章 エマと不機嫌な人々 第9章 『エマ』における「施し」と見返り
知らないのは、人間だけー。どのくらい時間が経ったか分からなかったけど、急に目が覚めた。何かを聞いたのだ。ガラス戸からの薄明かりの中で、息を殺して聞くと、確かにカローン、カローンという音がはっきり聞こえた。「何、これ」と、寝たまま、天井に向かって小さな声で言ってしまった。「うん、何だろう」トトの声が斜め上から聞こえ、彼がすでに窓際に立って外を見ているのが分かった。音はだんだん大きくなり、違う音も混ざってくるような気がした。絶対にこの家の中から聞こえると思った。
ジョイスの作品を「他のテクストとの関係」「視覚芸術との関連」「歴史記述の問題」という三つの観点から解釈し、新たな読みの可能性を提示する。テクストの“細部”と“外部”を大胆に往還するユニークなジョイス論!
モダンスタイルで装飾された銀行家の室内、化粧芬々たる女性たちのあらゆる富を動員した貴族社会の大夜会、伯爵夫人にふりかかる野心家の恋……パリ上流社会に「挑戦」する作家の物語。80年ぶりの新訳。
文学好きの母の望みは“僕”が作家になること。幸せに満ちた少年時代に訪れた悲しい別れまでの日々が、言葉の力によって瑞々しく蘇るー。『失われた時を求めて』を換骨奪胎しつつ、人生と文学への愛を謳う。マルセル・プルースト賞受賞の現代フランス作家による小説、本邦初訳。
冒頭の4パラグラフに、従来の解釈に基づいた「解釈1」と、より奥深く読み込んだ「解釈2」を提示。ジョイスの企みを明らかにする。
バルザックの歴史小説『リュジェリーの秘密』の新訳とこの小説に至る私信、小品、断片等を収録。リアリスト・バルザックの面目躍如。 1 作品集 一 ヴィクトル・ラティエ宛の手紙(1830年7月) 二 クロッキー「パリの小僧のお礼の仕方」 三 ファンタジー「石のダンス」 四 「パリだより」第11信 五 「物乞うひと」 六 ジュルマ・カロー宛の手紙(1832年1月) 七 「パリからジャワへの旅」抄 八 ハンスカ夫人宛の手紙(1833年3月) 九 「神の木鐸たち」 十 ハンスカ夫人宛の手紙(1836年3月) 十一 ハンスカ夫人宛の手紙(1836年10月) 2 リュジェリーの秘密─哲学研究 第一章 シャルル九世の一夜 第二章 マリー・トゥシェ 第三章 策略対策略 付録 街路事典 人物紹介(登場順)