出版社 : 晶文社
1900年、夏。孤独と貧窮のなか、パリの安ホテルの一室で、オスカー・ワイルドはひたすら日記を書きつづけた。華やかな栄光と恐るべき破減に彩られた自らの運命をいまいちど甦らせるために-。人生の終局に立ち、地獄をみた男ワイルドがここに遺そうとしたものはいったい何か?爛熟の19世紀末を代表する作家の、死にいたる最後の日々を、濃密に、鮮やかに描ききった傑作小説。サマセット・モーム賞受賞作。
物語はある一族の一枚の写真から始まる。中央には、ドーン家の頂点をなす女ソフカ。そして彼女をとりまく4人の息子と娘たち。放蕩を尽くした夫はすでに亡い。ソフカは、このブルジョワ家庭を律する厳しい意志の女として生きてきた。だが、そのからだの奥底には、もう一人の別の女がひそんでいる-。倦怠。反目。情熱。孤独。…ドーン一族の男と女が、それぞれにたどる人生。4枚の結婚式の写真が、抗いがたい血の宿命を絵解きしていく。
街中の白い目を逃れて、ケヴィンとセイディーが故郷ベルファストから駆け落ちして4年。お金も、家も、たしかな仕事もなにも持っていない。ロンドンへ、リヴァプールへ、ふたりは、自分たちの本当の場所をさがして移り住む。やがて、ちいさな新しい家族ブレンダンも加わった。だが、ようやく落ち着いたチェシャーの田舎暮らしもつかのま、農園主の突然の死が、一家の運命をまたもや変える…。若い夫婦と赤んぽう、そして犬のタムシンは、ポンコツのワゴン車を改造して、ふたたび旅立っていく。カトリックの夫、プロテスタントの妻。旧世代がけっして越えることのできなかった、あの厳しい宗教的対立を、この若い夫婦は身をもって乗りこえようとする。イギリスの女性作家ジョアン・リンガードの感動の5部作、待望の完結篇。
16世紀フランス。新教と旧教が激しくせめぎあう覇権争いの時代。この歴史の舞台で、人びとはいかなる青春を生き、どのような生を閉じたか。嵐は、ピレネーの小国に育つ少年アンリを巻きこんで、首都パリへと連れさる。ルーヴル宮を背景に、アンリとヴァロワの王女マルゴをのせて、愛と政略と野望の人間ドラマは展開する。一方に『エセー』の賢人モンテーニュとアンリの出会いを配しつつ、苛酷な宗教戦争の真只中を生き抜いたアンリ四世の躍動する青春をダイナミックに描きだす歴史超大作。
ベティさん、35歳にしてめでたく再婚。でも、戦時下の住宅難で住む家がない。ついに一家は、シアトルの街を脱出して島暮らしを決意する。生意気な思春期の娘たちとの愛と憎しみにみちた日々のたたかい。ひっきりなしにやってくる泊り客がまきおこす無数のゴタゴタ。そして、自然の恵みあふれる島に暮らす喜びや悩み…。陽気でタフなマクドナルド家の主婦がつづる、ユーモアいっぱいの生活記。