出版社 : 書肆風の薔薇
現代メキシコ最大の小説家が、近代的な意味における「小説」そのものの創始者にしてその変革者セルバンテスを、その時代的文脈において、そしてとりわけジョイスを初めとする現代の文化的冒険との関連において論じるとともに、読むこと=書くことの根源的な批判を企図した。極めて今日的なセルバンテス論の白眉。
メキシコの新しい文学の先駆者である著者がバタイユの『エロスの涙』に触発され、耐えがたい苦痛にあると同時に恍惚的な愛の儀式を偏倚で執拗な事物の描写を通して描きだした未聞の残酷怪奇譚。解剖学、写真術、心霊術、中国幻想、性愛術を巡る言葉が綯い交ぜとなって強迫的に読者を襲うヌーボー・ロマンの知られざる傑作。
本書は、シュティフター晩年の叙事詩的長篇小説で、さまざまな民族が神聖ローマ帝国のもとに統合され、次第に中世封建制度が確立してゆく雄大な乱世、12世紀のボヘミアとモラヴィアの地を舞台に騎手ヴィティコーが森の民とともに戦い、森の領主となり人々に尽し、居城を完成させるまでを、美しい情景描写を交えながら、淡々と、ときには静寂に充ち、ときには反復する旋律の鳴り響きとともに描いてみせる。単線的に発展するという「近代」の歴史観に背を向け、《永遠》を希求した文学作品を本邦初訳で贈る。第1巻は、人生への途上にある若者ヴィティコーが、深いボヘミアの森で少女の歌声を耳にするところから幕を開ける。その響きは、あたかも天より遣わされた天使の歌声のごとく…。
カリブ海域にフランス大革命の理想を広めるべくハバナを訪れたビクトル・ユーグ。彼につき従うキューバ青年エステバンと美しいソフィア。キューバを含むカリブ全域からフランス、スペインにまたがる世界を舞台に、3人の波瀾にみちた運命を語りつつ、《革命》への限りない情熱と深い幻滅を描ききった、現代ラテンアメリカを代表する作家の待望久しい大長篇小説。
故国ベネズエラでの政治的迫害をのがれて絶海の孤島に辿り着いた《私》は、ある日、無人島のはずのこの島で、一団の奇妙な男女に出会う。《私》はフォスティーヌと呼ばれる若い女に魅かれるが、彼女は《私》に不思議な無関心を示し、《私》を完全に無視する。やがて《私》は彼らのリーダー、モレルの発明した《機械》の秘密を…。二つの太陽、二つの月が輝く絶海の孤島での「機械」、「他者性」、「愛」を巡る謎と冒険。