出版社 : 朝日新聞出版
初の本格恋愛小説。娘の夢を見て欲しいと懇願する初老の奇術師、他人の弔辞を書きつづける女シナリオライター…他人との折合いが微妙にずれる男女がおりなす、かなり奇妙で怪しくて、チョッピリ背筋も寒くなる“四つの恋の物語”。
公園の隅に置かれた男の死体をめぐる話「帰郷」、慰安婦ゴゼイと徴兵を拒否した昭正の切ない愛に生者と死者の声がかさなる「群蝶の木」、日常生活を反転させる不安をえがく「剥離」「署名」など、『魂込め』で川端賞・木山賞を受賞した著者があらたに到達した四つの小世界。
横浜と梅県の殺人事件には、中国の裏社会で対立している秘密結社同士の抗争、ウイグル民族独立をめぐる内紛、公安当局の暗躍とが複雑に絡み合っていた。それぞれの思惑に挟撃される男たちが、タクラマカン沙漠の沙塵の彼方に見たものはー中国の闇の世界を抉り出す長編大作。
僕たちは殺人者になることを恐怖した。ゲーム感覚でオヤジを狩る高校生たち。土下座する謎の覆面男。格闘技道場に通う美少女。昔日の女相撲力士「あばらおり」。なぜ僕たちは暴力をふるわずにいられないのか…。暴力とそれを生み出す人間の闇を描き出す。第11回朝日新人文学賞受賞作。
バブル崩壊で会社も金も失い、妻子とも別れたろくでなしの中年男城所安男。心臓病を患う母の命を救うため、天才的な心臓外科医がいるというサン・マルコ病院めざし、奇跡を信じて百マイルをひたすらに駆けるー親子の切ない情愛、男女の哀しい恋模様を描く、感動の物語。
ヒコクミンは処刑せよー暗躍する秘密結社・千年王国の辣腕エージェント、ジャック・アマノは、ある処刑の執行を機に組織に疑問を抱き始める。殺された二人は無実だったのか?千年王国に反旗を翻す伝田家麿の正体は?国家の危うさと時代の深淵を鋭く描く長編ミステリー。
小学校のPTA役員として知り合った母親たち。離婚やいじめなど家庭や学校の問題に翻弄される中、東京女子マラソンでひたむきに走る選手たちに彼女たちが託したものはー。母、そして子ども、教師とそれぞれの心の葛藤をリアルに描き出す。他2篇を収録。
目白のアパート「紅梅荘」ふたたび!桃子、30歳。定職、ボーイフレンドなし。親友・花子は荻窪の実家のパテ屋から目白に戻り、小説家のおばさんは相変わらず辛辣。桃子の母親は、なんと恋愛、再婚!謎めいた隣人・岡崎さんは「ね、ね、おもしろいでしょ」が口癖…傑作『小春日和(インデイアン・サマー)』から10余年を経て語られる「彼女(たち)」の物語。
ただ、寄り添っているだけで家族でいられたらー夫の不在、子どもたちだけとの日々が、次第に「私」を不安定にさせていく。主婦としての平穏な暮らしの中でふと抱く漠とした孤独。現代家族の危うさともろさを浮かび上がらせた、著者のデビュー作。他4篇を収録。
「僕たちは探険隊みたいだね。離婚ていう、日本ではまだ未知の領域を探険するために、それぞれの役をしているの」-離婚を契機に新しい家族像を模索し始めた夫、妻、小学生の2人の息子たち。そのさまを優しく、切なく綴った物語。他3篇を収録。
海の明治維新。徳川艦隊旗艦・開陽丸艦長の沢太郎左衛門は、盟友の榎本武揚らとともに、新政府軍に抗戦する奥羽列藩同盟救援のため、嵐を突いて北へと向かった!戊辰戦争を背景に徳川海軍の興亡をダイナミックな筆致で描く海洋歴史巨篇。
混乱する本陣の中で、馬上に突っ立ち、武田勢の突進を望見した家康は、敵味方のあまりの強さの違いに呆れかえった。「死ぬう」思わず家康は絶叫した。それを聞いた石川数正が、すぐさま訂正した。「死ねーっ。死ねや、死ねーぇ」本陣は阿鼻叫喚の中にあった。英雄遁走歴史が変わった!苛烈な逆境をいかに打破するか。頂門の一針、必読の書。
勝った。家康はじめ、生き残った東軍将士は誰しもそう思った。-戦は終った。戦勝に酔う家康は、この長かった一日を想った。長くて短い日。-天下を獲るか、獲られるか…。おれが獲った。家康は忘れていた。「一寸先は闇」。策をつくして迷いに迷う!千思万考天下を獲れ。勝利と敗北から何を覚ったか。史眼冴える歴史巨編。