出版社 : 朝日新聞出版
周到な準備と計画で強盗殺人を遂行していく男ー。府警捜査一課の舘野と箕面北署のベテラン刑事・玉川が箕面で起きた広告代理店元社長の殺害事件を追うなか、手口の異なる新たな強盗殺人が発生する。被害者同士には面識があり、それぞれに士業詐欺とマルチ商法によって莫大な金を稼いだ二人は、情報屋の標的となっていた。さらには戦時中に麻薬密売組織に関わり、政治家とも昵懇だった新興宗教の宗務総長が殺害される。警察捜査を巧みに撹乱する男の目的とはー。舘野と玉川は、凶悪な知能犯による完全犯罪を突き崩すことができるのか?犯罪の最前線で追う者と追われる者を活写する新次元のクライム・サスペンス。
平成3年に発生した誘拐事件から30年。当時警察担当だった新聞記者の門田は、旧知の刑事の死をきっかけに被害男児の「今」を知る。異様な展開を辿った事件の真実を求め再取材を重ねた結果、ある写実画家の存在が浮かび上がるーー。質感なき時代に「実」を見つめる、著者渾身、圧巻の最新作。
ソ連時代のバルト三国・エストニアに生まれたラウリ・クースク。黎明期のコンピュータ・プログラミングで稀有な才能をみせたラウリは、魂の親友と呼べるロシア人のイヴァンと出会う。だがソ連は崩壊しエストニアは独立、ラウリたちは時代の波に翻弄されていく。彼はいまどこで、どう生きているのか?-ラウリの足取りを追う“わたし”の視点で綴られる、人生のかけがえのなさを描き出す物語。
京、青澄、土、しき。高校で4人は出会い、恋に落ちた。身体が発熱し、恋愛のぜんぶを出し尽くしてしまった。あの事件が起こるまではー。あれから15年。歪な力関係の社内恋愛をつづける「京」、娘を家庭に縛り付ける毒親から離れられない「青澄」、貧しい大家族のなかで育った「土」、両親の死から心身に不調をきたし社会との接点を失った「しき」-「あけましておめでとう!久しぶり。みんなどうしてる?」大晦日に送られた京からのメッセージが、どん底のいまを動かしはじめる。
サプライズパーティを予定する女性、長期休暇中の中年男性、治らぬ歯痛を抱える女性会社員…。眼の前の世界が不意にぐらりと揺らぐ瞬間を、さわやかに、艶めかしく、ユーモラスに描き出す。『カラフル』『みかづき』の著者が贈る、掌編を含む7編の愛すべき作品集!
「おけいさんは相変わらずだの。小鳥をあの子と呼んだり、売れた鳥を送り出したといったりな」「だって、ここにいる鳥たちは皆、大切な子です。命を持っているんですもの」わけありの夫と離縁し飼鳥屋を営む女主人のおけい。九官鳥・月丸との暮らしも順調なある日、店は大火に呑み込まれ…。たおやかで実直なおけいの選ぶ人生の道とはー?
世界文学を切りひらく著者による、はじめての朝日新聞連載小説の書籍化。ベルリンで一人暮らしをする美砂。隣人Mさんは東プロイセンで生まれ、終戦前にドイツに引きあげてきた。美砂はプルーセン人の来し方を聞きながら、第二次大戦前後のドイツと日本の歴史に引き込まれ、土地からの追放、戦時の死者数、国や民族、境界について考える。ある日、Mさんに誘われて、太極拳学校に行く。ロシア人富豪のアリョーナ、お菓子づくりのベッカー、英語教師のロザリンデと共に、鶴が羽を広げるように右腕を力強く上げる太極拳の技「白鶴亮翅」を習う。美砂はクライストの短篇「ロカルノの女乞食」を翻訳する。このドイツの作家はなぜホームレスの老女に注目したのか。ハムレット、グリム童話、楢山節考、世界の名作を女性の視点から読み直してみると……。
愛をもって垠を支えることを誓う方子。その二人を相次いで悲劇が襲うーさらに起こった関東大震災。一方でそれまでの苦難をかいくぐり、独立運動家・金南漢に惹かれて海を渡る孤独な女、マサ。戦前・戦中・戦後の日本と朝鮮半島を舞台に、二人の女性の生涯を描く、著者渾身の力作。
江戸日本橋の筆墨問屋白井屋は、太兵衛が大店にした。妻のお清は、太兵衛の女遊びに苦労させられたが、隠居後は夫婦で穏やかに暮らす。しかし、夫の死後に裏切りを知り、大激怒。妻に逃げられた年下の蕎麦屋の男に自らを重ねて、貢ぎはじめる。世間体を気にする長男、貧乏長屋に暮らしお清からの援助を期待する長女は、老母の恋を止めようとするが…。隠居した母の恋に振り回される兄妹、実家の隠し子騒動に苛立つ嫁、料理人修業中の孫娘ー。
いまから約1800年前、中国統一をめざし天下を三分して戦った熱い漢&女たちがいたー。老若男女の心をたぎらせてきた歴史ロマン『三国志演義』。しかし、全部読むには長いし、登場人物も多いしー。そんな悩みは、もう無用!特濃の8コママンガと極上の解説で、『三国志演義』のエッセンスがざっくりわかります。
誰もいない部屋にこそ、嘘のない生きざまが現れる。20代無職の男性、30代独身女性、40代ベンチャー企業家、80代の資産家。孤独死した人々が抱えていた様々な事情が浮かび上がるー『護られなかった者たちへ』の著者が贈るヒューマン・ミステリー。