出版社 : 朝日新聞出版
広瀬川流れる杜の都・仙台。この町に生まれ、上京して、現代で最も真摯に「私小説」を追求する作家となった著者が、故郷に戻り、みちのくの山や川を訪ねる。面白山、秋保、定義、琵琶首…川づたいの土地に息づく人々の営みを、成熟した眼と卓抜な文章で描く、連作形式による長編小説。
ぼくらは、ダイビングプールの底で顔が触れ合うぐらい近くにいた。里沙の目を見ると、ぼくの心臓がドクンと大きく鳴った。水の中では地上よりずっとよく音が伝わるんだ。だからぼくは心配だった。里沙に、ドクンって音が聞こえてしまったんじゃないかって。でも、そのときぼくは気付いたんだ。このドクンって音は、ぼくの体の中からだけじゃなく、すぐ近くにいる里沙からも聞こえていたんだってことにー100万部突破のベストセラー『いま、会いにゆきます』の著者が、淡い恋心、家族の絆をやさしく切なく歌いあげる奇蹟の物語。
親からも見捨てられ、通り魔や強盗障害を繰り返す無軌道な若者・伊豆見翔人は、逃亡途中で宮崎の山村にたどり着く。成り行きから助けた老婆スマの家に滞在することになった翔人は、近所の老人シゲ爺の野良仕事を手伝ううちに村の暮らしに馴染んでいくが…。現代の若者の“絶望感”をこまやかな心理描写で描き出す傑作長篇サスペンス。
1980年、本国で光州事件が勃発した頃、新宿のバーには在日朝鮮・韓国人の若者たちが夜ごと集い、酒を飲み、熱く語り合っていた。その中に、45歳のタクシードライバーと23歳の女性との、とびきり激しく、切ない恋があった…。超話題作『血と骨』の著者が描く感動の自伝的大河恋愛小説。
自分とはなんなのか?これからどう生きればよいのか?80年代を生きる在日朝鮮・韓国人の若者たちは苦悩と情熱を抱えながら生きていた。そして、タクシードライバー文忠明と若き朴淳花の愛も、新たな時代の流れに翻弄されてゆく…。感動の自伝的大河恋愛小説、堂々の完結。
骨董とは美か、ゲテモノか、はたまた妖怪か?古物に魅せられた3組の男女が幻のお宝を追って、九州の山里から萩、ロンドン、フィレンツェへとさすらいの旅に出た。盗掘や贋作など、なんでもアリの骨董世界に生きる人間たちの泣き笑いを、切なくおかしく描く長編小説。
特異な才能だけが突出した「天才」たちが社会生活に適応するため、船上セミナーに参加する。しかし、海上で彼らを待ち受けていたのは、トンデモナイ事態だった。ハリウッド顔負けのエンターテインメントを放ち続けるトカジの海洋エンターテンメント。
深川の老舗大店・桔梗屋のあるじ太兵衛と賭場の貸元・霊巌寺の猪之吉は偶然に出会う。ひとの目利きに厳しい太兵衛は、猪之吉の人柄を感じ取り、一献お付き合い願いたいと申し出た。大店のあるじと貸元の、肚をわった五分の付き合いが始まった。そんなある日、油問屋・鎌倉屋鉦左衛門による桔梗屋乗っ取りの企みが明らかになる。重い病を患う太兵衛は、桔梗屋の後見を猪之吉に託し、息を引き取る。やがて桔梗屋をめぐり、鎌倉屋の意を受けた乗っ取り屋一味と、猪之吉一党との知力と死力を尽くした闘いが始まるが…。直木賞作家の人情味あふれる時代長篇。
張り詰めた東京での生活に疲れ、すべてを捨てて上海に留学した有子。しかし、どうにも断ち切れぬ思いは、70年前、この地で生き、同じ思いを抱えた大伯父の幽霊を呼ぶ。枯れた玉蘭の花とともに…。交錯する二つの思いは時を越え、“過去”と“現在”を行き交う。人は恋愛の果てに何を得るのか。
時は明治末、挿絵画家・野々宮と東北訛りの女中サトは、富士の樹海から地底探検へと旅立った。光る猫、信玄の隠し財宝、謎の宇宙オルガン…。漱石&ヴェルヌの手に汗握るファンタスティックな続編。
梨香子は33歳のエリート銀行員。才色兼備の彼女が、ある日、年収200万円のオタクなライター・真一となぜか恋におちて、そして結婚ー。ちっとも噛み合わない二人の結婚生活に、男と女の本音が垣間見える。いまどきカップルの恋愛・妊娠・子育てとは…てんやわんやの結婚騒動記。
この男は人殺しです-。仮釈放となった中道隆太を待ち受けていた悪意に満ちた中傷ビラ。いったい誰が何の目的で?孤独な犯人探しを始めた隆太の前に立ちはだかる“障壁”とは?“罪と罰”を問うサスペンス巨編。
文公、襄公の相次ぐ死後、覇権争いによりさらに乱れた中国・春秋時代の晋。身を呈し仕えてきた祖国・晋から離れざるを得なかった士会を、新たな時代の風が…。下級の一兵士から名宰相に上りつめた天才的な兵法家の清冽な生涯を描いた傑作歴史巨編。