出版社 : 朝日新聞出版
天文方の高橋至時に師事し、測量の旅に出た伊能忠敬。彼は、ある武士の亡骸をめぐる不穏な騒動に巻き込まれ、やくざの岩吉や香具師の十蔵などの荒くれ者たちと過ごした激動の幼少期に思いを馳せた。それは、天文にほのかな興味を抱くきっかけにもなる出逢いだった…。
1964年元旦、長崎は老舗料亭「花丸」-侠客たちの怒号と悲鳴が飛び交うなかで、この国の宝となる役者は生まれた。男の名は、立花喜久雄。任侠の一門に生まれながらも、この世ならざる美貌は人々を巻き込み、喜久雄の人生を思わぬ域にまで連れ出していく。舞台は長崎から大阪、そしてオリンピック後の東京へ。日本の成長と歩を合わせるように、技をみがき、道を究めようともがく男たち。血族との深い絆と軋み、スキャンダルと栄光、幾重もの信頼と裏切り。舞台、映画、テレビと芸能界の転換期を駆け抜け、数多の歓喜と絶望を享受しながら、その頂点に登りつめた先に、何が見えるのか?朝日新聞連載時から大きな反響を呼んだ、著者渾身の大作。
小学生の頃、祖父はいつも秘密基地で壁新聞を作っていた。手品、図書館、ホレリスコード、移動遊園地ー大人になった今、記憶の断片をたどると、ある事件といくつもの謎が浮かんでは消える。第2回林芙美子文学賞受賞作「太陽の側の島」も同時収録。
埼玉県の片田舎、神室町に幼稚園教諭として赴任した喜多嶋凛。あらゆることに口出しをしてくるモンスターペアレンツと対立しながらも、自らの理想を貫き、少しずつ周囲から認められていくのだが…。どんでん返しの帝王が贈る驚愕のミステリ。
いじめを受けた側、いじめた側、その友だち、家族、教師…「いじめ」には、さまざまな“当事者”たちがいる。7人の人気作家が「いじめ」をめぐる人々の心模様と、ときにやさしく、ときに辛辣な視点で深く迫った物語を競作。胸の奥に、しずかに波紋を投げかける短編集。
男爵の血筋で居候の六郎太は鹿児島で、かつて出奔した先のシンガポールで出会った重助と12年ぶりに再会。聞けば仏印ラオスに“金の河”と呼ばれる無尽蔵の砂金が出る渓谷があるという。西郷隆盛の「御落胤」も登場、二人が画策した一攫千金作戦の行方は?幻のユーモア小説。
東日本大震災を経て、刻々と変貌していく“東京”を舞台にした戯曲『エピタフ東京』を書きあぐねている“筆者K”は、吸血鬼だと名乗る吉屋と出会う。彼は「東京の秘密を探るためのポイントは、死者です」と囁きかけるのだが…。スピンオフ小説「悪い春」を特別収録。
昭和49年夏。結婚52年目を迎えた画家・熊谷守一(モリ)と妻・秀子のある1日を描いた映画『モリのいる場所』の小説版。94歳の画家が愛する庭と、そこに住まう無数の小さな生命、老夫婦のお茶の間に集う人々-さまざまな視点から、軽やかに「モリ」の日常があふれだす。
さまざまな思惑を抱く客を乗せて、旅客機が“北部辺境区”へ向けて離陸した。だが、安穏の空の旅とはならない。“西部辺境区”で大殺戮を行い罪人として護送中のハイランド公爵の眠る棺が乗っていたのだ。公爵をめぐる貴族たちの毒牙がさらには残虐無比の空賊が、飛行体に乗り合わせたDと乗客に襲いかかる!
突然帰国した、杉下右京の姪・杉下花。フォトグラファーの彼女は、東京の下町を撮影中に不審な家を発見する。その家の周囲を調べた彼女は、数日前に起きた殺人事件の犯人が潜んでいるはずだと断言した。素人の幼稚な発想だと聞き流していた右京だったが、思わぬ形で花に危機が訪れ…。特命係+花が事件解決に奔る!第十五話〜第十八話の脚本をもとに、再構成して小説化。
亡き夫の復讐を果たし、海外への高飛びを画策する月本幸子。しかし、その前に立ちはだかったのは、特命係の杉下右京だった!美女に優しく接する亀山薫を横目に、右京は幸子の服装に違和感を覚えていた。身に着けたブランド服とは釣り合わない安物のコート、ズボンの裾についた赤い染み…。右京の厳しい追及が始まる!第十九話〜第二十一話の脚本をもとに、再構成して小説化。
和製シャーロック・ホームズこと杉下右京と間違われて拉致された亀山薫。椅子に縛りつけられ、犯人から求められたのは暗号の解読だった。謎の液体を吸い上げた注射器を手に、犯人が解答を迫る一方で、薫を探す右京は少しずつ犯人の目的に近づいていく。暗号に秘められた本当の意味とは?シーズン4の第八話〜第十一話の脚本をもとに、全四話に再構成して小説化。
宮本教授によって発見された新種の蝶。その蝶を300万円で落札した男が殺された。一方、関係者に「これは新種じゃないんだ」と語った宮本の刺殺体が、大学の資料室で発見される。蝶をめぐる連続殺人の真相を追う特命係の杉下右京と亀山薫は、蝶の発見現場に着目するが…。シーズン4の第十一話〜第十四話の脚本をもとに、全四話に再構成して小説化。