出版社 : 東京大学出版会
金素雲『朝鮮詩集』は、その美しい翻訳により、近代朝鮮文学の重要性を植民地宗主国の文壇に知らしめた。後に金時鐘は、その美文調の向こうに訳されるべき詩ごころを追求し『再訳』を試みる。気鋭の研究者が、原詩と二つの翻訳を子細に見比べ浮かび上がらせる、対峙する二者の共通する模索。 序章 二つの『朝鮮詩集』 第1部 『朝鮮詩集』の翻訳/再訳背景ーー言語とアイデンティティ 第1章 『朝鮮詩集』の翻訳ーー金素雲における朝鮮語と日本語 第1節 朝鮮人のアイデンティティと朝鮮語 第2節 「朝鮮」詩集への思い 第2章 『朝鮮詩集』の再訳ーー金時鐘における朝鮮語と日本語 第1節 揺れるアイデンティティ 第2節 金時鐘における『朝鮮詩集』の意味と再訳 第2部 朝鮮的抒情と日本的抒情 第3章 金素雲における朝鮮的抒情と日本的抒情 第1節 「曲線」と「直線」--柳宗悦の朝鮮芸術論の受容 第2節 朝鮮民謡と「曲線」 第3節 朝鮮近代詩と「曲線」--『朝鮮詩集』の収録作品が示すもの 第4章 金時鐘における朝鮮的抒情と日本的抒情 第1節 「日本自然主義美学」批判ーー小野十三郎『詩論』(一九四七)との出会い 第2節 朝鮮近代詩批判(1)--第一詩集『地平線』(一九五五)における「朝鮮的なもの」 第3節 朝鮮近代詩批判(2)--尹東柱の詩を手がかり 第4節 朝鮮近代詩批判(3)--金芝河の民衆観と「醜」と諷刺 第5節 金時鐘における朝鮮的抒情 第3部 言語観と翻訳 第5章 金素雲の言語観と『朝鮮詩集』の翻訳 第1節 金素雲の言語観ーー朝鮮語と日本語の「典型律」 第2節 朝鮮語の「連鎖性」と「曲線」 第3節 「連鎖性」と朝鮮近代詩の日本語訳との関係 第6章 金時鐘の言語観と『朝鮮詩集』の再訳 第1節 金時鐘の言語観ーー「抒情の源流」としての「響き性(音韻性)」 第2節 「聴覚」の言語としての朝鮮語 第7章 金素雲と金時鐘の訳詩法 第1節 金素雲の訳詩法 第2節 金時鐘の訳詩法 終章 二つの『朝鮮詩集』の意味
オースティン『高慢と偏見』×スタンダール『赤と黒』、ディケンズ『デイヴィッド・コパフィールド』×フローベール『ボヴァリー夫人』、ナイポール『ある放浪者の半生』『魔法の種』×ウエルベック『素粒子』…イギリス小説とフランス小説が理屈抜きにどれだけ面白いか?19〜20世紀の古典的作品でこれぞというものをぶつけあい、読み比べてみたらどうだろう?文学者・翻訳家として活躍するふたりが12の名作を読解し、その魅力を語り尽くす。読むことの生き生きとした愉しさを伝える文学対談。