出版社 : 東方書店
今日のわれわれは中国の幻想奇譚をフィクションとして読みがちである。だが、それらはもともと“事実の記録”として書かれ、伝統中国に生きた読者たちもそれを“事実の記録”として読んだ。唐代の知識人は“楽園”にどんな理想を込めたのか。“陰間”からいっとき戻った妻の語りから見える結婚とはいかなるものか。狐や物の怪にできなくなったことからは武人の出世と文人の不遇が透けて見える。神秘や怪異を語っているようで、じつは当時の社会や風俗を記した実録なのである。当時の視点で“唐代伝奇”を読むとなにが見えてくるのか。中国の幻想奇譚をより深く楽しむための読み方指南。
一八七四年、日本軍が台湾に出兵した(牡丹社事件)。清朝政府は台湾防衛のため精鋭部隊「淮軍」を派遣する。だが、彼らは日本軍ではなく、原住民と闘うことになったー。「開山撫番」政策下で起こった最初の原住民と漢族の戦争「獅頭社戦役」を描く歴史小説。
一八六七年、台湾南端の沖合でアメリカ船ローバー号が座礁し、上陸した船長以下十三名が原住民族によって殺害された。本書はこの「ローバー号事件」の顛末を、台湾原住民族「生番」、アメリカ人やイギリス人などの「異人」、清朝の役人、中国からの移民である「福〓人(ふくろうじん)」「客家(はっか)」、福〓人と原住民族の混血「土生仔(トゥサンア)」など、さまざまな視点から、また、移民の歴史、台湾の風土なども盛り込みつつ描いたものである。台湾文学奨長篇小説金典奨受賞、連続ドラマ化決定(公共電視、曹瑞原監督)!19世紀、欧米列強と清朝の圧力に抗し気高く生きた台湾の人々を描く圧巻の大河歴史小説!
「五四」だけが、新文学であり「モダニティ」なのか。清末小説の豊穣な作品群(花柳小説、侠義公案小説、暴露小説、サイエンス・ファンタジーなど)を読み解き、中国文学史上で「抑圧」されてきた清末小説の再評価と、「五四」新文学一辺倒だった中国近代(モダン)文学史を再考する試み。
物語としての『三国志演義』は、いかに作られたのか。正史『三国志』に基づいた史実と、フィクションを交えた叙述のスタイルを分析する。さらに唐代以前から明清代にいたる『演義』の成立事情、謎につつまれた作者羅貫中の人物像、関羽・劉備・張飛ら登場人物のキャラクターの変遷など、奥深い作品世界を案内する。後半では、『演義』の研究にも大きな影響を与えた民間伝承『花関索伝』、明清代の書坊による出版戦争、『演義』に反映された正統論や五行思想など、物語の背後にある文化や世界観も描き出す。本「増補版」では、初版から十七年を経た研究の進展を随所に反映させるとともに、日本と韓国における『演義』受容の様相を第九章として新たに加えた。