出版社 : 河出書房新社
十七世紀、空前のチューリップ・バブルに沸くオランダ。球根一つが法外な高値で取引される街で、豪商の若妻と貧乏な画家は道ならぬ恋に落ちた。二人は自由を買うため過熱するチューリップ投機に全てを賭け、さらには妊娠した女中をも巻き込んだ“身代わり出産”を画策する…。フェルメールの絵画に着想を得て描かれ世界的ベストセラーとなった、愛と狂乱のサスペンス。
アンドリュー・J・ラッシュは「紳士のためのスティーヴン・キング」と称される人気ミステリー作家。「町一番の有名人」として、愛する妻と幸せに暮らしている。しかし、C・W・ヘイダーなる人物から謎の盗作疑惑で告発された彼は、正体不明な不安に取り憑かれる。甦る記憶、家族との緊張関係、嫉妬、ミステリーを書く困難…。彼は、別の名前で「残酷で野蛮で身の毛がよだつ」ノワール小説も発表していた。オーツ自身の体験もふまえて「書くこと」の謎に肉薄する異色ミステリー。
広告代理店で働く25歳の井川優子は、パワハラ&激務のせいで仕事中に倒れてしまう。精神科を受診するも、患者の話を全く聞かず自分の話ばかりする超変わり者の医師・小畑にあたってしまい踏んだり蹴ったり。しかし、治療のために仕方なく訪れた野球場で優子は、日本人初のメジャー・リーガー、マッシー村上をめぐる摩訶不思議な物語と出会って……爽快な感動作! 巻末インタビュー=村上雅則
さびれゆく松保商店街に現れた若きカリスマ図領。クレーマーの撃退を手始めに、彼は商店街の生き残りを賭けた改革に着手した。廃業店舗には若い働き手を斡旋し、独自の融資制度を立ち上げ、自警団「未来系」が組織される。人々は、希望あふれる彼の言葉に熱狂したのだが、ある時「未来系」が暴走を始めて…。揺らぐ「正義」と、過激化する暴力。この街を支配しているのは誰なのか?いま、壮絶な闘いが幕を開ける!
話は「シドッチの石」に始まるーそれは何処に?警部は小岩井、探偵は尾形修平。からむのは紅殻駱駝!シャーロック・ホームズまで登場。舞台は東京、その近郊…。『黒死館殺人事件』の先駆をなす。著者短篇佳作に較べ「毫も敗けをとらぬ、自信が、私にはある」。洒脱にして通俗痛快。初文庫化!
「そろそろオリオン座が振り向くはずだ」僕らは毎夜、夜空を見上げて過ごす…世界の果てに近い町の青春、太陽系中の食通を唸らせる料理に隠された真実、主人公連続殺人事件。甘美で繊細、壮大でボンクラ、夢みる言葉、踊る文字、胸にしみる小理屈と抒情。円城塔世界が炸裂する、極上の作品集。
武田信玄は死に際し、自らの亡き殻とともに財宝を諏訪湖に沈めるよう命じた。その石棺の隠し場所を示す五巻の巻物をもって逃げる三人の落武者は、徳川方に討たれる。その巻物をめぐって武田の郷士・高市児次郎は、師僧・閑雪、猟師の子・伝太とともに三つ巴の争奪戦にまき込まれるー。人間の一生は修行だとする周五郎の信念に貫かれた伝奇時代長篇、初文庫化!
謎の死を遂げた後輩の妹に招かれ、軽井沢の別荘に集まった四人の男女。過去と現在、そして未来ーそれぞれが自らの人生を語るうちに、愛と憎しみの感情が渦を巻き始める。究極の会話劇が紡ぎだす新文学!
蘇る初期SFの一大金字塔!鉱脈探査機、空気鉄道、水中鉄船、人造太陽、超光線透視機、引力遮閉機…。蒙古の奥より南米にまで及ぶ大地底国。インカの末裔の支配する神秘郷に展開される科学戦。日本SFの嚆矢となった“幻の作家”蘭郁二郎の閃光の生涯に遺された、地球空洞説に拠る代表傑作。
家の前に母親と住む汚い子供、酒浸りの高校時代、幽霊屋敷、子供と小動物の殺し屋、通りで見つけた頭蓋骨、鎖で脚をつながれた子供、黒い水から生まれた奇形児たち、「燃える女たち」の反乱…。読み進めるうちに、底知れぬ恐怖に満ちた現実に囚われていく。ラテンアメリカ新世代の“ホラー・プリンセス”が作りだす濃密なゴシックワールド。
静岡市内で勃発した暴力団同士の抗争事件。緊張感が高まる中、ついに発砲事件が発生した。県警中部署・刑事二課(マル暴)の沖田警部補と反町巡査部長を中心に大規模な捜査に乗り出すのだが、発砲に使われていた銃が警察の正式拳銃・ニューナンブである可能性が浮上した。警察は箝口令を敷きつつ、一刻も早い事件解決を目指す。しかし、秘密裏に行われていた組事務所へのガサ入れは不発に終わり、さらに拳銃密造で内偵していた容疑者が死体となり発見される。警察内部に内通者がいるのでは…そこで浮上した男は、薬銃のエースにして沖田の同期・五十嵐亮介警部補であった
いま再評価の声高い20世紀米作家の記念碑的名作を、若き日の須賀敦子の瑞々しい新訳で。過酷ながらも美しいニューメキシコの大自然。広大な砂漠や危険な山岳地帯をラバで旅する二人のフランス人神父ー19世紀半ば、彼らはその布教の地で、古代そのままに営まれる先住民族の文化に触れ衝撃を受けつつ、真の魂の豊かさを学んでゆく。ピュリツァー賞作家代表作。
蔦屋敷には、誰も知らない秘密がある…。十二年前の夏に出会った忘れえぬ少女・百合と再会した若き画家の淳。その日から淳の身の回りでは、不可解な事件が起こりはじめる。彼女は聖女か、それとも魔女か?美に囚われた人々の惨劇を描く、欲望と背徳の伝統的ゴシック・ミステリ。
十年前、京都で引っ越しパーティーに居合わせた男女。それぞれの時間を生き、つきあっていたカップルは別れ、変わったり変わらなかったりしながら30代になった彼らが、今夜再会する。中沢が鴨川沿いにオープンさせたバルに集まった面々に、今日もさまざまな「できごと」が起きる。行定勲監督が、なんと、紙上映画化した書き下ろし小説「鴨川晴れ待ち」を収録。
冷蔵庫型の女と旅する天才科学者、鉄道模型にかまけて妻をかえりみない男、瀕死の殺人犯からメッセージを受けた女性事務員、クリスマス前夜に奇蹟を見た新聞記者…あっと驚く結末、心にしみる余韻、語りの名人が遺した16編。ヴォネガット、最後の短編集。
戦時の大統領リンカーンが、急逝した愛息ウィリーの記憶にひたるため夜の墓地を訪れる。そこには自らの死を受け入れられず、彼岸と此岸の間をさまよう霊魂たちがいた。たくさんの目と鼻と手をもつベヴィンズ、素っ裸で巨大なペニスを屹立させたヴォルマン、最後の審判を恐れる牧師トーマス…。現世の妄執を抱えて生きる(?)彼らがリンカーンに触れる時、感動的でユーモラスな途方もない物語が動きはじめる。まったく新しい形式に奇想と興奮を詰めこんだ、現代アメリカ最高の短編作家、驚愕の初長編。全米ベストセラー、ブッカー賞受賞の超話題作!!!
特技ナシ、反抗期ナシ、フツーの高校二年生・星崎。「かれ」が夜の公園でひとり動画を流して練習する“テトロドキサイザ2号踊ってみた”。夢もなければ特技もない、クラスの人気も興味ないーそんなある日、河原で暮らす友人・つくもから子どもができたと打ち明けられて…。