出版社 : 河出書房新社
妻の美奈子が突然事故で亡くなった。夫の希久夫にホンダの名車「エスハチ」が遺されるが、カーナビから不可思議な走行履歴が見つかる。藤沢、松本、尾道、モナコ…履歴をめぐる旅に出た希久夫に、美奈子が残した最期のメッセージとは?往年の名女優、伝説のエンジニアの人生と交錯したはてに感動のラストが待っている。
セックスではなく人工授精で、子どもを産むことが定着した世界。そこでは、夫婦間の性行為は「近親相姦」とタブー視され、「両親が愛し合った末」に生まれた雨音は、母親に嫌悪を抱いていた。清潔な結婚生活を送り、夫以外のヒトやキャラクターと恋愛を重ねる雨音。だがその“正常”な日々は、夫と移住した実験都市・楽園で一変する…日本の未来を予言する傑作長篇。
他人と深く関わることを避けながら暮らす宇田川静生。彼は、都内から移住してきた木工職人・鹿谷さんの工房で、そこに集う人たちとのしがらみのないお喋りを楽しみながら日々を過ごしていた。鹿谷さんの自由な空気が心地よかったのだ。しかし、名古屋から戻ってきた高校の後輩・蜂須賀との再会以降、少しずつ彼の人生は変化していき…。“地方”が持つ徹底した厳しさと、その先に開かれる深い優しさに寄り添う傑作長篇。谷崎潤一郎賞受賞作。
京都で開かれた引っ越し記念飲み会。そこに集まり、出会いすれ違う、男女のせつない一夜を描く、芥川賞作家の不朽の名作の増補新版。行定勲監督で映画化された本篇、映画撮影の夜に迷いこんだ作者と登場人物が語る「きょうのできごとのつづきのできごと」に加え、映画から生まれた番外篇「もうひとつの、きょうのできごと」を収録。
それは1914年のうららかな春、プロイセンで撮られた一枚の写真から時空を超えてはじまったー物語の愉しみ、思索の緻密さの絡み合い。20世紀全体を、アメリカ、戦争と死、陰謀と謎を描ききった、現代アメリカ文学における最重要作家、パワーズの驚異のデビュー作。
本当に美しいものは、目には見えないのですー「色彩の女王」として注目を浴びるファッションフォトグラファー立花海咲。突如発症した「錐体ジストロフィー」という難病の色覚障害が、夢のような成功から彼女を転落させた。仕事も恋人もプライドも失った海咲が選んだ道は、震災に見舞われた故郷・熊本の天草に帰ることー16年前、故郷も家族も捨てた海咲を天草は優しく迎え入れてくれた。親友、恩師、絶縁状態の母や妹、憎み続けた義理の父との再会によって、海咲の中で何かが少しずつ変わっていく。そして、20年前に海で死んだ実の父の秘密が明らかになっていくが…はたして、海咲が最後に見つけた「この世で一番美しい色」とは?
「出発」「日本人のようなもの」「あの子は特別」「異境の台湾人」「親孝行」「可能性」「息子」「鳳梨酥」「百点満点」「到着」…最注目の気鋭が描く、10の物語!エッセイ「音の彼方へ」併録。台湾系ニホン語人作家の飛翔作。
強かに、狡猾に、ときに残酷に。覇権定まらぬ戦国の世を生き抜く者たちー甲斐・武田家重臣の家に生まれながらも、訳あって牢人となった植原次郎左衛門とその息子・三十郎。数奇な運命により、ふたりは庄屋の娘であった亡き母の故郷の村で暮らすことになる。だかそこでは、武士・解死人・庄屋の縁者という三つの身分に翻弄されながらの暮らしが待っていた…期待の実力派、書下し長編歴史小説。
滝口悠生氏推薦! 「カレーのおいしい喫茶店にははずれはない。そこにはいくつもの物語を通り過ぎてきた客や店主が待っていて、席に着けばすぐに小説がはじまる」 あの頃の、奇跡のような「日常」がここにある。 男と男/男と女を巡る7つの物語ーー 【収録作品】 ほろり、泣いたぜ」「ピーばかり食うな」「くわえ煙草とカレーライス」「青林檎ひとつの円周率」「春はほろ苦いのがいい」「大根おろしについて思う」「遠慮はしていない」
あの夜を越え、「真夜中」を生きる無戸籍の少年がいた。蓮司のよき理解者でテント暮らしの源太、心優しい客引き・井島、お腹を満たしてくれるスナックのママや屋台の主人、憧れの山笠の重鎮・カエル、兄のような存在の平治、警察官の響、そして中洲育ちの少女緋真ー土地と人とに育まれ、少年は強く成長していく。家族を超えた絆を描く感動作!
「絶望」が蔓延する地方の町・葦原に帰ってきた、破天荒な新米坊主(!?)江川放念。若者が「夢」を持てないほどに荒廃した故郷に驚愕した彼は、若い人材が町を救うはずだと「原石発掘プロジェクト」を立ち上げる。放念によって集められた4人の高校生ー常人離れした肩を持つ黒木鷹、町で一番の美少女・青山藍、微生物オタクの白土冴子、そして凡人・緑川夢二ーは、それぞれの個性を活かし「夢」に向かって走り出す。しかし、彼らの前に葦原荒廃の元凶、前市長とその傀儡と化した現市長が立ちはだかり…。「絶望」は噛み締めるほどに甘くなる?「青春小説」の新たな王道、ついに刊行!!東村アキコ描き下ろしウォームアップコミック収録!(原作=島田雅彦)
はは、生まれた瞬間からの逃亡、流浪。千年の時を超え、私は、私の物語を、語ろうと思うー私の名は源義経。打倒平家を胸に、都会的なファッションに身を包み、早業を駆使。鞍馬での幼年期から奥州への旅、メンヘラ気味な最強の家臣弁慶との出会い、そして兄頼朝への思い…。古典『義経記』が超絶文体で現代に甦る!激烈に滑稽で悲痛な、超娯楽大作小説、ここに開幕。
人生の大半をイケメンに振り回されてきた陽子は、できちゃった結婚し実家を飛び出す。しかし、夫の浮気で離婚、さらに家も仕事も失い、6歳の娘と仕方なく、宇都宮で餃子店を営む父の元に帰る。知らない間に閉店していた店を復活させようと奮闘する陽子の前に、新たなイケメンが現れ…監督&脚本・秦建日子の映画、小説版。
謎の男・麦に出会いたちまち恋に落ちた朝子。だが彼はほどなく姿を消す。三年後、東京に引っ越した朝子は、麦に生き写しの男と出会う…そっくりだから好きになったのか?好きになったから、そっくりに見えるのか?野間文芸新人賞受賞作。森泉岳土のマンガとコラボした魅惑の書き下ろし小説を増補。
天才的犯罪者トム・リプリーが若き日に殺した男、ディッキー・グリーンリーフの名を名乗る者から電話が来た。これは最近引っ越してきた妙なアメリカ人、プリチャード夫妻の仕業か。だが、何のために?敵の正体が見えないままに、トムの過去が暴かれようとしていた…トム・リプリーの物語、最終編。
日本SF大賞史上初!2度の大賞受賞。現代SF最高峰作家のデビュー作をはじめ、貴重な作品を集成した、ファン待望の宝石箱。蓋を開けば響きあう、物語と批評の音色。幻の封印作品、ついに解禁。
地元から出ないアラサー、女子が怖い高校生、仕事が出来ないあの先輩…誰もが逃れられない「生きづらさ」に寄り添う、人生の切なさとおかしみと共感に満ちた19編。情けなくも愛すべき男たちの「孤独」でつながる物語。「女のリアル」の最高の描き手・山内マリコが「男のリアル」をすくいあげた新たなる傑作!