出版社 : 河出書房新社
親友のプライドにつきあって、やる気もしないのに野球チームをはじめたオケたち。めざすは市長杯争奪戦。と言っても目的はひとつ。因縁のイーグルスとのラフ・ファイトのみ。ところが、ひょんなことからコーチを頼むハメになったのが謎の老人。このおそるべきジイさんは、なんとオレたちの長年の天敵だった。ジイさんの孫娘マキちゃん、無敵の野球犬トラをチームの一員に加え、ひくにひけないハードな友情の日々が始まった…。
若い日に遊んだフランス、ヨーロッパ、兵として戦時下を暮した南国・台湾…通りすがりの、エトランジェの眼に映る異国に潜むミステリー-本巻では、日影丈吉なららではのエグゾティシズム溢れる11編を集録。待望の短篇傑作選。
龍潭譚=母を亡くして間もない少年が、夢のような世界の中で、怪しいまでに美しい女と出会い、幻の乳房を吸い、幻の血を見る。さゝ蟹=彫刻の名人が亡くなって、その道具も売り払われた寂しい晩に、名人が心に懸けていた蟹の彫刻が、仏壇から走り出た。幻往来=大学病院の近くで医学生が見かけた美しい病人。やがて医学生は、その面影を遊廓の中でも見るほどにとり憑かれていく。高野聖=山中に迷いこんだ若い僧が、出会った美女に谷川での水浴びを勧められ、美女の肌に心惑わされる。しかし、その女こそ自分と交わった男を次々と動物の姿に変えてしまう妖女だった。
自動人形、二重人格などをテーマにしたホフマンの「砂男」は、怪奇幻想小説の傑作として有名であるが、後年フロイトによってとりあげられ、恐怖の源泉としての「無気味なもの」が作品ともども詳細に分析された。本書はその「砂男」とフロイトの論文を併せて収録し、訳者の明快な解説を付したもので、古典を古典的論文で読解するという新しい試みを意図したものである。
ミケシュとロビンは双子、ふたりのどちらが兄で弟か、パパとママにも決められない…。美しく移り行く季節の中で、ふたりの少年が楽しく過ごす夢の世界を描いた表題作のほか、著者自家製ことば辞典「ことばのブリキ缶」を併録。
日影丈吉の紡ぎ出す妖しくも豊かな幻想は深甚広大な博物誌的知に裏打ちされている-。本巻では、動・植物の楽園を融通無碍に闊歩した著者が“生きもの”達の怪を絶妙な色糸に織り上げた作品群を集録。
光と闇、現世と幻想、冥府と天上の垣をかるがると越え、自在に異界へ踏み込みながら、淡い郷愁を漂わせる唯一無比の作品世界-本巻では、幼・少年のなかにひそむ無垢とその怖さをモチーフとしたものを集録。
女は獣、獣は男、過去は未来、未来は現在…輪廻転生による、釈迦の前世物語。生とは、死とは何か。そして、釈迦の悟りとは何か。仏教創始以来、二千五百年の歴史的な謎に、深く分け入る画期的な連作小説。