出版社 : 河出書房新社
突然目が見えなくなる「白の闇」事件から4年後、首都の総選挙は土砂降りに見舞われる。午後4時になると人びとは投票所に押し寄せるが、7割以上が白票、再投票では白票が8割を超える。政府は非常事態宣言を発し、首都を封鎖する。政府組織が市外に脱出する一方、首都では市民たちの自治が始まるが、彼らを組織する首謀者は見えず地下鉄中央駅で大規模なテロが発生する。市民たちの平和的なデモ、地下鉄前広場での共同葬儀、権力維持と自己保身に走る閣僚たち…。やがて1通の手紙が大統領に届き、「白の闇」事件でみんなを勇気づけた優しい女性の捜査が始まる。傑作『白の闇』と対をなすノーベル賞作家による警鐘の書。
1945年1月、終戦間近なオランダの夜間外出禁止の夜に鳴り響く6発の銃声。親ナチス警視殺害の報復で家族を失った少年が、戦後に知る衝撃の事実とは何か。暴力に屈する裁判所書記の父、警官のピストルを奪って逃走した兄、慈愛に満ちた母のぬくもり、警察署の独房で遭遇した女性の柔らかい声…戦後、医師として働くアントンのもとに、忌まわしい事実の波紋が押し寄せてくる。対独協力者の父とユダヤ人の母から生を享け、「わたしが第二次大戦だ」と発言した巨匠が、戦争や罪や運命について精緻に織りあげた静かなる傑作、ついに邦訳!!!アカデミー外国語映画賞受賞『追想のかなた』。
若くより世界から注目を集める女性作家が、独創性溢れる筆致で描く、スターの炎上、姉妹団と兄弟団のバトル、日記に閉じ込められた声ービガリュールな想像力を無数の鍵が繋ぐ9のストーリーコレクション。ペン・オープン・ブック賞選出作。
誰も“透明な存在”になんかさせない。“幸せそうな若い女”を狙って刺され、SNSから消えた優里亜。向こうの世界にはいない、ラジオでリスナー投稿を読んでくれる大人気の歌手・恋恋。闘病ブログにきなくさい書籍化の話がきた友人の深南。こっちの世界の中川君が漫画で描く、同性愛で売り出されたアイドルデュオ。向こうの私はロンドンに住んでいて、こっちの私はー彼女たちが選んだ沈黙と言葉とは?新たなる桜庭文学が始まる。
19世紀のロンドン。スワンズビー社の辞書編纂者ウィンスワースは、日夜ひそかに架空の項目を挿入することで日々の憂いをはらしている。いっぽう現代のスワンズビー社では、インターンであるマロリーが辞書に紛れ込んだ嘘を探しだし取り除く仕事と格闘していたー。言葉の定義に執着しながら定義不可能な現実に振り回される、ふたりの辞書編纂者のひねくれた愛の物語。
人間がゾンビ化する「黒い病」のワクチンを村に届けるため、インテリ地方医師プラトン・イリイチ・ガーリンは吹雪をついて旅に出る。御者セキコフが操るソリ車にはヤマウズラのような小馬50頭がボンネットに収まる。小人の粉屋と豊満な妻、謎の透明物質でできたピラミッド状の麻薬装置、ホログラムを映しだすラジオ、身の丈6メートルにおよぶ巨人、三階建てほどの巨大な馬…吹き荒れる嵐のなか、二人はいつしか暗闇と吹雪の世界に迷いこむ。『青い脂』『氷三部作』『ロマン』『愛』など、現代文学のモンスターと称される作家随一の人気作!!!
古本屋で働いていると、絶版本を探してほしいというお客がたびたび現れる。何か月、あるいは何十年もかけて一冊の本を探す人もいる。そこで考えたのが「物語の蒐集」だ。長いあいだ本を探すのだから、そこには何らかの事情があるはず。これからお聞かせする話は、楽しいものもあれば、悲しいものもあるだろう。怖い話、シュールな話もある。ただひとつだけ言っておきたい。私たちの周りには、奇妙なことが想像以上に頻繁に起きていると。29冊の本と、それにまつわる本当にあった29の人生の物語。
私たちは、オレンジ色の世界に生きている。悪魔に授乳する新米ママ、“湿地遺体”の少女に恋した少年、奇妙な木に寄生された娘、水没都市フロリダに棲むゴンドラ乗りの姉妹…。不条理なこの現実を生き残るための、変身と反撃の作品集。
全米図書賞にノミネートされ、キム・チョヨプら新世代韓国SFに多大な影響を与え続ける「中短篇の神」(ムン・モカ/作家)が、ついに日本上陸!「どれほど似ているか」韓国SFアワード大賞受賞作(中短篇部門)-衛星の避難民を救う任務を負う宇宙船で、人間の姿で目覚めたAIの「私」。人間とは何か?機械に感情はあるか?繋がりの可能性を追求する決死の旅。「この世でいちばん速い人」韓国SFアワード優秀賞受賞作(中短篇部門)-事故を未然に防ぎ、人々を救ってきた光速の超人“稲妻”の苛立ちと苦悩。SNSが過熱する中、世代間の対立と融和を描く傑作続編「鐘路のログズギャラリー」も収録。ほか、寡作の作家による集大成となる10篇。
恋なのか?推しなのか??1912年、バレエ・ダンサー。1958年、宝塚歌劇団男役。2人のスターに焦がれて生きた女性・ロモラの半生を描く傑作長編!
自らの道を求め交易商人を志した二人の少女の物語。1160年5月、バルト海交易の要衝ゴットランド島。流れ着いた難破船の積荷をめぐり、生存者であるドイツ商人と島民の間で決闘裁判が行われることとなった。重傷を負った商人の代闘に立ったのは、15歳の少女ヘルガ。義妹アグネが見守る中、裁判の幕が開き、運命が動き出すー。ドイツ商人が北へ進出し、ロシア・ノヴゴロドでは政争が頻発するなど動乱の時代に生きた人々を詩歌や戯曲形式も交えて紡ぐ、小説の新たな可能性を拓く傑作長篇!
死に取り憑かれた少女たちの誓約(「ミルク・ブラッド・ヒート」)、失った胎児を幻視する母親の安息日(「饗宴」)、教会から追放された女子高生が挑む復讐劇(「天国を失って」)、父の遺灰を捨てるロード・トリップで回帰した記憶(「水よりも濃いもの」)…。ミレニアル世代が描く、女性たちの深き闇と、瑞々しい赦しのとき。ブラック・フェミニズムの新地平。
近所の木に身も世もなく恋をする「五月」、地下鉄駅構内で死神とすれちがう「生きるということ」、他人に見えないバグパイプの楽隊につきまとわれる「スコットランドのラブソング」、恋人がベッドの中で唐突に浮気を告白する「信じてほしい」、クリスマスイブの夜、三人の酔っぱらい女が教会のミサに乱入する「物語の温度」…。重層的な物語に身をゆだね、言葉の戯れを愉しむうちに、思いがけない場所に到達する12の短篇集。