出版社 : 河出書房新社
降り続く砂に覆われ、廃墟と化していく都市の崩れゆくビルの地下で、前時代の戦車の復元に情熱を燃やすキキと少年たちー。不毛な光景の中、哀しくも美しい愛を求める若者たちの、こころやさしい近未来純愛長篇小説。
結婚4年めの弁護士ウォルターと妻クララの間にはすでにすきま風が吹きはじめていた。ある夜、クララはパーティーの席で夫と会話をかわしていた女性との仲をかんぐり、夫婦喧嘩の末、自殺未遂の騒動をおこしてしまう。神経質な妻の性格に嫌気がさして、ウォルターはある新聞記事を思い出す。妻殺しの完全犯罪をおこなったとおぼしい男の記事を…。『太陽がいっぱい』、『見しらぬ乗客』の原作者、サスペンスの巨匠パトリシア・ハイスミスの初期傑作長篇。
物語は、17歳の多感な若者マイケル・デヴリンが、アメリカ南部の基地の町ペンサコーラ(フロリダ)で体験するさまざまな事件を中心に繰り広げられる。童貞でブルックリンしか知らない主人公が、色々な人間との出会いから徐々に人生とアメリカの現実に目覚めていくのだ。なかでも、身震いするようなエロティックな世界へ誘ってくれた謎の年上の女イーデン・サンタナとの出会いは、マイケルにとって決定的なものとなっていった…。アメリカの伝統的な青春小説の系統に連なる、ピート・ハミルの最新作。
「ごめんなさい」といってみたい、時期遅れのクリスマス・プレゼント。夢の誘導、奇妙で残酷な味わい、イメージと色彩の氾濫、ポリフォニックな技法の実験…。著者の想像力の水源に浮かぶ鮮やかな花びらの数々。
長らく癌と闘っている母親ルイーズ。夫とはそりが合わない。娘のエイプリルは奔放なシンガー。同性愛の息子ダニーはやさしいが、東部に行ってしまう。ひとりぼっちのいま、ルイーズはすがるものが欲しくなる…。現代家族の愛と孤独を感動的に描いた話題作。
第1部は、昭和20年5月24日、東京空襲の夜の、数寄屋橋での春樹と真知子の宿命の出逢いから、1年半後の再会と真知子の結婚まで。舞台は東京から佐渡、鳥羽に及び、主な登場人物も勢揃い、運命の歯車は一回転します…。
一人息子を溺愛する姑と夫の“三角関係”に苦しむ真知子。真知子の幸せを祈って、身を引きながらも、見守り続ける春樹…。混乱した戦後の時代風俗を背景に、混血の乳飲児を抱えた若い娼婦や砂糖密輸で警察に追われる元陸軍少将、夜の女となった戦争未亡人など。二人を巡る人々の運命も急展開ー。いつしか三年半の歳月が過ぎ去り、真知子はついに離婚を決意しますが…。
身ごもった真知子は、再び夫と姑のもとへ。失意の春樹は友人を頼って北海道・美幌の牧場へ…。運命の悪戯で夜の女となりながら、苦労の末に“平凡な主婦”に落着いた春樹の姉や、密輸発覚でついに逮捕された元軍人など、戦後の激動が周囲を混乱させる中で、春樹には美しいアイヌの娘との恋が、真知子にも夫との新しい愛情が芽生えるのですが…。二人の旅はさらに彼方に。
流産により夫との絆を断たれた真知子は、春樹をたずねて北海道に渡ります。嫉妬と憎悪の念から二人の仲を裂くために策を巡らす夫…。真知子は自立を求め、ひとり雲仙に旅立ちましたが、積もる苦労の果て、ついに重い病いの床に…。舞台は再び数寄屋橋に戻り、八年間に及ぶ、ひたむきな愛の行方を探る大河ロマンも完結に向いますー。新しい女性の時代が始まりました。