出版社 : 祥伝社
元女優の母と“元叔父”の父、近所で暮らす実父。そして反抗期の妹と十六歳のぼく。それでも平穏だったわが家を、その人の存在が揺さぶり始めた…。崩壊の危機に瀕した「家族」が“熟成”していく一年間を綴った物語。
俊英と謳われた豊後羽根藩の伊吹櫂蔵は、役目をしくじりお役御免、いまや“襤褸蔵”と呼ばれる無頼暮らし。ある日、家督を譲った弟が切腹。遺書から借銀を巡る藩の裏切りが原因と知る。弟を救えなかった櫂蔵は、死の際まで己を苛む。直後、なぜか藩から出仕を促された櫂蔵は、弟の無念を晴らすべく城に上がるが…。“再起”を描く、『蜩ノ記』に続く羽根藩シリーズ第二弾!
一揆から三年、豊後羽根藩の欅屋敷で孤児を見守り平穏に暮らす楓の許を、謎の男・草薙小平太が訪れる。彼には楓の元夫で、大功を挙げた後、藩主・三浦兼清の旧悪を難じ上意討ちに遭った前家老・多聞隼人と因縁があった。だが、楓と出会った刹那、小平太の中に一つの想いが芽生える。やがて兼清の罪を断じ羽根藩の改易を目論む幕府の巡見使来羽の時が迫る中、旧悪を知る楓たちには藩の魔の手が…。
誰もが踊り狂ったバブルの果て、友はなぜその手を汚した? 闇を追って、名車マスタングが唸りを上げるーー 止まれって? そりゃ無理だろ。 拉致、殺人、不正融資、政界の闇…、ハードボイルドの旗手が放つ渾身の犯罪サスペンス! 戦後文学となった犯罪小説(ハードボイルド)の到達点! バブル崩壊で巨額の借金を背負い自動車修理工場で働く氏家豊は、67年型マスタングで東京を流していた夜、何者かに拉致された旧友五十嵐の娘香織を救う。数日後、自らも凶漢に襲われた氏家が事情を糺すと、五十嵐は勤務先の銀行で不正融資を強いられたと告げ、姿を消した。赤坂の料亭女将でマスタングの持ち主、澄子にまで不審な影が近づいたことで、氏家は事態の背後を洗い始める。直後、借金を肩代わりしてくれた恩人富沢が殺され、さらに富沢と五十嵐の接点が浮上。その上、なぜか銀行不正に関わる口座が氏家の亡父名義で作られていたーー。宴が残した闇の中を、事件の真相を追う氏家がノンストップで疾走する!
聖央大学の超常現象研究サークル「Spiritual Lovers & Searchers」に入会を希望した理工学部応用物理学科のビンボー1年生・二神雫。「SL&S」はおばかなイケメン会長・綾崎航太のせいで、“St.ルーピーズ・サナトリウム(聖なる愚か者の療養所)”と呼ばれ学内で敬遠されていた。だが、No.2の榊智久、航太に想いを寄せる美女・中務花蓮を含め全員が日本を代表する企業の子息、令嬢で超セレブだった。試用期間の課題としてトンネルに現れた幽霊の謎を解明することになった雫は、「ここに幽霊はいません」ときっぱり。実は雫には、幽霊が視える能力が…。
「彼女の心は男性だったんです」親友の焼身自殺に疑問があると、若い女性が杉並中央署生活安全課「何でも相談室」通称0係を訪れた。自殺した女性は性同一性障害で、男性として生きていたにも拘わらず、遺体に性交渉の痕跡があったという。0係の変人刑事・小早川冬彦は、相棒の高虎と彼女の人間関係を洗い直すが…。常識はずれの捜査が真実を暴く、シリーズ第四弾!
太平洋戦争末期、疎開先から逃げ出した梶原兵吾少年は、一人の老婆が留守を預かる不思議な屋敷で宿を借りることに。その夜、二階の窓には恐ろしい“鬼”の姿が…。やがて、虎の像にくわえられた死体が見つかり、屋敷に逗留していた者は次々に異様な死を遂げたー(「安達ヶ原の鬼密室」)。いくつもの謎と物語が交差する、著者ならではの仕掛け満載、興奮必至の傑作ミステリー!
就職した夏、保育士の向井すぐりは、新米営業マンの高萩草介と偶然出会い、付き合い始める。草介のことをもっと知りたいと望むすぐり。だが、草介は自分の過去の恋愛や家族について触れたがらず、なぜかデートの最中に突然姿を消してしまう。お互いをどこまで知ることが幸せな明日につながるのか…。男女の視点から恋の成長を追いかける、新感覚ラブストーリー。
オタク仲間が命より大事なコレクションを奥さんに捨てられた!オタクと結婚は相容れないのか!?アメリカ人の同僚オーレと付き合い出したのをきっかけに、今後のオタク人生に心悩ますノブコ。しかし、イケメン俳優との仲をオーレに疑われ、一転ピンチに。さらに、オタクを食い物にする危険な女が出現して…。次々襲い来る試練に、ノブコはどう立ち向かうのか?
算盤侍唐木市兵衛を、北町同心の渋井鬼三次が手下とともに訪ねてきた。岡場所を巡る諍いを仲裁してくれという。見世に出向いた市兵衛の交渉はこじれ、用心棒の藪下三十郎と刃を交えるが、互いの剣に魅かれたふたりは親交を深めていく。三十郎は愚直に家族を守る男だった。だが、愚直ゆえに過去の罪を一人で背負い込んでいる姿を、市兵衛は心配し…。
北町奉行所平同心・日暮龍平。旗本ながら部屋住みを嫌って町方に婿入りした、妙な男である。ひょろりとした痩躯に柔和な風貌だが、実は小野派一刀流の遺い手。何も知らない同僚は、雑用をおしつけ“その日暮らしの龍平”と嘲笑うが、一向に意に介さない。ある日、北町奉行から凶悪強盗団の探索を命じられ…剛剣で江戸の悪を一掃する痛快時代小説!
鮮やかな斬り口だった。矢先稲荷脇で発見された死体を検死した青柳剣一郎は剣客による犯行と判断。三月前の刃傷事件と絡め、連続殺人を疑い探索を始める。浮上したのは同じ頃に一刀流仁村道場の師範代を辞め、姿を晦ました神村左近という男だった。一方、その道場の門弟高岡弥之助は事件当日、現場付近で左近を目撃、独自に追っていたが、第三の死体が発見され…。
「離縁、離縁って簡単に言うない。世間様はそうそう離縁なんてするものか」「おあいにく。あたしは一度離縁された女で、うちの人は三度も離縁しているのさ。離縁の玄人だよ」(「夫婦茶碗」)。夫婦喧嘩の仲裁に、日々、大忙し。日本橋堀留町の会所の管理人、又兵衛とおいせは近所の家族の幸せを願い…。懸命に生きる男と女の縁を描く、心に沁み入る珠玉の人情時代小説。
黒田官兵衛麾下の勇将堀平右衛門の晩年。出奔した平右衛門を待つ妻の胸中は?息子同然の手代を自殺に追い込んだ矢場の女に入れ揚げた、大店の主の欲望と顛末。不仲の妻と離縁も考えた商人は、妻が病に倒れて初めて夫婦の関係を見つめ直し…。人の心に降る雨はいずれ止み、希望に満ちた空を見せる。すれ違う江戸の男女を丁寧に描く三人の、時代競作第三弾。
「“新宿”を平和都市にするだわさ、ぶう」傲慢尊大なでぶ、トップ情報屋外谷良子が“区長”に立候補。直後、“魔界医師”メフィストとともに、無断で推薦人にされた人捜し屋秋せつらを機械戦闘員が襲撃した。告示日に始まった戦いには、権力に固執する梶原現“区長”や、幻術師虹垣竜斎ら奇怪な候補者が乱立。悪辣な妨外や実弾が飛び交う中、“姿なき”人形師真郷長臨が本命に浮上する。やがて、せつらとメフィストは、選挙戦の陰で、“新宿”を呑み込まんとする暗淵に気づくが…。“清くなくても一票を”の、ぶうぶう“区長”選の行方は?
4Kテレビ市場の世界トップシェアを奪える次世代技術を、日本企業フロンテが開発ー凋落の続く韓国企業チムサンは、その最新技術の強奪を狙った。だが、盗み出したデータを、警備員吉岡に奪われてしまう。吉岡はそれをチムサンに切り捨てられた元技術者宮下に託そうとしていた。ここにデータを記録したSDカードを巡る、チムサンと宮下、そして産業スパイ活動の絶対阻止を掲げる警視庁公安部と外事課の争奪戦が勃発した。一方、赤羽中央署生活安全課の疋田務たちは、宮下の妻で韓国人のファジョンの妹ソンエを、売春容疑で追っていた。やがてふたつの事件は複雑に絡み合い、思わぬ展開を見せ始めた…。
野亜市役所職員の磯貝健吾は、突然の人事異動で廃園が噂される市立動物園の園長を命じられた。着任早々、飼育員たちから“腰掛けの素人園長”の烙印を押されて挫けそうになった彼を立ち直らせてくれたのは、一人娘が描いたゾウの絵だった。そこに描かれていたのは、健吾が子供の頃に見たゾウそのものだったのだ。それを見た磯貝は、存続に向けて園を立て直す決意を固め、まず動物園のことを知る努力を始める。やがて見えてきたのは動物たちが抱える様々な問題と、くせ者揃いの飼育員たちの熱く、一途な想いだった…。
沢井涼子は一人息子の良平を引き取り、横浜・鶴見に居を構えて八年。離婚した夏、雑居ビルに楽しげに荷物を運び込む青年を見かけ、なぜか話してみたいと思った。それが弁護士・芳川有仁との出会いだった。開設された事務所に採用されて以来、誠実に最善を尽くす芳川のために頑張っている。今日もまた、苦しみを抱えた新たな依頼人が…。
東京・赤羽の巨大団地葵ヶ丘に住む北原美紗子の娘・奈月が失踪した。赤羽中央署生活安全課の疋田務は部下の小宮真子らとともに懸命な捜査を続けるが、一向に消息は掴めなかった。奈月はいったいどこへ。やがて誘拐犯を名乗る人物から身代金要求の電話がかかったとき、事件は予想もしない方向に暴走を始めたー正統派、かつ、斬新。心を鷲掴みにする新警察小説、誕生!