出版社 : 祥伝社
アイと富士子は、二十年来の友人・益恵を“最後の旅”に連れ出すことにした。それは、益恵がかつて暮らした土地を巡る旅。大津、松山、五島列島…満州からの引揚者だった益恵は、いかにして敗戦の苛酷を生き延び、今日の平穏を得たのか。彼女が隠しつづけてきた秘密とは?旅の果て、益恵がこれまで見せたことのない感情を露わにした時、老女たちの運命は急転するー。
厳寒の秋田沿岸に漂着した脱北者が、SLBMを40発急造したと証言した。北朝鮮には、まともな潜水艦がない。証言は真実か、嘘か?統合情報部の玉井二等陸佐と采女三等海佐は、海中からミサイルを打ち上げる発射筒を機雷のように海流に乗せて標的地に接近させるのではと推理。やがて屋久島南方トカラ海峡を通過した北朝鮮の貨物船ワイズマイト号の喫水線変化から、何かを海中投棄したと確信。SLBMの弾頭は、核であるとも推測された。ついに、掃海部隊の機雷エキスパートである水中処分員EODの大越一等海尉、米海軍特殊部隊SEALsにならって創設された特別警備隊の三杉一等海尉らが出動、悪夢のごとき奸知から日本を守るべく、決死の攻防が始まった!
静岡・大井川を遡上し、南アルプス聖岳を目指したカップルが遭難。旅行作家・茶屋次郎の知人の娘石浜波路は保護されたが、恋人の若松和重は遺体で発見される。若松は山行の途中、急に姿を消したという。だが、その死因は絞殺。所持品から、服用者が次々命を落とす危険薬物が見つかる。波路への嫌疑を晴らすため、“魔薬”の流通ルートを追う茶屋だったが、同じく事件を調査していた探偵・的場が刺殺されていたことを知る。緑柱石色の水面が輝く寸又峡、朱色の鉄橋渡る旧い蒸気機関車。絶景が彩る調査行が始まる。
フリーライターの南比奈子が取材することになったのは、伝説の映画プロデューサー、上野重蔵。彼には不可解な謎があった。文芸映画の巨匠として名を馳せていた五十数年前に突如、表舞台から姿を消したのだ。数年後、映画界に再登場したのは、なんとポルノの製作者としてだったー。取材の中で比奈子は、上野が製作したという邦画史上存在しないはずの映画の存在を知る。百年に一度の女優のデビュー作となるはずだった本作が、完成後、上映取りやめになったことも。取材を続けるうちに、上野重蔵という男と幻の映画の全貌が次第に明らかになっていくー。
大勢の人で賑わうクリスマスイブの新宿。通称“ギンイチ”こと銀座第一消防署の消防士・神谷夏美は恋人や同僚らが待つ店へと急いでいた。ところが、新宿地下街・サンズロードで火災発生との通報が入り、ギンイチにも特命出場の指令が出る。夏美らは管轄の消防署とともに消火作業を開始するが、地下街は延焼が拡大し人々は大パニック、出入り口は黒煙で封鎖され、負傷者が続出する。さらに地下街の特設ブースに陳列された電化製品にマグネシウムが含まれていることが判明。マグネシウムに火が燃え移り爆発すれば新宿駅近辺は壊滅、何万人もの死傷者が出る。絶対絶命のギンイチは、ある秘策を打ち立て地下へ潜るが…。何があっても必ず市民の命を守るー消防士・神谷夏美シリーズ三部作、完結!焔に呑まれるダンジョンで闘う戦士を描く、ノンストップ・パニック小説!
「ママナラナイわね、お互いに」斉藤尚弥は不動産会社に勤務する三十六歳。近頃、何もかもうまくいかない。男性器も心も折れてしまい、おまけに仕事も絶不調ー通称“川の家”と呼ばれる高台にある家に住む、夫婦への立ち退き交渉が難航していたのだ。夫人によれば、立ち退きを強く拒否しているのは夫の方らしいのだが…。夫人の協力を得て交渉を続けるうちに、やがて思いもよらない事実が判明しー(表題作)。この世に生を享け、大人になり、やがて老いるまでーままならぬ心と体を描いた美しくも不穏な、極上の10の物語。
駆け出しの貧乏ライター湾沢陸男。この男の行くところに、奇っ怪な事件あり。癖の強すぎるスタッフが集うウェブマガジン『アウターQ』。エンタメサイトのはずなのに引き寄せてしまう、ホンモノを…。ホラー界の俊英が描く、あなたのヨミを必ず裏切る新感覚ミステリー!
寿永二年(一一八三)、木曾義仲により、京都六波羅を追われ西へと落ちた平家一門。同年冬、清盛の弟・頼盛の姿は鎌倉にあった。正妻の子として、一時は清盛に代わる平家の棟梁と期待された頼盛は、なぜ一門を離れたのか。偉大な兄をひとえに支え続け、決して野心を表にすることのなかった頼盛と、兄があえて殺さず流罪とした宿敵・源頼朝を結ぶ因縁とは?後白河院、白拍子、仮面の童子蜻蛉…異能のものが、平氏の世の終わりに演じた役割は?歴史の急変期における英雄の生き様と、たえまない無常の流れを記す幻想の歴史小説。不世出の成功者を新たな視線から描く。
新中学生の長谷部幸男は憂鬱だった。自分の集落が都市開発の余波で、地元派とニュータウン派とに分かれてしまったのだ。新興地の子は洋式便所を自慢し、地元の子は鍵っ子という存在を訝った。夏休みになると幸男ら両派の男女九人は林間学校に参加した。その晩、突然の土砂崩れが宿舎を飲み込み大人は全員死亡してしまう。集落には神の山と、天災が絶えない禁忌の山が並ぶのだが、開発派は戒めを無視してそこに建てた。呆然とする九人は必死に神の山を目指す。闇に怯え難所を越えるなか、お互いを理解し始め…。極限状態のなかで結んだ友情。そして学んだ“自分で考えて生きる”という力。次世代に語り継ぎたい、思いやりの物語。
大男の依頼は、恋人デイジー捜し。ギターの弾き語りがうまいという。同じ頃、“新宿”で暮馬芽以戸という若者がギターで人気を博していた。秋せつらはなぜか彼を大男に会わせようとする。男性の芽以戸がデイジーなのか?四〇〇年以上前に、スイスで生まれた巨人モンパルナスは、恋人を求めて旅を続けながら殺人を繰り返し、二〇〇年前に惨殺した一家には、不老不死の秘密を記す文書があった…。神出鬼没の医師ランケン、スイス特務員、人を喰らう子供たちも出現、捜索は難航した!人気超伝奇書下ろし最新作!
人生の選択肢はひとつじゃない。それぞれが選ぶ道とはー?千葉香澄は、転職エージェントに勤める四十歳のキャリアアドバイザー。「転職した先輩からすすめられて」「営業以外ならなんでも」「勤め先が倒産して」「あこがれの会社に再挑戦したい」…さまざまなきっかけで転職を考えている人々に相応しい求人を、ちょっぴり頭の固いAI「ソフィア」を活用しながら紹介するのが仕事だ。ときには悩みを打ち明けられたり、あらためて再考を促したりもする。十人十色の仕事観や人生模様にふれるうち、自分自身の仕事や人生も見つめ直すことにー。
夢は大きく、ダービー制覇!家族経営の零細牧場「あかり野牧場」で生まれた一頭の馬は、「北の大地に灯りがともれば」と、キタノアカリと名付けられた。中央競馬デビュー以来、圧倒的着差をつけて連勝し、いよいよG1に挑む。広大な町の狭いコミュニティーは、アカリの話題で持ちきりだった。大牧場が席捲するG1戦線で、世代7000頭超の頂点に立つことなどできるのか?牧場を営む家族、馬産地の仲間たち、崖っぷちの騎手…多くの想いを背に乗せて、希望の灯りがターフを駆ける。一頭の馬が人の心を揺り動かし、夢舞台へと駆り立てる。
余命僅かな登山の師の想いを胸に、たった一人でヒマラヤ最難関・標高8000m超のマカルー西壁に挑む!空中にせり出す“死の壁”を越え、クライマーの頂点に立てるか!?圧巻の山岳小説「ソロ」シリーズ堂々完結!
砂丘の町で育った万智子は大阪の税理士事務所で働く24歳。顧客のウェディングドレスサロンのオーナー了さんに頼まれ、週末だけお手伝いのアルバイトをすることに。了さんに連れていかれた「あつまり」で万智子は美しくてかっこいい年上の女ともだちに出会う。そんなある日、サロンに早田さんという男性が現れ、人生はじめての「恋」のときめきを感じる万智子だったが…。きれいになるのは誰のためかをぜったい間違えたらあかんでー自分を好きになりたい万智子の、小さな勇気を抱きしめたくなる成長物語。
商売人として最後の闘いを挑んだ男の常識破りの秘策とは?築地の社長衆に命を救われた外食チェーンの経営者が、効率優先の閉塞日本に義理と人情でカツを入れる!麻布の呪われた立地のビルを最注目ビルに!働きがい改革・地方創生のヒントが満載の熱きビジネス小説!
小説家の織部妙は順調にキャリアを積む一方、どこか退屈さも感じていた。そんなある日、“美人作家”として話題の新人、橋本さなぎの処女作に衝撃を受ける。しかし、文学賞のパーティで対面した橋本の完璧すぎる受け答えに、なぜか幻滅してしまう。織部の興味を惹いたのは、橋本の秘書である初芝祐という女性だった。初芝への気持ちを持て余す織部は、やがて「橋本さなぎ」の存在に違和感を抱くようになる。その小さな疑惑は開けてはならない、女同士の満たされぬ欲望の渦への入り口だった…。「第13回エキナカ書店大賞」受賞作家の最新作。
偏屈だが解剖の腕は超一流の光崎藤次郎教授が率いる浦和医大法医学教室に、城都大附属病院の内科医・南条がやって来た。前日に搬送され急死した前都議会議員・権藤の死に疑問があるという。肝臓がんが死因とみられたが、九カ月前に受けた健康診断では問題がなかった。捜査に駆り出された埼玉県警の古手川は、権藤の甥が事故米を使って毒殺を目論んだ証拠を掴む。しかし、光崎が司法解剖から導き出した答えは恐るべき感染症だった!直後、権藤の周囲で新たな不審死が判明。感染源特定に挑む新米助教・栂野真琴が辿り着いた驚愕の真実とはー!?
せつらvs.せつら!? 〈魔界都市“新宿"〉夢の対決! 天才人形師が生んだ哀切の造形とは? 超人気シリーズ最新刊書下ろし! 生きているようだ、という感嘆は彼女の作品のためのものと言われた、天才人形作家桜田国子。秋せつらは女子大生楓の捜索を依頼されるが、捜し当てた部屋の生活痕は、対象が人外のものであることを告げていた。「ここにいたのは、人間じゃない」楓は、亡くなった娘を偲んで国子が手がけた人形だったのだ。楓と思しき容疑者による殺人が発生し、美貌の人捜し屋になぜか強盗殺人の嫌疑が及んだとき、そこには四人のせつらが……(「〈新宿〉人形物語」より)。〈魔界都市〉の人捜しは哀しみが宿命。“絶望”を紡ぐシリーズ最新刊! 未帰還児童 〈新宿〉人形物語 客の後ろに誰がいる? 幽霊屋敷 帰って来た男
スポーツ用品販売会社に勤める素子は、同じく保育園に通う子供を持つ珠理を誘って、日帰り温泉旅行に出かけることに。ずらりと食卓に並ぶのは、薬味をたっぷり添えた鰹のたたき、きのこと鮭の茶碗蒸し、栗のポタージュスープ。季節の味を堪能するうち、素子は家族を優先して「自分が食べたいもの」を忘れていたこと、母親の好物を知らないまま亡くしてしまったことに思いを巡らせ…(「ポタージュスープの海を越えて」)。彼女が大好きな枝豆パンは、“初恋の彼”との思い出の品。病に倒れた父の友人が、かつて作ってくれた鶏とカブのシチュー。-“あのひと口”の記憶が紡ぐ6つの物語。