出版社 : 祥伝社
天文十二年、種子島に鉄砲が伝来した。この時、領主・種子島時堯は日本を植民地化から守る選択をした。今後、鉄砲は“買う”のではなく“作る”のだと。その頃、織田信長は吉法師と呼ばれ、那古野に城を与えられたばかり。弱小ながらも、鉄砲に出会った吉法師は目を爛々と輝かせ、天下取りを確信した。以来、根来寺に鉄砲を作らせ、堺の商人・今井宗久らに火薬を調達させ、戦場で新たな戦法を試み、築城の方法まで変えていったー武士の魂を抱きつつ、ヨーロッパ文明を最大限に活用した信長と新しい道を歩み始めた日本を描く!
日本の絶景を巡る人気旅情推理。旅行作家・茶屋次郎シリーズ 富士西麓を流れる日本三大急流に、悪意が浮かぶ! 少女の瞳が宿した闇。交通事故に偽装された殺人に茶屋が迫る。 その川は山間を白糸で縫うように南流し、太平洋へとそそぐ。日本三大急流の一つ、富士川である。茶屋次郎は「女性サンデー」の牧村と名川シリーズ取材のため、富士川流域に住む恩人の大工・釜石を訪ねる。すると娘の菜々緒にまつわる凶報を聞く。高校三年生の少女は、恋人がバイクに轢かれ命を落としたのだという。夕刻茶屋が、家を出た菜々緒の後を尾けると、新東名高速に架かる跨道橋上、身を乗り出した少女は橋下へ何かを投じる! 直後、高速道から激しい衝突音が響き……。若き乙女が抱えた闇とは?
日本植物学の父・牧野富太郎愛すべき天才の情熱と波乱の生涯。明治初期の土佐・佐川の山中に、草花に話しかける少年がいた。名は牧野富太郎。小学校中退ながらも独学で植物研究に没頭した富太郎は、「日本人の手で、日本の植物相を明らかにする」ことを志し、上京。東京大学理学部植物学教室に出入りを許されて、新種の発見、研究雑誌の刊行など目覚ましい成果を上げるも、突如として大学を出入り禁止に。私財を惜しみなく注ぎ込んで研究を継続するが、気がつけば莫大な借金に身動きが取れなくなっていた…。貧苦にめげず、恋女房を支えに、不屈の魂で知の種を究め続けた稀代の植物学者を描く、感動の長編小説。
死者をも蘇生するメイク師、殺人アンドロイド、米仏伊の武器証人たち… 人形が殺戮に躍る〈新宿〉の夜! せつらが追うは闇か、悪夢か? お待ちかね、読者熱望のシリーズ書下ろし最新刊! 「あなたを拘束できません?」美貌の人捜し屋秋せつらに黒衣の女面つくりがモデルを依頼した。折しも、メイクで死者を甦らせるライフ・アーチストが〈区外〉から潜入。行方を追う探偵海馬は隠れ家を突き止めるや、殺人人形集団に襲われた! さらに、開館間もない「機械人形博物館」に飾られた白い医師メフィストの人形は、せつらも瞠目の、本物と寸分違わぬものだった……。人形に生命は宿り、面に神の造型を超える“美”は与えられるものなのか。浮上した巨大な野望と、天才人形師内外暁鬼の関わりとは?
厨房車に手書きの木札一枚下げて、日本全国ふらりふらりと、移動調理屋“佳代のキッチン”を営む佳代。ところが新型コロナウイルスの蔓延で、営業休止を余儀なくされた。そんな折、佳代は函館の食堂『自由海亭』閉店の報を耳にする。調理屋名物“魚介めし”に深いゆかりのある食堂だ。佳代が探し続けている両親との懸け橋になってくれた恩もある。居ても立ってもいられなくなった佳代は、厨房車に飛び乗って函館へ。こうして、コロナに喘ぐ人々を訪ねる、佳代の長い旅が始まったー。
「命がけで鮨を握ろうという覚悟がある者だけ、ここに残れ。できない者には、退学を勧める」開口一番、城島先生は宣言した。僕たち鮨科一期生は震えあがったー。昭和六十三年春、大阪。世界に名だたる辻調理師専門学校、通称「辻調」に鮨科が新設された。岡山の平凡な豆腐屋の息子として育った僕、長谷川洋右は、どこか生半可な気持ちのまま鮨科に入学する。基本となる大根のかつら剥きさえ満足にこなせない落ちこぼれの僕に厳しくも辛抱強く教えてくれたのは、口下手で強面だが腕は一流、赤坂の名店仕込みの城島先生だった。尊敬すべき先生にはしかし、知られざる壮絶な来歴があった…。昭和最後の年。若者たちは、青春の全てを鮨に捧げたー世界的ガラス作家の鮮烈デビュー作!
コロナで一変した世界へ二年半ぶりに出所した管野は、心をいやすべく、旅なれた伊豆下田から修善寺、箱根強羅をめぐる。だが、管野を追跡した若者が交通事故死し、再会した修善寺の旅館若女将多恵は、芦ノ湖に水死体で浮かんだ。連続するトラブルと、管野が犯した融資事件の関わりは?やがて新たな殺人が発生、警視庁十津川警部が臨場した!欲にまみれた三年前のマネーゲームの背後に、元首相父子、政治家夫婦が浮上。管野は怒りをこめて、暴力をも辞さぬ罠を仕掛けた!異色ミステリー・アクション!
成富歩夏が両親を亡くして十年、後見人だった二十も年上の奥津悠斗と婚約した。高校時代から関係を迫られていたらしい。歩夏に想いを寄せる三原一輝は、奥津を殺して彼女を救い出すことを決意。三原は自らの意思を、奥津の友人で弁護士の芳野友晴に明かす。犯行の舞台は皆で行くキャンプ場。毒草、崖、焚き火、暗闇…三原は周到な罠を仕掛けていく。しかし完璧に見えた彼の計画は、ゲストとして参加した碓氷優佳によって狂い始める。見届け人を依頼された芳野の前で、二人の戦いが繰り広げられるー。
キム・ジヘ。平凡な彼女は、世の中にも会社にも期待することを諦めていた。だが、一癖ある同僚との出会いにより社会へ小さな反撃を始める。次第にジヘは自分らしい生き方を模索するようにー。第5回済州4・3平和文学賞受賞作品。
明日に挙式を控えた、信用金庫勤めの井東春香と、パン屋の息子でデザイナーの細井真平。ごくごく普通に暮らす二人が、偶然の出会いから愛を育み夫婦になる。家族で過ごす最後の夜、春香の両親と弟、そして祖母には、それぞれに伝えたい想いがあった。一方、新しい家族を迎える細井家でも、実の母を早くに亡くした真平に、今だからこそ話しておきたいことがあり…。結婚前夜を、当人たちとその家族の視点から紡ぐ感動の物語。
“見守り屋”の犬森祥子のもとには、様々な依頼が舞い込む。話し相手になったり、頼まれれば片づけをしたり、夜から朝までひたすら人を見守るのが仕事だ。夜勤明けの楽しみは「ランチ酒」。仕事の疲れを癒しながら、離れて暮らす一人娘に、これからの人生に思いを巡らす。そんなある日、十歳になった娘から「話したいことがある」と連絡が入りー。思い出の餃子×ビール、遠くへ行きたくなるお好み焼き×レモン酎ハイ、好きな人と食べたい白いオムライス×白ワイン…。
黒船の圧力おびただしい幕末。信州飯田で生まれ育った田中芳男は、巴里で行われる万国博覧会に幕府の一員として参加する機会を得た。その衝撃は大きく、諸外国に比して近代文化での著しい遅れを痛感する。軍事や産業を中心に明治維新が進む中、日の本が真の文明国になるためには、フランス随一の植物園ジャルダン・デ・プラントのような知の蓄積を創りたい。「己れに与えられた場で、為すべきことをまっとうする」ことを信条とする芳男は、同じ志をもつ町田久成や大久保利通らと挑戦し続け、現代の東京国立博物館や国立科学博物館、恩賜上野動物園等の礎を築いていく…。
斯界の権威・浦和医大法医学教室の光崎藤次郎教授がテレビ番組に出演した。日本の司法解剖の問題点を厳しく指摘し、「世の中の問題の九割はカネで解決できる」と言い放つ。翌朝、放送局のホームページに『親愛なる光崎教授殿』で始まる奇妙な書き込みが。それは、自然死に見せかけた殺人の犯行予告だった。早速、埼玉県警捜査一課の古手川刑事とともに管内の異状死体を調べることになった助教の栂野真琴は、メスを握る光崎がこれまでにない言動を見せたことに驚く。光崎は犯人を知っているのか!?やがて浮かび上がる哀しき“過ち”とは…?法医学シリーズ第四弾!
駅のホームで見知らぬ老紳士から声を掛けられた美織。謎の人物が記した短編を18本読んで簡単な感想を書くだけの仕事。報酬は1字10円、総額143万円。新手の詐欺かと訝しみつつも押し切られる形で前金を受け取った美織は、1日1話ずつ届けられる物語に次第に追い詰められていく…。最後に明かされる驚くべき真相とは?
便利屋倉持の相棒で、元自衛隊特殊部隊員の深江が消えた。かつて危険な仕事で命を救ってくれた男だ。並外れた格闘能力で、武器全般に通じ、殺しにもためらいがない。過去は知らないが、何か大きなトラブルに巻き込まれたに違いない。行方を追い始めるや、すぐさま妨害の手が倉持を襲う。かすかな手掛かりから、警視庁関係者を名乗る儀藤という男に接触。深江の正体を知っているらしい儀藤の協力を得て、ついに居場所を掴んだ倉持は、厳冬の穂高岳へ向かう。だがそこには、深江を狙う凄腕の渡り猟師が潜んでいた!本格山岳アクション小説。
阪神・淡路大震災で被災し、妻子を亡くした小野寺徹平。東日本大震災で被災した東北の小学校に応援教師として赴任し、二年を過ごした小野寺は、神戸へ戻り、教え子の相原さつきが代表を務めるNPO法人の活動に奮闘していた。震災で起きたことを語り継ぐ活動を通じ、被災地復興の主役はその土地でこれからの人生を歩む若い世代であるとの思いを強くする。その一方で、住宅、五輪、ボランティア、産業誘致など「復興」の掛け声の下で生じる新たな課題。俺は何をするべきかー小野寺がたどり着いた、ひとつの結論とは。震災三部作、完結!
小学生でデビューし、天才の名をほしいままにしていた小説家・綴喜文彰は、ある事件をきっかけに新作を発表出来なくなっていた。孤独と焦りに押し潰されそうになりながら迎えた高校三年生の春、綴喜は『レミントン・プロジェクト』に招待される。それは若き天才を集め交流を図る十一日間のプロジェクトだった。「また傑作を書けるようになる」という言葉に参加を決める綴喜。そして向かった山中の施設には料理人、ヴァイオリニスト、映画監督、日本画家、棋士の、若き五人の天才たちがいた。やがて、参加者たちにプロジェクトの真の目的が明かされる。招かれた全員が世間から見放された元・天才であること。このプロジェクトが人工知能「レミントン」とのセッションを通じた、自分たちの「リサイクル計画」であることをー。
独自の自然主義に染まった元医師・土岐周一郎と不倫相手の北郷咲良は、家族も仕事も擲って、沖縄の遙か南に位置する無人の“フリムン島”にやって来た。新たな人生の幕開けに高揚する二人はしかし、そこに先住者が潜むことを知らなかった。恋人を殺し逃亡の果て、島に辿り着いた苅部公則。警察沙汰を恐れる公則は、理想に囚われた無知な二人が来て早々いがみ合いを始めるのを見て、仕方なく助けの手を差し伸べた。正体を偽る公則と二人の奇妙な共棲はうまく運ぶかに見えた…。だが、土岐に感化された親子、島ごとVIP向け宿泊施設にする野望の女社長らが、相次いで上陸。やがて島は、人間のエゴと憎しみがぶつかり合う“愚か者の島”と化していくー。