出版社 : 筑摩書房
『さくら』で彗星のように華やかなデビューを飾った西加奈子の第4作にあたる長編小説。冬の大阪ミナミの町を舞台にして、若々しく勢いのある文体で、人情の機微がていねいに描かれていく。天性の物語作者ならではの語り口に、最初から最後までグイグイと引き込まれるように読み進み、クライマックスでは深い感動が訪れる。このしょーもない世の中に、救いようのない人生に、ささやかだけど暖かい灯をともす絶望と再生の物語。この作品で第24回織田作之助賞を受賞している。
17歳の平凡な少女キャサリンは、リゾート地バースで恋に落ち、由緒あるお屋敷に招待されて有頂天。古めかしいお屋敷で、愛読中のゴシック小説に出てくるようなホラー体験ができる、と大喜びでノーサンガー・アビーに出かける。ところが、小説の読みすぎでキャサリンの妄想はとんでもない方向に…。オースティン初期の辛口ラブコメディー。定評ある読みやすい新訳で初の文庫化。
ユーモラスな思春期男女の性の芽ばえ、曲折にとむ恋愛や結婚生活に揺れる微妙な心理を描いたチェーホフの魅力あふれる一冊選集。『芝居がはねて』『かわいいひと』『犬をつれた奥さん』など12篇を読みやすい日本語で贈る。
陽光に耀く地中海の浜辺のホテル、まどろむ二人の恋人を眺めながら青年は、遠い北欧の街での幸福な時間に思いを馳せる…ジョイスの手法をとりいれて描く表題作に、コロンビアからパリにやってきた美少女の出現が、コレージュの男子生徒たちに引き起こす惑わしに満ちた動揺を、神秘的な感動にみちたエピソードとともに描く青春小説『フェルミナ・マルケス』を併せ収める。魅惑の作家の淡く美しい名作二篇の新訳。
思い描いていた未来をあきらめて赴任した高校で、驚いたことに“私”は文芸部の顧問になった。…「垣内君って、どうして文芸部なの?」「文学が好きだからです」「まさか」!…清く正しくまっすぐな青春を送ってきた“私”には、思いがけないことばかり。不思議な出会いから、傷ついた心を回復していく再生の物語。ほかに、単行本未収録の短篇「雲行き」を収録。
一見さんも常連さんも楽しめる、「半七捕物帳」の傑作選!後篇も名作ぞろいで、解説対談にもますます熱が入ります。宮部みゆきに、こんな悪者を書いてみたいと言わしめた罪人もついに登場。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・実写映画化決定! !◎津村記久子作品初の映画化◎主人公・堀貝佐世(ホリガイ サヨ)役は佐久間由衣さん痛ましい過去を持つ猪乃木楠子(イノギ クスコ)役は奈緒さん監督・脚本:吉野竜平さん2021年全国順次公開予定・・・・・・・・・・・・・・・・・・・だるい日常その裏に潜む悪意ーー大学卒業を間近に控え、就職も決まり、単位もばっちり。ある意味、手持ちぶさたな日々を送る主人公ホリガイは、身長175センチ、22歳、処女。バイトと学校と下宿を行き来し、友人とぐだぐだした日常をすごしている。そして、ふとした拍子に、そんな日常の裏に潜む「暴力」と「哀しみ」が顔を見せる…。第21回太宰治賞受賞作にして、芥川賞作家の鮮烈なデビュー作。解説:松浦理英子
フラナリー・オコナーは20代半ばから亡くなるまで、アメリカ南部の農園で母とともに暮らした。難病と戦いながらも、午前中の数時間を必ず執筆にあてた。南部の人々を多く描いたが、その目は全世界を見捉えていた。O・ヘンリー賞を生涯で4度受賞し、短篇の名手と賞賛される。下巻は、死後刊行の短篇集『すべて上昇するものは一点に集まる』と後期作品2点、年譜、訳者あとがきを収録。
武士を捨て、鉄扇ひとつを身に帯びて二代目米造がゆく。有名料亭の娘の不審死を追う米造に襲いかかる江戸の闇。強欲な与力、衆道狂いの札差、謎の浪人、山伏くずれの博徒…好評の捕物暦、最新作。
68年世代のポールは、まばゆいばかりの美しい富豪令嬢と出会い、結ばれる。写真家としても大成功をおさめた幸運な日々…そこに突如、すざまじい悲劇がつぎつぎと襲いかかる。ミッテラン大統領も登場、マラソンの円谷選手の哀切な死が綴られたり、スリルいっぱいの展開と絶望のさい果てのペーソスが胸をえぐる、フランスでベストセラーの話題作。
甘い、記憶。「新しい龍を彫りました」すべてはそこから、始まったのかもしれない。明日の延長線上に未来があるとは限らない。だから-。第21回太宰治賞作家による、恋愛以上の物語。運命に断ち切られた恋を描く短篇小説「ことり心中」同時収録。
『名短篇、ここにあり』では収録しきれなかった数々の名作。人間の愚かさ、不気味さ、人情が詰った奇妙な12の世界。舟橋聖一「華燭」、永井龍男「出口入口」、林芙美子「骨」、久生十蘭「雲の小径」、十和田操「押入の中の鏡花先生」、川口松太郎「不動図」、吉屋信子「鬼火」、内田百〓(けん)「とほぼえ」、岡本かの子「家霊」、岩野泡鳴「ぼんち」など。文庫オリジナルでご堪能下さい。
本の目利き二人の議論沸騰し、迷い、悩み、選び抜かれたとっておきのお薦め短篇12篇。半村良「となりの宇宙人」、黒井千次「冷たい仕事」、小松左京「むかしばなし」、城山三郎「隠し芸の男」、吉村昭「少女架刑」、吉行淳之介「あしたの夕刊」、山口瞳「穴」、多岐川恭「網」、戸板康二「少年探偵」など、意外な作家の意外な逸品、胸に残る名作をお楽しみ下さい。文庫オリジナル。
フランクザッパ・ストリート再び!動物と人間たちが暮らすファンキー&ポップな街の物語。待望の続編。ニューキャラ、占い師のムイちゃんと、二人の男の子の恋の行方は?ペンギンのグレース・ケリーが生んだ卵の父親は誰?スーパーモデルのパンダのワイワイは、実はサンタクロースだった?…ここでは、誰もがひたすらに愛を信じて生きている。そうすれば、ほらね。行き着く先は、きっと、とびっきりの幸福。
フランクザッパ・ストリートで暮らす人間と動物が繰り広げる、ほのぼの楽しく、ちょっぴりせつない物語。恋愛あり、友情あり、食欲あり!キャラクターたちもキュートで魅力的。映画監督志望のハル、ウェイトレスのミミ、アイスクリーム屋のペンギン・グレース、女の子にモテモテのパンダ・ワイワイ、謎のパカラナ兄弟…そのほかにも、いっぱい。誰もが伸びやかに生きている。そして、もちろんHAPPY ENDING!ファンキー&ポップな街へようこそ。
「その日も、呼び鈴は、いつにもまして、権力的に鳴った。その瞬間、わたしは神経を逆なでされ、理由もなく押したひとに反感を抱いた」(「隣人鍋」)。日常と非日常との、現実と虚構との、わたしとあなたとの間の一筋の裂け目に、ある時はていねいに、ある時は深くえぐるような視線をそそぐ。「島と鳥と女」「青いインク」「げんじつ荘」「風のリボン」など、15の短篇を収録。