出版社 : 筑摩書房
「シは有限の極み。上のドは神の世界。知覚できないものの世界をガムランが開く」。失踪した友人から届いた三枚の絵葉書が、“私”をバリの深奥へと導く。宗教と音楽とむせかえるような自然。不思議な青年オダ。「ニュピ」にはミツコに会えるかもしれないという謎の言葉の意味は…?『7 days in BALI』として発表された傑作長編を大幅改稿。
誰かを好きになって、恋をして、一緒に暮らす。そこには、たくさん喜びや悲しみ、想いの襞が重なりあっている。夫と娘と初詣に行く日常を得るまでの、恋愛と仕事に戦う日々を描く表題作「家内安全」のほか、「ゆっくり進む船が行く」「鉄紺」「ぬるぬる」、平間至の写真から生まれた「ショートストーリーズ」など、いずれも、恋をする心と体を、まっすぐに見つめた小説集。
「分別」のある姉エリナーと、「多感」な妹マリアン。エリナーが思いを寄せるエドワードは、ぱっとしないが誠実な青年。マリアンが激しい恋をするウィロビーは、美貌と気品を兼ね備える情熱の男性。この似合いのカップルに、それぞれ不似合いな人物が複雑に絡み、姉妹の結婚への道は紆余曲折する。19世紀英国の田園を舞台に繰り広げられる恋愛小説の傑作。初の文庫化を読みやすい新訳で実現。
道化者、悪戯者、詐欺師、暴力の化身、色欲魔、純粋少女ーこれらのトリックスターたちが、中国の五大長篇小説『三国志演義』『西遊記』『水滸伝』『金瓶梅』『紅楼夢』の物語世界において、どんな役割を果たしているかをたどり直す。
誰かを好きだと言ってしまいたくて、誰かを嫌いだと言ってしまいたくて、でも、それがとても恐いことを招きよせてしまうような気がしてー。甘えと優しさが毀れると、その向こう側には闇と憎悪がぽっかり口をあけている。サイモンとガーファンクルの名曲にのせて、80年代の「青春」の重さを描く15の物語。
今では「古典」となりつつある鴎外の名高い短篇小説『舞姫』を井上靖の名訳で味わう。訳文のほか、原文・脚注・解説を付して若い読者でも無理なく読める工夫を凝らした。また資料篇として、ベルリン留学時代の鴎外や「舞姫」エリスの謎についてなど、作品の背景を探る代表的文献を紹介。読みごたえのある名作をさらに深く味わえる一冊。
相続問題をきっかけとして嫁と舅の間に生まれた愛を描いた表題作をはじめとして、金持ちの息子とゲイボーイの愛の結末を描く「愛の百萬弗」、堅い銀行員の夫の意外な愛人「愛のハンカチーフ」ほかー白日の下にさらされる衝撃的な愛の裏事情四篇。各篇に田中靖夫、宇治晶、東恩納裕一、山本容子各氏の挿画入り。
世の中にはいろんな「ヘンな愛」があふれているー予備校生の隠れた生態を目撃した女子大生たち、改悛の情いささかもないパンティ泥棒の言い分、レスビアンのトラック運転手と恋に走ったフツーの主婦、気がついたら一児の父になっていた小学生…鬼才橋本治が昭和の終わりから平成にかけて書きつづった「ヘンな」愛の短篇コレクション第一弾。
亡くなった夫が、繰り返し話していた故郷の町。遺された妻は、夫が世話になった「その人」に会って、一言お礼を言おうと旅立った。彼女がそこで見たものは…。『セイジ』で多くの読者を感動させた作者の最新作品集。モノローグで語られる三つのバラードは、しみじみと心にしみわたる。
梁山泊にすべて集まった百八人の好漢たちは、いよいよ「天に潜って道を行う」義の旗を挙げた。一方、彼らを制圧せんとする朝廷の奸臣たちは、彼らの帰順をはばみおのれの権力の安泰をはかろうとするのだが…。
幼稚園は退園処分、児童劇団は退団、小学校は遅刻常習。険悪なムードの両親…。1960年代、高度成長で世の中が大きく変化し、オトナも子供も悲喜こもごもの暮らしがあった。コドモっぽい同級生を尻目にビートルズに熱をあげるちょっとニヒルな少女アケミの物語。群ようこの出来るまでー小学時代篇。
昏い不気味な中庭のベンチに女が哀れな姿ですわっている。亡霊の魔力に魅入られた男はその顔を見ずにはいられなくなる…恐ろしくも忘れがたいバレージの傑作「見た男」、キラ=クーチ「蜂の小箱」、マッケン「地より出でたる」、ボウエン「罌粟の香り」、トムスン「闇の桂冠」など、恐怖の深い味わいが読者を魅了する英国怪奇小説傑作コレクション。
「かなしき女王」とは、ケルト神話の女戦士スカァアのこと。スカイ島の名の由来となったとされる、この美しく猛々しい女王と英雄クウフリンの恋と戦いの物語こそ、スコティッシュ・ケルトを代表する物語である。輪廻転生を信じる土着信仰ドルイドと古代キリスト教が入り交じった幻想的な短篇12篇に、新たに戯曲「ウスナの家」を収録。いずれも松村みね子の名訳による。
懐かしい町「月舟町」の十字路の角にある、ちょっと風変わりなつむじ風食堂。無口な店主、月舟アパートメントに住んでいる「雨降り先生」、古本屋の「デニーロの親方」、イルクーツクに行きたい果物屋主人、不思議な帽子屋・桜田さん、背の高い舞台女優・奈々津さん。食堂に集う人々が織りなす、懐かしくも清々しい物語。クラフト・エヴィング商會の物語作家による長編小説。
食器だけ作って下せえの。おめさんの食器は日本一使い易いけえ。みほの熱い励ましで夫啓一の覚悟はできた。台風で窯が壊れたが、もう一ぺんやってみよう。幾工程もの土作り、蹴りろくろ、薪窯で日用雑器を焼きつづける家族の歴史と愛を力強く描く。