著者 : 吉田篤弘
師匠のベルダさんが愛用していた万年筆のインク、“六番目のブルー”を探し求めてジャン叔父さんと旅をつづけてきた14歳のオリオ。インクの秘密を解く鍵が奇妙な唄にあるとわかるが、なかなか見つからない。そんなとき、迷えるオリオを導いたのは世にも稀な「本当の真っ赤な林檎」だったー。ロングセラー『月とコーヒー』に連なる“インク三部作”完結篇!
小さな奇跡の物語がここに終わり、ここから、また始まる。僕は地元のラジオ局で深夜の番組を担当している。ある日、17歳の時に絵のモデルをしたことを話したところ、リスナーから、僕によく似た肖像画を見た、と葉書が届くー。土曜日のハンバーガー、流星新聞、キッチンあおい、行方不明の少年、多々さん、鯨オーケストラーすべてが響きあって、つながってゆく。
師匠・ベルダさんが愛用していた万年筆のインク、“六番目のブルー”がなくなったー。「奇妙な惑星」博物館の保管室長を引き継いだ14歳のオリオは、ジャン叔父さんと共に、その幻のインクを求めて旅に出る。行方を探るうち、インクの秘密はある奇妙な「唄」に隠されているとわかり…。
都会のはずれのガケの上にある古いアパート。その屋根裏にひっそり暮らしている元オーボエ奏者のサユリ。唯一の友だちは、頭の中にいる小さなチェリー。個性的で魅力的な登場人物が織りなす待望の長編小説ー。
都会のへりの窪んだところにあるガケ下の町。僕はその町で、“流星新聞”を発行するアルフレッドの手伝をしている。深夜営業の“オキナワ・ステーキ”を営むゴー君、メアリー・ポピンズをこよなく愛するミユキさん、「ねむりうた」の歌い手にしてピアノ弾きのバジ君、ロシアン・コーヒーとカレーが名物の喫茶店“バイカル”を営む椋本さん、ガケ上の洋館で、“ひともしどき”という名の詩集屋を営むカナさんー。個性的で魅力的な人々が織りなす、静かであたたかな物語。
東京、午前一時。この街の人々は、自分たちが思っているよりはるかに、さまざまなところ、さまざまな場面で誰かとすれ違っているー映画会社で“調達屋”をしているミツキは、ある深夜、「果物のびわ」を午前九時までに探すよう頼まれた。今回もまた夜のタクシー“ブラックバード”の運転手松井に助けを求めたが…。それぞれが、やさしさ、淋しさ、記憶と夢を抱え、つながっていく。月に照らされた東京を舞台に、私たちは物語を生きる。幸福な長篇小説。滋味深く静かな温もりを灯す、12の美味しい物語。
この世でいちばん哀しいのは、一度も語られることのなかった物語と、一度も奏でられることのなかった音楽だ。吉田篤弘のデビュー作、待望の復刊。書き下ろし解説を含む最新リマスター版!
喫茶店“ゴーゴリ”の甘くないケーキ。世界の果てのコインランドリーに通うトカゲ男。映写技師にサンドイッチを届ける夜の配達人。トランプから抜け出してきたジョーカー。赤い林檎に囲まれて青いインクをつくる青年。三人の年老いた泥棒、空から落ちてきた天使、終わりの風景が見える眼鏡ー。忘れられたものと、世の中の隅の方にいる人たちのお話です。小箱の中にしまってあったとっておきのお話、24ピース。
十文字扉、職業「電球交換士」。節電が叫ばれLEDライトへの交換が進む昨今、仕事は多くない。それでも古き良きものにこだわる人の求めに応じ電球を交換して生計を立てていた。人々の未来を明るく灯すはずなのに…行く先々で巻き込まれる厄介ごとの数々。自分そっくりの男が巷で電球を交換してる?最近俺を尾行してる黒い影はなんだ?謎と愉快が絶妙にブレンドされた魅惑の連作集!
なぜ神様は犬に笑顔を授けてくれなかったのかー“月舟シネマ”の看板犬ジャンゴは、心密かに「笑う犬」を目指している。そんなジャンゴの思いをよそに、雨が町を濡らし、人に事件を運ぶ。小さな映画館と、十字路に立つ食堂を舞台に繰り広げられる雨と希望の物語。ゆるやかに呼応する“月舟町”シリーズ三部作の完結編。