出版社 : 筑摩書房
地下アイドル・愛野真実の応援だけを生き甲斐にするぼくは、ある日、彼女が殺人犯だというニュースを聞く。かわいいだけで努力しか取柄のない凡庸なアイドルである真実ちゃんが殺人犯なんて冤罪に決まっていると、やはり真実ちゃんのファンだという同じクラスのイケメン・森下とともに真相を追い始めるがー。歪んだピュアネスが傷だらけで疾走するポップでダークな青春小説!
たった5分でひっくり返る28の“超”短編小説。ミニマルな構成にシャープな風刺と驚きの結末が仕掛けられた注目の作詞家が描く“ことば”のエンターテイメント。
検察が押収したわいせつ図画販売罪の証拠品、その中のフィルムの映像に妻と似た女性の姿を見つけた検察官の笹田は独自調査に乗り出すが、たどり着いたのは思いもよらない残酷な真相だった(表題作)。普通の人々が歪んだ事件を引き起こす恐ろしさと悲しみを巧みに描き、読者の予想を裏切る驚愕の結末を鮮やかに提示する。昭和の名手の妙技を堪能できる、文庫オリジナルの短篇傑作選。
定年になった三沢平太郎は退職金と貯金を合わせて300万円を5人の娘と自分で平等に6等分することにした。その金を元手に喫茶店を開いた長女、お金に困っているという恋人に貸した次女、旅行の資金にする三女、株式に投資する四女、会社で高利貸しを始めた五女、小料理屋の女に入れあげる父、平太郎。それぞれの50万円の使い道から三沢家にドタバタ劇が巻き起こる?!
戦争に負けた日本。男たちはどうやって生きていくのでしょうか?国産旅客機の開発を夢見る元中尉、進駐軍専用キャバレー経営から、みんなに夢を売る観光事業に転身する男。家族をかかえ悪戦苦闘しながらも、夢は少しずつ実現に向かうのでしょうか?妻を空襲で亡くし、ひとり娘の成長に気をもんだり、戦争未亡人との恋に悩んだり…。阿川弘之の娯楽傑作。
吉本興業創立者・吉本せい。その弟・林正之助は、姉を支えて大正・昭和の時代にお笑いを大きなビジネスへと築きあげた。才能ある芸人を発見し、興行界のややこしいトラブルは体を張ってでも解決した。その辣腕ぶりは業界に知れ渡り、ライオンの異名で呼ばれた。さまざまな芸人との出会いや、驚くべき芸界秘話などを満載!「小説吉本興業」を改題文庫化
なぜか酔いどれの私が付添人を務めることになった結婚式のめちゃくちゃな顛末(「禅式結婚式」)。残業だらけの工場を辞め、編集者として再出発した男がやらかした失敗の数々(「馬鹿なキリストども」)。何もかもに見放された空っぽでサイテーな毎日。その一瞬の狂った輝きを切り取った34の物語。伝説的カルト作家による愛と狂気と哀しみに満ちた異色短篇集。
箱根の山は天下の嶮か、ケンカのケンか?-足刈にある二軒の老舗旅館、玉屋と若松屋は先祖代々の犬猿の仲だ。だが若松屋の娘、明日子と玉屋の若番頭、乙夫は反発しながらも内心惹かれあっていた。いがみあう旅館、勃発する跡継ぎ問題、親から紹介された見合い相手、旅館の経営不振と大事故、乗り込んでくる都会の大資本…二人の恋の行方と箱根の未来はどうなる?
お金持ちの台湾華僑の息子、龍馬は車が欲しい大学生、そのガールフレンド、サキ子はシャンソン歌手としてデビューしたいが、青果仲買人の父の許しが得られない。そんな二人の夢を叶えるのはバナナ?ひょんなことからバナナの輸入で金儲けをすることになったのだが、そこへ周囲の思惑が絡み、物語は意外な方向へ!テンポの良い展開に目が離せないドタバタ青春物語。
牟礼家の次男、昌二郎は12歳。気が優しくて曲ったことが大嫌いなのだが、家族から邪魔者扱いされるので反発して悪戯ばかり。味方は、婆やのお民だけ。ある日、誤解と行き違いから異母兄と喧嘩して大怪我をさせてしまい感化院へ…。しかし、そこで出会った友達との生活で本来の気性を取り戻していく。小粒だがぴりっとしたまるで“胡椒”みたいな少年の成長物語。
漱石生誕150年。その生涯の中で分岐点となる一年があった。明治38年、教師稼業の傍ら、発表した小説『吾輩が猫である』が評判となり、帝大教授への道か、小説家への道かで迷う漱石先生。日露戦争勝利に沸き立つ世相を背景に、分かれ道に立った漱石先生の一年間を『吾輩は猫である』のモデルになった夏目家の福猫、半兵衛の目を通して小説仕立てで描く表題作を大幅に改訂した決定版!また、当時の漱石の生活を別の視点から描いたエッセイ「千駄木町の漱石先生」を併録。
新子はマイマイ(つむじ)をピンと立て、妹や友達と今日も元気に駆けまわる。大好きなおじいちゃんが作ってくれたハンモックは二人だけの秘密。昭和30年の山口県国衙を舞台に、戦争の傷を負いながらも懸命に生きる大人たち。変わりゆく時代の中で成長する日々を懐かしくも切なく描いた傑作。片渕須直監督アニメ映画『マイマイ新子と千年の魔法』原作小説。
これまで高校国語教科書に掲載されたことのある森鴎外の小説を中心とした作品集。教科書に準じた注と図版がついて、読みやすく分かりやすい。解説して、森鴎外についての名評論も収録。
「あなた、どうなさるおつもり?」「驚き、あわて、かつ困る」。作家・野村耕平は二男一女の父、末っ子の友雄も小学四年生になるというのに、妻が懐妊。末の末っ子誕生を控えながら軍艦小説の執筆、親炙するS先生の全集編纂と仕事は多忙。お寝坊の秘書と、新しいお手伝いさん、悪戯好きの作家仲間と身辺はまったく落ち着かない。-昭和ファミリー小説の決定版!