出版社 : 角川春樹事務所
長い黒髪をぬらし、汚れた着物姿で山道を歩いていた私を一人の警官が助けてくれた。私の名前は小夜子。それ以外の記憶はない。私はなにものかに導かれて新宿にたどり着いたが、そこには山梨で私を助けてくれた警官がいて、私にこう告げた。「きみは死んだ人間なんだ。人の後ろに立つと、その人間の怨みの中にきみの怨みが入ってしまう」とー。人間の心の闇を描き出す長篇ホラーの傑作。
天変地異や変事を扱う陰陽寮の頭、弓削是雄は当代一の術士と衆人より目されていた。彼は陰陽師の紀温史、蝦夷の淡麻呂、陸奥で山賊の女頭目であった芙蓉…と多士済済の者たちを配下に従え、忙しい日々を送っていた。そんなある日、羅城門に人の倍以上も背丈がある鬼“長人鬼”が現れた。一方、是雄は関白からの急な呼び出しがあり、「淡路行き」の命を受けるが…。是雄たちが怪異の謎に挑む、妖かしの新物語。
どこにでもある新興住宅街のアパートで、その前代未聞の事件は起った。血まみれの現場には、臓器を取り出され、全裸となって変わり果てた美人OLの姿があった。しかも臓器の一部を持ち去られてー。いったい被害者の身に何が起ったというのか?やがて、彼女を執拗につけ狙っていたものが、次々に浮かび上がるが…。鬼才・友成純一の描く戦慄のストーカー世界、書き下ろし。
徳川家康は南光坊天海ら密教僧に命じて、新たなる領地となった江戸を霊的防御都市とするべく開発、その力で豊臣家に成り代わって天下人たらんと目論んでいた。その動きに気付いた石田三成は、陰陽師半井を借り受け、家康の野望を粉砕するべく妨害工作を開始する。江戸と京都で繰り広げられる密教僧と陰陽師との法力合戦の勝敗はいかに!そして現代まで続く江戸ー東京の繁栄の源となった風水の秘密とは。
有田順二は通勤電車で「痴漢」の濡れ衣を着せられた。起訴された有田は争い続け、無罪が言い渡されたが、結局その間に職を失い、妻と離婚した。有田は心身ともに荒廃していった。そんなある日、飲み屋で熊谷という男に「雑談クラブ」へ誘われた。そこは心に深い傷を負った被害者たちの憩いの場であった。そんな折、有田を含む四人の常連たちの加害者たちが、相次いで死傷した…。心に傷を背負った人間たちを描くホラーミステリーの傑作。
グラフィックデザイナーの僕は、猫の手をコンピューター画像で作るという仕事の依頼を受ける。五回の試作を経てようやく完成した後、耳、しっぽ、ヒゲと、次々に依頼が続く。それらは依頼主のプログラマーによって、コンピューターの中で飼う「電子猫」となり、販売され大ヒットとなるのだが…。ヴァーチャルペットの世界を先取りし話題となった、著者初の長篇小説。
電話こそ知恵の根源であり、電話コードこそ人間の連帯の具現であるー「電話」を通し、現在の閉塞感を打破し、絶対的なコミニュケーションを実現しようと企てる“電話男”たち。到来したインターネット時代を早々と予見し、その果てにある光と暗黒を斬新な文体と秀れた想像力で描き出した不朽の名作。
八年前、卑劣な罠で新聞記者を追われた畝原は、以来探偵として一人娘の冴香を養ってきた。ある日、畝原は娘の通う学童保育所で美貌のデザイナー・姉川明美と出会った。悪意に満ちた脅迫状を送りつけられて怯える彼女の依頼を受けた畝原は、その真相を探りはじめたがー。畝原と姉川が出会う猟奇事件を描いた短篇「待っていた女」と長篇「渇き」を併録した、感動のハードボイルド完全版。
不可思議な現象が、奇蹟かトリックかを鑑定する、奇蹟鑑定人、魚間岳士のもとへ、瀬戸内海の鹿羽島というところから依頼がきた。島にある山の中で、木から鹿の首が生えていたのだという。早速、フリーの鑑定人、天倉真喜郎をひきつれて、鹿羽島へ向ったのだが…。前作『赤き死の炎馬』に続く、奇蹟鑑定人ファイル第二弾、渾身の書き下ろしで登場。
結婚を一ヶ月後に控えた藤森岳志は、独身最後の想い出として、悪友とともに山に登ったが、縦走中に転落死してしまう。婚約者の野々村亜衣は、自分がお守りにと首にかけたペンダントが遺体にないことに、不審を抱くがー。一年後、別の遭難場所から、鎖の切れた、あのペンダントが発見された。真相を追う亜衣の身辺で次々と殺人事件が起きる…。長篇旅情ミステリーの傑作。
都内のガソリンスタンドに乗用車が突っ込み、爆発炎上した。現場に居合わせた警視庁捜査一課の多岐川恭介は、間一髪で災難を逃れたが、現場を去る不審な車を目撃していた。被害者は、ハイテク企業の社長夫人。何者かの恨みで殺されたのか?事件を追い始めた多岐川は、背後に渦巻く人工臓器開発の実態を掴むが、行く手には権力の壁がー。書き下ろし長篇警察小説。
殺人犯の汚名を着たまま獄中死した、婚約者の父の再審請求をしてくださいー。サラ金会社の社用で霧多市を訪れた、弁護士の宗像光生は、飲み屋のママ雅代からとんでもない依頼をうけた。サラ金の顧問という、弁護士として落ちぶれていた宗像は、雅代の度重なる懇願に負けて引き受けてしまうが…。二十年前の事件を追って、北海道から九州、四国を駆ける宗像の辿り着いた真実とは!?木谷ミステリーの最高傑作。
太平洋戦争末期、空襲で家を焼かれ、家族とともに路頭に迷いかけていた“僕”は、縁あってある裕福そうな邸に住み込ませてもらうこととなる。邸には上品そうな女主人と病気の娘の二人が住んでいるだけで、夜になるとどこからともなく悲しげにすすり泣く声が聞こえてくるのだった…。戦争という時代の狂気を背景に驚くべき事実が明かされる表題作の他、“女”シリーズ六篇を含む、幻想の物語全十一篇を収録。
妻が失踪した!新鋭建築家・隅田にとってそれはあまりに突然の出来事だった。まして知る由もなかった。彼の周囲で、不死を求める者たちが暗躍していることを。シュリーマンが発掘したクロノスの壺、古代の巨石信仰、犬神信仰、狼男伝説、吸血鬼伝説ー世界各地に残るこれらの伝承には、ある恐るべき事実を解く鍵が潜んでいるというのだが…。歴史の闇を縦横無尽に駆けるSF伝奇ロマンの傑作。
けだるくて退屈な夏休みのある日、高校生の僕は、友人の紹介で風変わりな少女・アキ子と出会い、そして彼女に惹かれていったー未来への不安、焦燥感、同級生の死、切ない恋心。誰もが通り過ぎて来た、青春のやるせない日々の一ページを鮮やかに描いた、青春小説の最高傑作。
八年という歳月を経て、二人の男が上京した。一人は刑務所から狂気を宿して。一人は山村から愛する一人娘を連れて。かつての仲間に裏切られ復讐に燃える和久井と野獣のようなパワーを持つ桜山は都会の片隅で劇的に出会う。桜山を復讐に利用すべく、娘のあかりを誘拐する和久井。親子は引き裂かれ、父は運命の奴隷となる。火花を散らす男と男。そして生と死。大都会を血に染めて、狂気と愛が激走する。気鋭が放つ衝撃のスーパー・ハードボイルド。
元警視庁の鬼・山城の組織した追跡抹殺部隊、暴力組織・旭道会、警察、自衛隊から成る重厚な包囲網が、マックたちに迫る。絶体絶命の危機のなか、マックたちの反撃と猛烈なる逃走が開始される。追われつつも巨大なる敵を殲滅すべく決意したマックたちに活路はあるのか。次々に倒れゆく犯人の死を乗り越え、雄大な大雪山を舞台に最後の死闘を繰り広げる犯罪小説のバイブル・狼シリーズ第三弾、完結。
「わたし、本当に今幸せなのよ。これ以上、何もいらないの。早馬さんだけがいればいいの」-映画スター・北岡早馬との結婚で伊津子は幸せの絶頂にあった。しかし彼女を迎え入れた北岡家の人々は皆、早馬の先妻・貴緒のことが忘れられぬ様子であり、最愛の夫もその例外ではなかったのだ。謎の自殺を遂げたという貴緒の面影が色濃く残る邸で、やがて悲劇の幕が切って落とされる…。技巧の限りを尽くした本格ミステリー。