出版社 : 集英社
心が壊れて捨てられた女たちを預かり、「オーバーホール」することがわたしの仕事だ。そして今、一人の女を捜して、広大な庭園をさまよっている。「明日からここに住みます」というメモを残してその人は姿を消した。彼女を譲り受けた頃、わたしには他に三人の女がいた…。官能を仲立ちに、人間はどこまで深くお互いに関与できるのか。男と女の関係性を問いかける、救済という幻影の物語。
ノルマンディ海岸バルベック、そこにはじめて赴いたときの語り手の幻滅と発見。「ゲルマントの方」の人物、ヴィルパリジ侯爵夫人やサン=ルー、シャルリュス男爵などが登場してくる。また、画家エルスチールのアトリエを訪ねた語り手は、普通に人が考えている現実とはまるで違った独創的な芸術家の表現する真実に惹かれる。そして画家の紹介で、「花咲く乙女たち」と知合いになり、そのなかのアルベルチーヌに心が傾いてゆく(第二篇第二部・続)。
きらめきと悔恨にみちた青春の日々。 スワンとオデットの娘ジルベルトに憧れる少年の「私」。シャンゼリゼやブーローニュの森での初恋は失意に終わり、パリからバルベック海岸へ。「花咲く乙女たち」との出会いの予感ーー。
なんにもない田舎で暮らす小学生センリ。でも気になることは山ほどある。クラスメイトとの微妙な距離感、となり町での発見、垣間みるオトナの事情…。“明るい子ども”でいるため、言葉にできなかった7つの思い。人生で一番長い6年。小学生センリが初めて知る、不安、痛み、憧れ、恋。『檸檬のころ』で注目を集めた24歳の新鋭が、新しい発見に満ちた日々とほろ苦い成長の過程を、細やかに掬い上げる。
激突間近の米中両国から、軍事基地として狙われている南太平洋の小国USA。その外交顧問に雇われた天才詐欺師沖田次郎吉は、超大国相手に巨大な騙しを仕掛けていた。時同じくして、沖田の盟友・足立梵天丸は、アラブの富豪率いる国際詐欺師団への仕掛けの真っ最中。二つの作戦は一つとなり、空前絶後のコン・ゲームに発展していく。前作を上回るスケールで放つ、究極のエンターテインメント。
三十年住んだ武蔵野の地を離れ、妻とふたりで都心へと居を移した「私」。ゆっくりと確実に変化していく日常と、家族の形。近づいてくる老いと沈殿していく疲れを自覚しながら、相変わらず取材旅行に駆けまわる毎日だ。そんなとき、古い友人の悪い報せが「私」を大きく揺るがせる…。『岳物語』から二十余年。たくさんの出会いと別れとを、静かなまなざしですくいとる椎名的私小説の集大成。
長身痩躯で超美形の心理探偵“ハーレクイン”。彼のオフィスへ望みを叶えて欲しいとやってくる迷えるクライアントたちー。神崎理恵が、袴田浩平と結婚したいと訴えた時、成功報酬は「あなたの虚栄心です」と応えて、話を聞き始めるが…。クライアントの心を操って、胸にしこる葛藤を切り開き、深層心理から吹き出す血と膿を吸血鬼のように味わう探偵の鮮やかな手腕。連作心理サスペンス。
友近克也は父・善次郎が築いた馬牧場を出た。兄嫁となる女性に想いを残して…。行くあても帰る場所もない、ただ生きるための流浪の旅だった。町々にはびこる悪徒に、容赦なくとどめを刺す克也。暴力と策謀が渦巻く荒野の果てに、安住の地はあるのか?北海道開拓期。過酷な運命に立ち向かう家族、そして男女を描く連作短編集。
首相公選制がしかれた近未来の日本。投票を明日に控え、かつてサッカーのスタープレイヤーだった政治家・長田が圧倒的な支持率で最高権力者になろうとしている。人々はこの清新で危険なにおいのするカリスマに夢中だ。だが、果たしてこの選択は正しいのだろうか?わたしたちはどこへ向かっているのか?忍び寄るファシズムの空気を濃厚に描く、第25回野間文芸新人賞受賞の傑作小説集。
「私は、第七番恒星系から来た、ゲジィヒシバ国の王子、マルドリンガだ」フェレットがしゃべった…!いや、フェレットだけではない。ネコもイヌも、ヘビだってアロワナだってしゃべるのだ。おかしくて馬鹿馬鹿しくてほろりとする、人間といきものたちのおしゃべり短編集。
三十歳を過ぎたイラストレーターの私。仕事もちょっとうまくいかないが、「そろそろくる」ころ、むきかけのゆで玉子を流しに叩きつけたり、呼吸困難におちいりながら泣きじゃくったり、嗚咽しながら冷蔵庫を開けたり閉めたり…。ひょんなことから彼になった友人の弟と、この不快さの原因を調べながら折り合っていく。癇癪、イライラ、過食、最悪だわ…原因はPMS?そして恋のゆくえは。話題になった『漢方小説』の著者が描く体と恋。
平成元年2月、和倉温泉へ向かうお座敷グリーン車で若い女が不審死を遂げたが、自殺か他殺か、真相はわからぬままとなった。15年以上経って、事件の起きた車両を買い取って庭に保存している高柳という男が、奇妙な掲示板を出す。事件当日、この車両に乗っていた人に話をききたい、謝礼に10万円払うという主旨だった。やがて、高柳のもとへ話をしに来た若い男が殺され…。時効を迎えた事件が新たな連続殺人を呼んだ!?東京・金沢を結ぶ推理行に十津川警部が挑む。
高校三年の夏休み、隣家の少年が母親を撲殺して逃走。ホリニンナこと山中十四子は、携帯電話を通して、逃げる少年ミミズとつながる。そしてテラウチ、ユウザン、キラリン、同じ高校にかよう4人の少女たちが、ミミズの逃亡に関わることに。遊び半分ではじまった冒険が、取り返しのつかない結末を迎える。登場人物それぞれの視点から語られる圧倒的にリアルな現実。高校生の心の闇を抉る長編問題作。