出版社 : 集英社
澤田瞳子氏 絶賛 「ただ、心から愛しただけだった。乱世を生きた人々の哀しいほど澄んだ思いが、時代を越えて我々の胸を強く締め付ける」 時は戦国。茶々(淀殿)は幼い頃、住んでいた城を信長に落とされた。 父が自害に追いやられるも、生まれた時から共に育ってきた大野治長に守られ、逃げることができた。 治長は茶々を一生守ると誓い、茶々も彼にそばに居てもらいたいと願う。 その後、ふたりは柴田勝家の元に身を寄せたが、今度は秀吉に城を攻められ、茶々の母が自害する。 そして二度目の落城を経験した茶々は、秀吉に側室になれと言われてしまい……。 二度の落城。許されぬ裏切り。家康の脅威。 運命に翻弄されながらも、互いを思い合う茶々と大野治長の姿を描く、歴史恋愛小説。 【プロフィール】 佐藤 雫 (さとう・しずく) 1988年、香川県生まれ。2019年、「言の葉は、残りて」(「海の匂い」改題)で第32回小説すばる新人賞を受賞してデビュー。
大丈夫。昼間だって、見えないけれど星はそこにちゃんとあるから。 南の島で、山奥のホテルで、田舎町の高校で。 星を愛し星に導かれた人々が紡ぐ七つのミステリー。 「南の島へ行くぞ」突然のパパの言葉で石垣島へ旅することに。正直言って、あんまり気は進まない。家族旅行といえばママも一緒だったのだ、去年まではーー(「南の十字に会いに行く」) 小学四年生の九月のこと、同級生の過失で私の右目は取り返しのつかない怪我を負った。世界はぼやけて頼りない姿に変わり果ててしまった。星降る夜に大事な友達と交わした約束もーー(「星は、すばる」) 廃部寸前のオカルト研究会、天文部、文芸部。生徒会に必死で部の存続を訴えると、「じゃあ、スぺミス部ってことで」と、とんでもない提案がーー(「箱庭に降る星は」) 読み終えたら世界が変わる! 〈日常の謎〉の名手が贈る、驚きと爽快な余韻に満ちた全七話。 【著者プロフィール】 加納朋子(かのう・ともこ) 1966年福岡県生まれ。92年「ななつのこ」で第3回鮎川哲也賞を受賞し作家デビュー。95年「ガラスの麒麟」で第48回日本推理作家協会賞(短編および連作短編集部門)を受賞。2008年『レインレイン・ボウ』で第1回京都水無月大賞を受賞。温かくも鋭い洞察を備えた〈日常の謎〉の名手として、多くの読者の支持を集める。著書に『ささら さや』『七人の敵がいる』『我ら荒野の七重奏(セプテット)』『カーテンコール!』『いつかの岸辺に跳ねていく』などのほか、自らの闘病体験を綴った『無菌病棟より愛をこめて』がある。
天才と謳われる早逝の詩人、シルヴィア・プラス。 作者のショッキングな自死から半世紀以上を経た2019年、未発表短篇「メアリ・ヴェントゥーラと第九王国」が新たに発見され、大きな話題となった。 プラスの短篇について「詩にも長篇にもない独自の魅力が、どの短篇にも見つかるのではないかと思う」と評する柴田元幸氏が、強く惹かれた作品を選んで訳した短篇集。 赤いネオンの点滅する停車場で、両親に促されるままに行先の分からない列車に一人乗り込んだ少女の不思議な体験を描く「メアリ・ヴェントゥーラと第九王国」、大きなハリケーンが来た日の病院の騒動を活写する「ブロッサム・ストリートの娘たち」、人々が眠っているときに見る“夢"を集めることに没頭する女性を描く「ジョニー・パニックと夢聖書」など、大人向け短篇7篇と子供に向けて書かれた「これでいいのだスーツ」を収録。 【収録作品】メアリ・ヴェントゥーラと第九王国/ミスター・プレスコットが死んだ日/十五ドルのイーグル/ブロッサム・ストリートの娘たち/これでいいのだスーツ/五十九番目の熊/ジョニー・パニックと夢聖書/みなこの世にない人たち 【著者略歴】 シルヴィア・プラス Sylvia Plath (1932-63) アメリカの詩人、作家。ボストン生まれ。生前に刊行されたのは詩集『The Colossus(巨像)』(1960)と自伝的小説『ベル・ジャー』(1963 )のみ。死後1965年詩集『エアリアル』、1977年に短篇・エッセイ・日記の抜粋『ジョニー・パニックと夢聖書』、1981年『The Collected Poems(全詩集)』などが出版され、この『全詩集』でピュリッツアー賞を受賞。2019年、執筆から60年以上を経て『メアリ・ヴェントゥーラと第九王国』が刊行された。 【訳者略歴】 柴田元幸(しばた・もとゆき) 1954年東京都生まれ。翻訳家、東京大学名誉教授。著書に『生半可な學者』(講談社エッセイ賞受賞)、『アメリカン・ナルシス』(サントリー学芸賞受賞)など。現代アメリカ文学のみならず、古典も含めて多くの翻訳を発表。トマス・ピンチョン『メイスン&ディクスン』の翻訳で日本翻訳文化賞受賞。編集代表を務める文芸誌「MONKEY」および英語文芸誌MONKEY New Writing from Japanでは鮮烈な企画を展開、日米の読者を魅了している。2017年、早稲田大学坪内逍遥大賞受賞。
たがいの気持ちを確かめあった勝利とかれん。ふたりの物語のその後と、ふたりを取りまくキャラクターたちの物語を描く『おいしいコーヒーのいれ方』特別編登場! ふたりを見まもってきた丈と恋人・京子、かつて勝利に想いを寄せていた星野りつ子とようやく大学を卒業したネアンデルタール原田先輩、かれんへの想いがかなわなかった中沢、原田先輩の妹で勝利の教え子・若菜、オーストラリアの人気歌手・アレックス……それぞれがそれぞれの想いを胸に、新しい未来へと踏みだそうとする姿を描く、珠玉の「アナザーストーリー」! そして、思いがけない報せを受けた勝利とかれんは、オーストラリア・ウルルへ向かう。ウルルの空の下で、ふたりが見る未来とは?
ジョン・F・ケネディ空港から見えたNYは黄砂に覆われている。 私ーモハメド・アヴドゥルーの目的は、マンハッタン島にひそむという、一匹の野良犬を捕獲することだった。ある"恐ろしい男"より先に。 野良犬は、珈琲味のチューインガムが好物らしく、不思議な力で盗みを働く。犬種はボストンテリア。その犬の名は『イギー』……。間違いなくスタンド使いだ。 『ジョジョの奇妙な冒険』第三部の前日譚を乙一が小説化!! イギーとアヴドゥルの出会いが描かれる!! イギーの好物であるチューインガムを模した装丁にも注目!
魔法を使えないのに魔法学校に入学し、鍛え抜かれたパワーのみであらゆる試練を突破してきたマッシュ。 ひょんなことからトロールによって奪われてしまったシュークリームを取り返すため、 向かった先は「予告の森」と呼ばれる“嘘"に塗り固められた“柱"が点在する超危険な場所だった!! 選択肢で結末が変わるアブノーマル魔法ゲーム小説、ここに開幕!? <目次> 第0章 冒険のまえに 第1章 マッシュ・バーンデッドと予告の森 第2章 ランス・クラウンと重力魔法の災難 第3章 ドット・バレットと魔法薬学の課題 第4章 フィン・エイムズと夜の彷徨 第5章 レモン・アーヴィンと秘密の饗宴
武器はチェロ。 潜入先は音楽教室。 傷を抱えた美しき潜入調査員の孤独な闘いが今、始まる。 『金木犀とメテオラ』で注目の新鋭が、想像を超えた感動へ読者を誘う、心震える“スパイ×音楽小説"! 少年時代、チェロ教室の帰りにある事件に遭遇し、以来、深海の悪夢に苛まれながら生きてきた橘。 ある日、上司の塩坪から呼び出され、音楽教室への潜入調査を命じられる。 目的は著作権法の演奏権を侵害している証拠をつかむこと。 橘は身分を偽り、チェロ講師・浅葉のもとに通い始める。 師と仲間との出会いが、奏でる歓びが、橘の凍っていた心を溶かしだすが、法廷に立つ時間が迫り…… 【著者略歴】 安壇 美緒 (あだん・みお) 1986年北海道生まれ。早稲田大学第二文学部卒業。2017年、『天龍院亜希子の日記』で第30回小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。2020年、北海道の中高一貫の女子校を舞台にした青春長編『金木犀とメテオラ』を刊行、書店員からの熱い支持を受けロングセラーとなる。
孤独を愛する人気作家が突然の断筆宣言。担当編集者は作家の住む地方へひとり、向かった。作家を脅かすものを探しにーー(「夢伝い」)。地球に近づいてきた惑星、現れた女遍路ーー。四国に戻って来た私は、40年前の午後を思い出していた(「送り遍路」)。自らの胎内で卵を孵すセグロウミヘビ。海洋生物マニアの男は「彼女」を手に入れてから生活が一変し……(「卵胎生」)。未知のウイルス性感染症が蔓延した後、「新しい世界」の幕が開けた。男は都心から自然豊かな土地に移住を決め、恋人とはリモートで関係を深めていたが……(「果て無き世界の果て」)など、昭和から現代までを舞台に、日常に潜む怪異や心理の歪みから生まれる怪奇を描いた全11話を収録。 宇佐美まこと(うさみ・まこと) 1957年、愛媛県生まれ。2006年「るんびにの子供」で第一回『幽』怪談文学賞〈短編部門〉大賞を受賞。17年『愚者の毒』で第70回日本推理作家協会賞〈長編及び連作短編集部門〉を受賞。『ボニン浄土』で第23回大藪春彦賞候補に。『展望台のラプンツェル』で第33回山本周五郎賞候補に。他の著書に『熟れた月』『骨を弔う』『羊は安らかに草を食み』『子供は怖い夢を見る』『月の光の届く距離』など多数。
永禄11年、織田信長が足利義昭を奉じて上洛する。貿易による富で自治を貫く堺の納屋衆、中でも今井宗久、千宗易、津田宗及は天下の趨勢を見定めようとしていた。納屋衆内では、新興勢力である信長に賭けることに反対の声もあがったが、次第にその実力を認めていく。一方、今井、千、津田は信長から茶堂衆に任じられ、茶の席で武将たちの情勢を探り、鉄炮や硝石の手配を一手に握るようになっていた。天正8年、石山本願寺を降伏させることに成功した信長の天下は、目前に迫っていた。しかし、徳川家康の腹心で一向宗徒の本多弥八郎が怪しい動きを見せはじめ…。
大学院でサルトルを学ぶ中条珠絵は、亡き祖母と母と暮らした一軒家で一人暮らしを続けていた。生後すぐに母は離婚し、父とは二十数年会っていなかったが、ある日、伯父から再会を勧められる。迷った末に銀座のバーで出会うが、なりゆきから娘と名乗らないままに食事を重ね、恋愛にも似た感情を覚える。自身の結婚を機に、改めて父娘としての再会を果たすも、二人には共通の思い出がないことに気づく。郷里への旅や父の闘病を経て、ようやくたどり着いた父娘の在り方とはー。二十数年ぶりに出会う父娘の再生の物語。著者の自伝的フィクション。
田町家が取り壊され増谷家・会沢家として生まれ変わろうとするなか、ついに“かふぇ あさん”の夜営業が始まる。見慣れないお客さんとともに、不思議な事件も舞い込み…。そして、藍子とマードックのイギリス生活にも大きな転機が。さまざまな変化や初めての試みに、堀田家は「LOVE」を胸に挑んでいく。人気シリーズ待望の第17弾!
解決の糸口すらつかめない3つの殺人事件。 共通点はその殺害方法と、被害者はみな過去に人を死なせた者であることだった。 捜査を進めると、その被害者たちを憎む過去の事件における遺族らが、ホテル・コルテシア東京に宿泊することが判明。 警部となった新田浩介は、複雑な思いを抱えながら再び潜入捜査を開始するーー。 累計480万部突破シリーズ、総決算! 【著者略歴】 東野圭吾 ひがしの・けいご 1958年大阪府生まれ。大阪府立大学工学部卒業。85年『放課後』で第31回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。99年『秘密』で第52回日本推理作家協会賞、2006年『容疑者Xの献身』で第134回直木三十五賞と第6回本格ミステリ大賞、12年『ナミヤ雑貨店の奇蹟』で第7回中央公論文芸賞、13年『夢幻花』で第26回柴田錬三郎賞、14年『祈りの幕が下りる時』で第48回吉川英治文学賞を受賞。19年に第1回野間出版文化賞を受賞。『分身』『白夜行』『幻夜』『黒笑小説』『マスカレード・ホテル』『マスカレード・イブ』『マスカレード・ナイト』『白鳥とコウモリ』『透明な螺旋』など著書多数。
“詩"は人をつよくするーー。 トラウマを抱え言葉をうまく発することができない青年・悠平が、急きょ舞台で詩を披露することになり……。(「テレパスくそくらえ」) 最愛の妻を亡くした元気象庁技官・公伸は、喪失の日々のなかで一編の詩に出会う。(「幻の月」) 学習支援教室の指導員・聡美と、ブラジル出身の少女・ジュリアの心を繋いだのは、初めて日本語で挑戦した詩だった。(「あしたになったら」) ……ほか、人生の大切な一歩を踏み出す、その一瞬を鮮やかに描いた全6編。逆境のなかで紡がれた詩が明日を切り拓く、心震わす連作短編集。 【著者紹介】 岩井圭也 いわい・けいや 1987年、大阪府出身。北海道大学大学院農学院修了。2018年「永遠についての証明」で第9回野性時代フロンティア文学賞を受賞し、デビュー。著書に『夏の陰』『文身』『プリズン・ドクター』『水よ踊れ』『この夜が明ければ』『竜血の山』などがある。
「小泉八雲」となった男ラフカディオ・ハーンを愛した、3人の女たち。あなたを語ることは、あなたを蘇らせることー。母、最初の妻。二番目の妻。陰の存在だった彼女たちの「声」が、時を超えて響きわたる。
「遠くない未来に、私は死ぬ」。病とは無縁だった著者・花村萬月が、このままでは2年後の生存率が20%の骨髄性異形成(こつずいせい・いけいせい)症候群に罹り、骨髄移植を受けることになった。それは現在まで続く地獄の始まりだった。これは、現世の報いなのか? 発症から骨髄移植、GVHD(移植片対宿主病)、間質性肺炎、脊椎四ヵ所骨折など、副作用のオンパレードへと到る治療の経過を観察しつづけた作者自身によるドキュメンタリー・ノベル! 「血液検査の結果、完全に血液がO型からAB型に変わった。爪のかたちや体毛、髭など、ずいぶん外見上の変化がある。食べ物の好みもまったく変わってしまった。加えて精神が大きく変貌したのかもしれない。自分の血液をすべて殺して、他人の血液を迎えいれる。凄いことだ。」(本文より) 【著者略歴】 花村萬月(はなむら・まんげつ)1955年、東京都生まれ。89年『ゴッド・ブレイス物語』で第2回小説すばる新人賞を受賞し、デビュー。98年『皆月』で第19回吉川英治文学新人賞、「ゲルマニウムの夜」で第119回芥川賞、2017年『日蝕えつきる』で第30回柴田錬三郎賞を受賞。その他の著書に「百万遍」シリーズ、「私の庭」シリーズ、『弾正星』『信長私記』『太閤私記』『ニードルス』『花折』『帝国』『対になる人』『夜半獣』など著書多数。
金国の完顔遠理は影徳隊を組織し、モンゴル国への抵抗を続ける。礼忠館のトーリオは、商いのため南へと向かう。その先には岳都があった。そして、チンギスがホラズム国に送った使節団に異変が。
この身体こそ、文明の最後の利器。 29歳、女性、独身、地方出身、非正規労働者。 子宮・自由・尊厳を赤の他人に差し出し、東京で「代理母」となった彼女に、失うものなどあるはずがなかったーー。 北海道での介護職を辞し、憧れの東京で病院事務の仕事に就くも、非正規雇用ゆえに困窮を極める29歳女性・リキ。「いい副収入になる」と同僚のテルに卵子提供を勧められ、ためらいながらもアメリカの生殖医療専門クリニック「プランテ」の日本支部に赴くと、国内では認められていない〈代理母出産〉を持ち掛けられ……。 『OUT』から25年、女性たちの困窮と憤怒を捉えつづける作家による、予言的ディストピア。 【著者略歴】 桐野夏生(きりの・なつお) 1951年金沢市生まれ。93年「顔に降りかかる雨」で江戸川乱歩賞受賞。98年『OUT』で日本推理作家協会賞、99年『柔らかな頬』で直木賞、2003年『グロテスク』で泉鏡花文学賞、04年『残虐記』で柴田錬三郎賞、05年『魂萌え!』で婦人公論文芸賞、08年『東京島』で谷崎潤一郎賞、09年『女神記』で紫式部文学賞、『ナニカアル』で10年、11年に島清恋愛文学賞と読売文学賞の二賞を受賞。2015年には紫綬褒章を受章、21年には早稲田大学坪内逍遥大賞を受賞。『バラカ』『日没』『インドラネット』『砂に埋もれる犬』など著書多数。
海洋研究所に勤めるイーサンと飼育員ノアのもとに、国際バイオ企業からある依頼が舞い込んだ。世界環境を救うかもしれない貴重なキャニスターを、シャチを訓練して海底から回収して欲しいという。セブンと名付けられた仔シャチは、愛情深く、他の動物とコミュニケーションできる能力があった。ここに来るまでにセブンは、遙か遠いロシアの海で従姉のエルと共に捕獲され、離れ離れにされていた。ある日、外海での訓練中、セブンは近づいてきたクジラからエルが苦境にあることを知らされ…。第34回小説すばる新人賞受賞作。
傷ついた古家具には、無数の命が仕舞われている。 緑生い茂る山の中、ぽつんと佇む「森野古家具店」。 そこには、過去の沁みこんだ被災家具たちが、各々の物語をたずさえ集まってくるのだったーー。 職人見習いの「鴻池さん」が、家具に秘められた当時の記憶に触れる、感性ゆたかな連作短編集。 一.「花盛りの椅子」--東日本大震災 二.「巣籠り箪笥」--伊勢湾台風 三.「万祝い襖」--関東大震災 四.「焼土鏡」--阪神淡路大震災 五.「私たちの寝床」--再び、東日本大震災 【著者略歴】 清水裕貴(しみず・ゆき) 1984年千葉県生まれ。2007年武蔵野美術大学映像学科卒業。2016年三木淳賞受賞。2018年「手さぐりの呼吸」で「女による女のためのR-18文学賞」大賞を受賞し、翌年に受賞作を改題した連作短編集『ここは夜の水のほとり』(新潮社)を刊行。写真家、グラフィックデザイナーとしての表現も精力的におこなっている。
【第45回すばる文学賞受賞作】 選考委員絶賛! 小説の魅力は「かたり」にあると、あらためて感得させられる傑作だ。--奥泉光氏 この物語が世に出る瞬間に立ち会えたことに、心から感謝している。--金原ひとみ氏 ただ素晴らしいものを読ませてもらったとだけ言いたい傑作である。--川上未映子氏 (選評より) 認知症を患うカケイは、「みっちゃん」たちから介護を受けて暮らしてきた。ある時、病院の帰りに「今までの人生をふり返って、しあわせでしたか?」と、みっちゃんの一人から尋ねられ、カケイは来し方を語り始める。 父から殴られ続け、カケイを産んですぐに死んだ母。お女郎だった継母からは毎日毎日薪で殴られた。兄の勧めで所帯を持つも、息子の健一郎が生まれてすぐに亭主は蒸発。カケイと健一郎、亭主の連れ子だったみのるは置き去りに。やがて、生活のために必死にミシンを踏み続けるカケイの腹が、だんだん膨らみだす。 そして、ある夜明け。カケイは便所で女の赤ん坊を産み落とす。その子、みっちゃんと過ごす日々は、しあわせそのものだった。それなのにーー。 暴力と愛情、幸福と絶望、諦念と悔悟……絡まりあう記憶の中から語られる、凄絶な「女の一生」。 【著者略歴】 永井みみ ながい・みみ 1965年神奈川生まれ。ケアマネージャーとして働きながら執筆した本作で第45回すばる文学賞を受賞。