出版社 : 青土社
地獄はどこにある?仕立屋ジューヌと愛する妻コルブリューヌ。冥界の領主との約束は果たして守れるのか-。忘れることの恐怖を主題に、人間存在の深淵を抉りだした、現代フランス文学の鬼才による美しい愛の物語。忘却と記憶、顔と言語、無意識と欲望を根源的に考察する哲学的エッセイ「メドゥーサについての小論」を併載。
1935年11月。フェルナンド・ペソアは聖ルイス・ドス・フランセゼス病院で死の床に就いていた。苦悶の三日間、ポルトガルの偉大な詩人は、訪れたかれの異名たちと話を交わし、最後の遺志をつたえ、生涯の伴侶であった亡霊たちと対話を交わす。それはまるで妄想のなかの出来事。小説とも(架空のものだとはいえ)伝記ともみえる短篇の中で、アントニオ・タブッキは20世紀最大の作家のひとりの死を、やさしく情熱的に描いている。
古代の神々はすでに死に絶え、キリストはまだ現われず、ただ人間だけが存在した、紀元前1世紀の古代ローマ。現代の都市にも似た、猥雑で喧騒の渦巻くローマの街を舞台に、美しく残酷な物語を書き続けた男がいた-その名はアルブキウス。風変わりな作家の生涯を縦糸に、荒々しい人間の葛藤劇を復元し、目も眩むエロティシズムの魅力溢れる小説となした、現代フランス文学の最前線にして超古典的な傑作。
ポルトガル沖合はるか遠方の、アソーレス諸島に繰り拡げられる、クジラと難破船と愛の物語-。幻想味が絶妙の鬼才が、その実験的小説作法を極限にまで押しすすめ、織り上げた、詩的で象徴性豊かな小品集。
蝋燭の炎の揺らめく降霊会で出会った無邪気な妖精たち。孤独な私の魂に救いはあるのか-。卓越した映像作家フェッリーニの放恣な夢と歓喜の幻影があふれる哀しくも賑やかな『私』探しの物語。
オウィディウスからフロイトまで、「芸術家」たちの《失われた夢》が、肉体をそなえ、息づき始めた。この夢は、誰がみた夢なのか-。現代イタリア文学の鬼才タブッキが、夢を愛するすべての人に贈る、小さな夢の標本箱。