出版社 : 青土社
火山の麓で、氷河の上で、崇高な大地の前でーー アイスランドに生きる作者が自分自身や家族、これまで関わってきた人たちの視点、そして古くから伝わる伝承や北欧神話から、人と自然の「これまで」と「今」と「これから」を書き留める。すべての人に送る、物語のような随想録。 アイスランド本屋大賞、Tiziano Terzani賞(イタリアの国際文学賞)を受賞し、30か国以上で翻訳された話題作
新しい世界を夢見る力。爆撃されるイラクの街に生い茂った棗椰子が、世界を変える夢を呼びさますー第三世界の女性たちの声に耳を澄ましフェミニズムを大きく動かした著者が、文学や映画をはじめとして、出来事の深みに降りてゆく想像力をもつさまざまな試みのなかに、新たな世界の扉をさぐりあてる。
ーー「世界」が生まれてくるのが、ここに、あるみたい。 わたしのめいのサイェは、今日もあらゆるものに耳を澄ませて、ちょっとずつ大人になっていく。おもいだすこと、はじめてしること。誰もが一度は感じたことのある心のふるえや温もりを、春夏秋冬の「音」に寄せて描き出す、静かな物語の集積。
「家族」とはなにか?その系図に刻まれた欲望と不条理。飛び散る血しぶき、耳をつんざく悲鳴、謎かけを込めて“展示”される死体ー。犬神家を襲った怪奇な連続殺人事件の背景には、何があったのか?物語を読み解くカギは「戸籍」にあり。血で血を洗った一族の系譜を丁寧にたどりながら、社会に根強く残る「血」や「家」の秩序と価値観を炙り出し、近代日本の陰に光をあてる。
幕末から維新直後まで、動乱期に生きた人々の宿命と風俗 弘前藩の医官で儒者の渋江抽斎と、妻で稀代の才媛五百など渋江家の人々を始め、幕末から維新直後の動乱に翻弄される宿命にあった多彩、多様な人間像と、動乱期の時代風俗の興趣により魅了する森鷗外の史伝の代表作を読む。
犬とのさり気ない日常を超えた無音の和音が聞こえてくる。--谷川俊太郎 「生きてるときに生きてて、何か感じたり、ほかの生きものに感じられたりして、どれがどう入れかわっても、おなじだ、って」。変わりゆくもの、簡単には変わらないもの。ぼくと妹の紗枝、そして犬の「マル」たちをめぐる、家族と記憶の物語。
著者自らが深く愛した、珠玉の未邦訳短篇集。とある海辺の町を舞台に、複数の語りを通して一人の女性の姿を描きだす「夢に遊ぶ者たち」、架空の未来史“ハイニッシュ・サイクル”の1ピースをなす「背き続けて」、勤勉な使用人に主人が与えた意外な試練の顛末を描く、生前最後に発表された短篇「水甕」-。SF・ファンタジーの枠組みを軽やかに超える、ル=グウィンの知られざる魅力に満ちた11篇。
ブコウスキーのすべてが濃密につまった奇跡の一冊 つねに社会を挑発し、不穏なまでに暴力的で、あらゆることを嘲り、当然ながらおそろしく不敬。しかし、それはいっぽうで恐怖や孤独あるいはコンプレックスを抱えながら生きていくひとつの術でもあった。あらゆる小さなものたちへの愛を忘れずに生きたアウトローが私たちに遺した反骨と慈愛にみちた悲しくも美しい珠玉の39編。
21世紀アリス学の金字塔。 夢とファンタジーに溢れた、全世界の永遠のベストセラー『不思議の国のアリス』は、多くの画家・イラストレーターの創造心を激しく掻き立て、現在に至っている。永遠の少女アリスを具象化したアーティストは枚挙に暇なし。テニエル、ラッカム、エルンストら多数。満を持しての建石修志画伯は、細密描写に定評があって熱烈なファンも多々。日本のアリス学研究の頂点に立つ、絵の極み・建石修志/文の極み・高山宏による夢のコラボレーション。カラー挿絵80点!!
天皇制のある国の日常とは ネットお見合いで知り合った女性の深い秘密から、この国の機構のいびつさに接してゆく、『文學界』発表時から話題を呼んだ表題作。消えてゆく煙草とコンビニをペーソスとともに描いた「さようならコムソモリスカヤ・プラウダ」、実家と膨大な蔵書を処分する一幕「実家が怖い」、赤裸々に「艶舗」に通う日々を描く「五条楽園まで」、『ハムレット』の大胆なパロディ「ホレイショーの告白」の全五篇を収録。
酒、競馬、セックス、そして詩…。これが本当のハードボイルド。正気と狂気のあわいで、孤独と怒りを抱えて、暴力と放浪の日々をすごした男が、唯一無二のことばで、ときにパンクにときにやさしく描きだす、社会の片隅で生きる者たちの物語。
明治から昭和敗戦後に生きた歌舞伎役者・七代目松本幸四郎。團十郎不在の時代に、劇壇・文壇と交流し、「藝」を守った名優である。その裏の顔は、妻に次々と先立たれながらも三人の子を名高い歌舞伎役者に育てあげたひとりの男だった。その知られざる生涯をたどる本邦初の伝記小説。
主人公フォルティーンは、若い頃から芸術家気取りの思い上がりで、ありもしない作曲をネタに若い女を口説いたり。名声を求め、ヒマと怠惰の生活から生じた妄想の超大作オペラの実現に、全身全霊を傾ける。剽窃・模倣はもちろん、ありとあらゆる手段を駆使して出来上がるものとは…。人間の魂の真実を究める、チャペック絶筆にして傑作。
夜霧の世紀末ロンドンに名探偵ホームズが目撃したものはー猟奇殺人、植民地戦争、女権拡張と労働争議、美女の噂とボクシング、あるいは優生学、進化論、そして神秘思想など、多種多様な思惑がうごめく大英帝国の素顔だった。時代の波に翻弄されるホームズの航跡を辿り、今日の消費社会を先取りした大英帝国の虚実をリアルに抉る画期的世紀末文化論。芸術選奨新人賞受賞、日本シャーロック・ホームズ大賞受賞。
すべては1世紀半前、当代の名優が観劇中のリンカーンに向け放った銃弾から始まった。演劇的想像力が世を覆い、大統領暗殺は、アメリカのみならず、世界全体へのテロリズムとなるだろう。ブッシュ、オバマ政権以降、ますます鮮明になるアメリカの終わらない「物語」の構図を、克明に解き明かす。