出版社 : PHP研究所
日本民俗学の先駆者として知られ、各地の風俗・民俗などを日記体で詳細に書き残した菅江真澄。彼は何を求めて信濃、出羽、陸奥、そして蝦夷地へと旅したのかー。天明の大飢饉、田沼意次の蝦夷地開発、松平定信による田沼追い落としと松前藩問題など、激動の江戸中期の史実を踏まえながら、立身出世を願うも叶わず、生涯を旅に生きざるを得なかった男の秘密にせまる傑作歴史小説。
「あれは内応しておるのではないか」-裏切りと内通の噂が飛び交い、大坂方から徳川方か、どちらが勝つか最後までわからなかった関ヶ原合戦。天下分け目のこの戦いは、人生の分かれ目。栄達か、しからずんば死か…。でも実際は、誰もがとまどい、迷っていた。舞台裏で勝敗の帰趨を左右した武将から、脇役を演じた小身の武士まで、野心と謀略が渦巻く関ヶ原合戦に振り回された男達を描く傑作小説。
地下鉄の新線開業を間近に控えたある日、保線作業員の的場哲也は、勤務中にトンネルの中で怪しげな人影を見つける。またインターネット上でも、東京の地下に「地底人」が出現するという噂が飛び交っていた。そんな中、的場は母から、弟の洋次が鬼童征夫なる経済学者が主宰する怪しげな勉強会に通っていると相談を受ける。事情を探るために鬼童の講演会に出かけた的場は、そこで意外な人物を見かけるのだが。「東京の地下を支配した」と宣言する、テロリストたちの意外な目的とは何か?複雑怪奇な地下迷宮(ダンジョン)と化した東京の地下を舞台に、クライシス小説の旗手が描く、緊迫のサスペンス。
バーチャル・リアリティが日常の娯楽として定着しつつある中、究極のアミューズメントとして期待のかかるVD(バーチャル・デス)。その開発に世界で最初に成功した日本の会社が原因不明の爆発を起こし、VDの関係者ほぼ全員が死亡した。事故か、破壊工作か?事故調査委員会から協力を要請されたUAI(未確認事象捜査官)藤森捷子が見たのは、常識では考えられない異様な爆発現場だった。調査を進めるうち、VD開発の裏で隠され続けてきた暗部が次々に明らかになっていく。もはやアミューズメントの域を超え、人類の「在りかた」そのものを変えようとしているVDの真の機能とは何なのか。
吉祥寺に出店する大手書店チェーンに転職を果たした理子と亜紀。しかし、大型書店の店長という、いままでと違う職責に理子は戸惑っていた。一方、文芸書担当として活躍する亜紀にも問題が。妊娠をきっかけに起こった夫との確執、書籍の回収騒動ー。そんな忙しい日々の中、本と本屋の力を信じる二人が考え出した新たな挑戦とは?書店を舞台とした痛快お仕事エンタテインメント第二弾。
浜町堀沿いで三人組に襲われている松尾を助けたことから、円十郎は三千石の旗本・松尾家の家督相続にからんだ、正体不明の刺客の始末を依頼される。そんな折、牢人者が三人組に斬り殺される事件が起こる。その三人組を、松尾を狙った刺客と睨んだ円十郎だったのだが…。一刀流の手練が揃った刺客一味を、円十郎の直心影流は倒すことができるのか。待望のシリーズ第四弾。
浅草界隈で頻発する辻斬り。下手人が侍だとわかったため、町方は手を出せないのだが、新米の岡っ引である美代次の気持ちは収まらない。「侍がどうしたってんだ」-美代次は独断で夜回りを始めるも、また犠牲者が…。やがて、下手人が浮かび上がり、その旗本屋敷に一人乗り込んだ美代次だったが、そこには思いがけない事情が隠されていた。「二本十手捕物控」シリーズ第二弾。
大分・平家山に若い女性の死体があがった。手には赤い南天の実が握られていた。他殺か、事故かー東京から九州の無名な山に来た理由とは?特命捜査を任された東山刑事は、自分の出身地の大分と、死んだ女性の出身地である能登がともに平家伝説の地であると知り、独自の推理を進めていく。だが、東京・大分・能登をめぐるスクランブル捜査の果て、東山刑事を待っていたのは…。
わたし、ハル先輩みたいな部長になれるのかなー?また新たな春が来て、音浜高校合唱部の面々はひとつずつ進級し、未来(ミク)は新部長となった。春の新入部員集め、夏の合宿、秋のコンクール、そして将来の夢について。部活、進路、恋愛、様々な悩みを抱えながら、みんな成長していくー。学園生活の四季を巡る、甘酸っぱい青春グラフィティ第二弾。
大手電機メーカーを「ある事情」で退職したエンジニア・野口陽子は、存続が危ぶまれる東北の大学に非常勤講師として招かれた。彼女に課せられた使命は、「ソーラーカー」を作り、レースに出て大学の知名度を上げること。そして陽子のもとに集まった落ちこぼれの六人の学生たち。一見、能天気に見える彼らも心の奥には様々な悩みを抱えている。鈴鹿で行なわれる全日本ソーラーカーレース優勝を目指して、熱く激しい挑戦が始まった。
昭和30年代の新宿、珈琲店の二階に住む美しき青年・水上櫂が開いたその探偵社は、「雨の日だけ営業する」そう噂されていたー。櫂のもとに、大家で幼馴染の和田慎吾が「最近、自分の店子の会社で、郵便物の間違いが多くて、応対する受付の女性が困っている」と訪れる。慎吾が櫂に相談した三日後、その女性は失踪して…(表題作)。友人の死を悼む女性の真意を見抜く「沈澄池のほとり」、破格の条件が用意された学生カメラマン採用試験の謎に迫る「好条件の求人」など四作品を収録した連作短篇集。
「私の記憶の中にあるホテルを探してくださらない」ある老婦人から依頼された私は、かつて横浜の高台にあり、多くの外国人客を迎えた小さなホテルについて調べはじめる。海が見えるオープン・テラス、年末にバンケットルームで開催される豪華絢爛なダンス・パーティ、評判のシェフが作り出す珍しい料理の数々、世間の目をはばかる客も多かった長期滞在者用のアパートメント。不思議なことに、もと従業員や宿泊客たちが語るホテルにまつわる思い出話には、死と影と奇妙な謎がからみついていたー憂いと頽廃の気配漂う、美しくも恐ろしい連作短編集。
思い出は心を豊かにもすれば、苦しめもするー小さなガラス瓶、古いお守り袋、折り鶴…、そうした小さな手がかりから、依頼人の思い出に寄り添うようにして、人や物を捜し出していく“思い出探偵”。京都御所を臨む地で「思い出探偵社」を始めた元刑事の実相浩二郎は、他のメンバーと共に思い出と格闘し、依頼人の人生の謎を解き明かす。乱歩賞作家が紡ぎ出す、せつなさと懐かしさが溢れるミステリー。
父・清隆を銃殺した杉山と帰宅後鉢合わせした塔子は、重傷を負わされてしまう。半年間の昏睡状態に陥ったのち、一命を取りとめ、奇跡的に目覚めた。犯人・杉山への判決に得心できない塔子に、事件担当刑事の犬伏は、「捜査に強い圧力がかかった」ことを告げる。さらに犬伏は、警察も捜査できない事件を扱う文目屋なる殺しの集団の存在を塔子に明かすのだった…。
恋愛や結婚、進路やキャリア、挫折や別れ、病気や大切な人の喪失…。さまざまな年代の女性たちが、それぞれに迷いや悩みを抱えながらも、誰かと出会うことで、何かを見つけることで、今までは「すべて」だと思っていた世界から、自分の殻を破り、人生の再スタートを切る。寄り道したり、つまずいたりしながらも、独立していく女性たちの姿を鮮やかに描いた、24の心温まる短篇集。