1987年7月16日発売
短篇小説の面白さは人生のある局面を鋭く鮮やかに切りとって見せる、その技の冴えにあるといってよい。そういう実作にこと欠かぬ現代イギリスの傑作短篇から23篇を選りぬいておとどけする。上巻に収めたのはフォースター、ウルフ、ジョイス、ロレンスなど12人の代表作。どの1篇にも短篇の妙味をたっぷり味わうことができる。(全2冊)
「おまえ俺の嫁にならんか」が仙作の口癖だった。北海道の過疎村に生まれ育った仙作は何事にも真直ぐな生き方を好んだ。たった一度の契りを交わした栗子を求め東京のウズの中にまき込まれた。栗子がくれた1枚のハガキをたよりに…。歯切れよい文体の中に濃厚なエロティシズムが勾う長篇力作。泉鏡花文学賞・北海道新聞文学賞受賞作。
「これまでにいくつか恋をして、いくつか恋を失って、そのたびに3日で立ち直ってきたじゃないか。しっかりしろ!」ジョン・レノンが死んだ日にふられた男の消すに消せない恋の記憶…。以来、すっかり落込んだ日常と輝やかしい甘美な過去を交錯させて、男に再び訪れた新しい恋の季節を、ホロ苦いユーモアで描く青春小説。
学生の透、コンピュータ・システム・エンジニアの明、駈け出し少女漫画家のあすか、長田オートの老ライダー、純正右翼少年の仁等々が、著者の豊かな感性で都市を駈け回る。十代で作家デビューした川西蘭の感受性と想像力のすべてを傾注した都市小説。
奥州街道沿いで、柳生の嫡流、権右衛門の死骸が打ち捨てられていた。胸をひと突きにした傷口は異様に丸く、左手の小指は砕かれていた。何者の仕業なのか?柳生十兵衛は、父、宗矩の命令で狭間新三郎を連れて、みちのくへ旅立つ。白石城下へ向かう途中、柳生の諜者、道哲の出迎えを受け、風流な家に案内される。だが、それは罠だった!火薬が床下に仕掛けられており、家はふっとんだ。道哲を装った男は、十兵衛もろとも死のうとしたのだ。それは真田者のやり口だった。伊達藩に真田の残党が入り込んでいる!彼らが死を覚悟で守らねばならない秘密とは、何なのか?伊達政宗の青葉城、西ノ館で驚くべき秘事が繰り広げられる長編時代小説!