1988年9月1日発売
カルタゴの人身御供の儀式、クレオパトラの鼻、キリストの処刑、ニュートンのリンゴ…。紀元前3000年までの過去のいかなる時代も場所も、クロノスコープを使えば思いのままに見ることができる。その使用許可がもらえなかった歴史学者は、危険な賭に挑んだが!あらゆる学問が政府の統制下におかれた未来を描く代表作「死せる過去」、脳に刺激を与えて夢を見させ、視聴覚もちろん、味覚や触覚までも疑似体験させられる録夢装置をめぐる大騒動「夢を売ります」など、過去、現在、未来のさまざまな地球を舞台に、斬新なアイディアと巧みな語り口で読者を魅了する17篇を収録。
『インテグラル・ツリー』の冒険から14年の歳月が流れた。大戦乱を生きのびたクィン一族は、スモーク・リングの自由落下状態の大気中を浮遊する“市民の樹”で平和な生活を送っている。その彼らのもとに、意外な訪問者が現われた。-無人と思われていたラグランジュ・ポイントの〈クランプ〉の住民が、遭難して助けを求めてきたのだ。それを契機に“市民の樹”の代表が進んだ技術を吸収すべく〈クランプ〉への遠征を企てるが、その前途にはあまたの自然の脅威と恐るべき敵が立ちはだかっていた。現代ハードSFの巨匠が壮大な舞台設定でスリリングに描くファン待望の続篇。
そもそものきっかけは、ソニアがグライムズへのおみやげとして買ってきたパイプだった。地球のベイカー・ストリートの骨董屋で見つけた、シャーロック・ホームズが使っていた正真正銘のパイプだというのである。グライムズはもちろん一笑に付した。だが、クラヴィンスキー提督から〈キルソルヴィングの惑星〉の再調査を命じられたグライムズが、お気にいりの〈ファラウェイ・クエスト〉を駆ってキルソルヴィングに着陸したとき、そこで待ち受けていたのは…?辺境星区に多発する異常現象の解明のため東奔西走するグライムズ准将の活躍を描くシリーズ最新刊。
渓流釣りを楽しんでいる私の前を、若い女の射殺死体が流れていった。それを引き上げようとして溺れかけ、私は死体にまたがり、やっとの思いで激流を下りきった。こうして命を助けてもらったからには、恩返しをしなければならない。私は、彼女を殺した犯人を捜しだす決心をした。やがて、彼女は高名なシェイクスピア学者の娘と判明した。どうやら裏には、最近発見されたシェイクスピアの未発表戯曲がからんでいるらしい…現代のサム・スペードをめざす心優しき探偵ジョン・デンスンがアウトドアに展開する華麗なアクション!シリーズ第二弾。
勤め先をくびになったテロリズム専門家ブース・ストーリングズのもとに、まるで待っていたかのように大仕事がとびこんできた。フィリピンの新人民軍(NPA)の指導者アレハンドロ・エスピリトを500万ドルで買収して香港へ亡命させろというのだ。依頼者はフィリピンに投資している謎の資本家グループ。エスピリトさえいなくなればNPAは骨抜きになり、アキノ政権は安定して、自分たちの利益も上がるというわけだった。何やら裏のありそうな仕事を手伝うために、海千山千のプロフェッショナルたちが極東に集結してきた。500万ドルの取引きをめぐって、虚々実々のゲームが開始された。スピーディでしたたかで、粋、ロス・トーマスの『女刑事の死』に続く待望の新作。
ローラが初めて声を聞くその男は言った。「ぼくは癌でもうじき死ぬんだけど、あなたが毎朝ほほ笑みかけてくれるのを見てとても楽しかった」娘を保育園に送っていく途中、いつも近所のアパート・ビルの日よけの下に坐っている男、デーヴィッドの突然の言葉。みちたりた結婚生活を送り、女性誌の投稿原稿のリーディングの仕事をしているローラの平穏な日常は、この日を境に大きく変わった。結婚問題カウンセラーをしているデーヴィッドにも妻と息子がいたが、死を目前にして、彼は毎朝会う生気にみちたローラに深い恋心を抱いていた。同情に始まったローラの気持ちも、やがてどうしようもなく愛へと傾いていく。そしてその結びつきは、それぞれの家族との間にさまざまな波紋を呼ぶ-。ニューヨークの秋から夏までを舞台に、生と死のはざまを漂う愛の行方を描く、哀しく、温かく、エレガントな長篇。
800万の夢と哀しみ、愛と憎悪、そしてささやかな希望のミックス・カクテル。Sex&Drug&Violenceが交錯し、あらゆるものが揃う街、ニューヨーク。殺意がスウィングし、野望と絶望がブルースを奏でる。チンピラや娼婦、殺し屋、男娼、ポン引きたち-。大いなる夢とせつない優しさ…心にしみる9つの人生。
「ヤヒコニ イッテ ウラ…」女は死の間際に謎の言葉を遺した。出雲崎で起きた殺人事件の被害者を、美緒は取材旅行中に三度目撃していた。弥彦山頂から日本海を見つめる孤独な姿が、妙に印象に残っていたし、事件前夜、彼らは同じホテルに宿泊していた。被害者は水原千秋という銀行員。業務上横領の疑いがかかり失踪中であった。そして事件の数日後、弥彦神社裏の杉林から、被害者のイニシャルが刻まれた指輪が発見された。女の最後の言葉とどう関わっているのか?混迷する捜査に、美緒と荘の推理が冴える。
リゾート気分でタンブーラにきたノイズ。密かに思いを寄せるネコは、夜な夜な男を買い漁る日々。ヤケになってネコの封印された過去を検索するが謎は深まるばかり。そこへ現れたベスト・ヒップのお嬢さんジーナをネコへの恋のさやあてにできて有頂点に…。だが、ノーマーシイなネコはジーナさえ、強敵ドゥーガーを誘き出す手段に使う。ジーナは二重の囮-と気づいたときネコはすでにドゥーガーの手中におち、意のままに動く操り人形にされてしまった。絶体絶命のネコが最後に放った死の投げキッスとは?驚愕のラスト。殺戮のラブゲーム。
いつ、どこからともなくTOKYO副都心の超高層ビル群の一角に根を張った正体不明の漂着神と呼ばれるもの。“彼”が放つ奇天烈な電脳の機械たちが電飾の街や団地を襲い破壊をはじめた。真昼野正彦の仕事は、“彼ら”を解体することだ。それが、“彼ら”の死なのだ。機械的に冷静に処理さえすればよい。そんなある日、朝里という少女と出会った。彼女は機械たちを収集していた。それが、真昼野が漂着神の坐す禁区に敢然と戦いを挑む運命のはじまりになろうとは!覚めた文書と野太いユーモアそして壮大な寓意をこめて期待の新星が放つ大型エンターテインメント。
戦闘員・タイプV-遺伝子工学の粋を集めて創り出された戦闘用バイオニック・サイボーグ。ヴォルテはその記念すべき第一号・プロトタイプとして生まれた。動物の持つ鋭敏な感覚と人間の知能、そして超人的な肉体に秘められた驚異の戦闘能力。地上戦闘に革命を起こすこの新兵器の、クローニングによる量産化は目前だった。実用実験の最終段階、雪山で実戦テスト中、ヴォルテは崖から滑落する。生死の境をさまよう彼の意識の中に突然、若い女の声が響いた。「戦って自由になるのよ!逃げなくては」この時からヴォルテの、長く熾烈な戦いが始まった…。
売り出し中の新人歌手・結城ちひろが誘拐された。大手カメラメーカー、ゼネラル・フィルムの新製品『パチリコ』の宣伝に起用し、CMソングとなる新曲とともに大々的な宣伝作戦を繰り広げようとした矢先だった。事件は商品のイメージダウンになると、だれもがちひろの起用に反対したが、ディレクターの長谷川宇一は、逆に事件を宣伝に利用しようと考えるー。乱歩賞受賞の新鋭コンビが放つ長篇ミステリー。
テレビ局ディレクターを辞職した生沢功治を、元GHQ将校ナヒマンと名乗る男が尋ねてきた。戦後失踪した父の昭吾に逢いにきたという。翌日、ナヒマンは「ザンメルは生きている」という謎の言葉を残して殺害された。ザンメルとは何か?父の失踪に匿された真相は?別れた妻子までが誘拐され、生沢は国際的な謀略の渦中に巻きこまれていった。長篇ハードボイルド・サスペンス。
駿州清水港で人足請負い業を営む山本長五郎こと清水の次郎長を親とたのむ石松は、親分のはからいで久しぶりに生国の三河の森へ墓参りに帰った。そこで石松は幼馴染みの兄貴分百姓惣吉が剣道指南で乱暴浪人の鬼藤桂之進に無礼討ちされた場面に出くわす。怒り心頭の石松は惣吉の弟常吉の肩入れをし敵討ちに乗り出す。傑作時代小説「殴られた石松」ほか「人斬り伊太郎」「飛び吉道中」「引返し百太郎」を収録。