1988年発売
回天維新の情熱を胸に、僚友坂本龍馬と共に薩長同盟の約に腐心しその難事を成し、陸援隊を組織し、土佐一国の慎太郎にあらずの気概を持して、激動の幕末期を疾風のごとく駆け抜けた俊英・中岡慎太郎の炎の生涯を、志を同じくする若き群像との交遊の中に、鮮やかに描き切る書下ろし歴史小説。
“非核三原則”は実効されているのだろうか?日米間に核をめぐる密約が存在するとすれば…。日米安保体制の根幹を揺さぶる。わが国の防衛を考える衝撃の問題作。
亡き戦友への鎮魂の情と典型的夫婦像を描く。苛烈な戦争体験により青春を喪失した男の、漠然としたいらだち。一見専制君主的な夫婦関係を描きながら、男の哀しみ、ニヒリズムを鋭くつきつける長編傑作小説。 海軍予備学生に志願し従軍した牧野の青春は敗戦とともに打ち砕かれた。心は萎えていた──身内に暗い苛立ちを棲みつかせ、世間に背を向け頑なに生きる男。短気で身勝手で、壮烈な暴力をふるう夫に戸惑い反撥しながらも、つき従う妻。典型的な夫婦像を描く作品の底に、亡き戦友への鎮魂の情を潜め、根源的な哀しみを鋭く突きつける傑作。
緊張した透明度の高い硬質な文体。鋭角的に切り抉られた精神の軌跡。人間の底深い生の根源を鋭く問い続ける藤枝静男の名篇「欣求浄土」「一家団欒」を含む『欣求浄土』、藤枝文学の極北と称賛された感動の名作、野間文芸賞受賞の『悲しいだけ』を併録。 ●欣求浄土 ●悲しいだけ
夜空をサーチライトが切り裂き、花火が〈ヨシワラ〉の文字を刻みつける。林立する高層建築の屋上では飛行機が発着を繰り返し、地下都市から現われた労働者の群れが〈バベルの塔〉に吸い込まれてゆく。ここは巨大な機械都市メトロポリス。だが、一人の天才科学者が一体のロボットを完成させたとき、都市の崩壊は始まった…。不朽の名画の原作。