1988年発売
円光寺宗夫は画家である。世紀末的怪奇画で流行児になっていた。その円光寺の家に、週刊誌記者の門倉隆造が刃渡り30センチほどの短剣を持参した。剣には“魄”の字が彫られ、柄には竜頭が施されていた。この「魄の剣」は、円光寺の親友で有名なファッションデザイナー、草鹿譲二の家の古井戸から発見されたという。草鹿はガンで死期が近い。女祈祷師が、対になった「魂の剣」を持ってきた女と草鹿が結婚すれば平癒すると告げた。疑惑を抱いた円光寺は女祈祷師の出自を調べに四国へ飛ぶが、そこには南北朝の血の時代があった。
推理作家志望の根岸登志彦は、7月15日午前3時アパートの一室で、50メートル先のメゾン・ガーネット401号室に住むアイドルスター、佐伯真弓が自室から墜落するのを目撃した。そして1カ月後、2カ月後の同日同時刻、同室から男性の第2、第3の墜落を目撃。悪霊の祟りか殺人か?彼は謎を究明すべく401号に移り住んで3カ月目の同日午前3時になって…。一方、スーパー浦上屋の売上金6千万円の強奪にまんまと成功したハチ、タカ、ヒョウの3人組を追及する警察と、根岸の推理が真相に迫るに及んで…。
100万分の1(パーミリオン)のネコ。畏敬と嫌悪のいり混じった通り名が、彼女の勲章だ。生と死の寄りそう空間で、最後に死のカードをひくのは誰か!?D種犯罪者とよばれる、その存在自体が極秘扱いにされる獲物を狩り出す任務のため、ネコは、グラビアという見棄てられた鉱業惑星に降り立った。プレノリアでおきた目的も方法も謎のテロ事件の主謀者“大鎌”がこの惑星に逃げ込んだのだ。姿もみせず突如襲いかかる死の竜巻…大鎌はきわめつきのサイ能力者だった。血も凍るクールタッチ、異様なまでに美しいヴァイオレンス。構想3年、異才・竹本健治渾身の書下し長篇!
作家の森川は17年前、たまたま見学した録音スタジオから歌手が失踪するという事件にでくわした。一方、退職刑事の持田には、やはり17年前、迷宮入りした老女殺害事件へのこだわりがあった。ある日、二人が住む町で放火があり、焼けた工場跡地から白骨死体が発見された。工場は17年前に建てられたという。年月の暗号に二人の追跡行が始まったが…。芸能界の裏面を描く長篇ミステリー。
宇宙暦795年、帝国暦486年。ゴールデンバウム朝銀河帝国は、自由惑星同盟軍の攻勢に報復を開始。皇帝フリードリヒ4世の戴冠30周年を勝利で飾るのだ。この戦略的意義のない会戦の陰で、帝国軍中将ラインハルトは、皇帝打倒の野望を抱いていた。王朝を倒し、自分こそが全宇宙の覇者となるのだ。19歳の若者が帝国最大の反逆者となるだろうことを知る者は、副官キルヒアイスのみだった。長篇スペース・オペラ。
1896年、英国東アフリカ植民地政府は、モンバサ・ナイロビ間の、ウガンダ鉄道第一期工事に着手した。それは暗黒大陸アフリカに文明をもたらすものだった。厳しい工事の続く中、一人の女が、傷つき飢えたライオンに襲われた。容易に手に入る獲物を覚えたライオンは仲間を連れ、大勢の労働者を抱える鉄道工事現場を次々と狙い始めた。建設事務所長ハルスレンは、自らライオン退治に出かけるがー。感動巨篇。
大雨季を前に、サボ川の鉄橋架設を終了したものの、依然として鉄道工事は困難を極めていた。そんな折、不満の慕る労働者たちがついに暴動を起こした。一方、人喰ライオンは日毎狡猾さを増し、やすやすと人々を襲った。その牙に倒れた前所長ハルスレンの遺志を継いで所長となった若手技師パターソンは、力強い支えとなってくれるマサイ人・ブータと共に、人喰ライオン撲滅に力を注いだ。戸川文学の傑作巨篇。
大阪は通天閣下の路地裏通り。バーバー中田の友夫、ガードマンの順吉、喫茶ミツコのママ光子の3人は妙に気が合い、日に一度は顔を合わせないと気がすまぬという間柄。涙もろくておっちょこちょいのこの3人組が、町内にまきおこるさまざまな事件に鳩首協議、他人の不幸は放ってはおけぬと力を出しあい、解決にあたる。ちょっぴり楽しく、ちょっぴり哀しい下町人情ドラマ。名手・難波利三の独壇場。
アメリカの家族の絆の光と影をしなやかな感性で巧みにとらえた“優しく、おかしく、雄弁で、知的でもある驚くべき短編集”(ニューヨーク・タイムズ紙評)…。23歳で華麗にデビュー。80年代アメリカ文学の新しい流れを代表するレーヴィットのベストセラー。
自宅マンションで音楽教室講師・杉山博之の変死体が発見された。驚くべきことに、青森県下北半島恐山の麓に住む杉山の祖母サキは「博之は北から来る何かによって殺される…。」とその死を予言していた。サキは「予知」という特殊能力をもつイタコであったのだ。続いて、同音楽教室の経営者・高川伸男も「北」に怯えながら謎の死を遂げる。この連続変死事件に絡む「北から来る」何かとは?そして「北」とは一体どこなのか?生前の高川からの手紙で真相究明の依頼を受けていたルポライター浅見光彦の「北」への探偵行が始まった-。
武術の天才、野口英治に舞い込んだ依頼。それは、アメリカで行方不明となっている清水コンツェルンの一人娘、美智子を捜し出し、日本へ護送する仕事だった。だが、清水コンツェルン乗っ取りを企む男たちにとって、重要なカギとなる美智子は抹殺せねばならぬ存在だ。ロスに飛んだ野口を待ち受けるシンジケートの暗殺集団。野口の拳が奔り、血みどろの闘いが始まった。そして、日本への脱出を図った野口に驚くべき事実が…。
桜田門の天才警視、岩崎白昼夢。東大卒、国家公務員上級職試験3番合格。警視庁捜一に入庁以来、冷徹な頭脳と大コンピュータで難事件を解決。やがて、部下の志村みずえ警部補と結婚し、妻みずえは赤坂署へ捜査課次席として異動した。そして再び本庁勤務となったみずえと岩崎に、捜一課長から、結婚1年目の紙婚式旅行の意外な命令が…。内密な公費旅行先で、岩崎を待ち受けていたのは若い娘の公開裁判だった…。
牛乳配達の青年が、朝露に濡れた雑草の上に俯伏せに倒れている人間を見つけた。その男の後頭部は血に染まっていた。所持品から被害者は小さな運送会社を経営する太田信次と判明。捜査が進むにつけて三人の容疑者が浮かびあがった。犯人を絞り切るキメ手のないまま、捜査は暗礁に乗りあげた。そんな折、犯行当時、蛍の光のようなものを見たという目撃者が現われた…。
元F1レーサー・唐山から公安二課に届いた「ポルシェ959を高速道路で350キロで走らす」という挑戦状。警視庁は、メンツのためにも、急遽、はみ出し刑事の天宮駿介を特捜ハイウェイ刑事に任命。当日、天宮は、唐山を中央高速・阿智P・Aに追いつめたが、何者かに狙撃された。さらに不思議なことに、ポルシェは高速道路上から忽然と姿を消した!一方、東名高速・浜名湖付近と、関越道・高坂付近で、ビニール詰めのバラバラ死体の一部が発見され…。アッと驚く大トリック!新しいヒーローの誕生!全国整備された高速道路を舞台にした、ニュー・カーアクション・ミステリー!新鋭渾身の書下ろし傑作!
警察とヤクザの両方から追われる殺し屋・〓。気がついたら銃撃戦の真っ只中にいた(『言い出しかねて』)。「彼女は、彼女でなくなってしまった。殺してやるのが親切ってもんだ」3人の男たちは拳銃を手に入れた(表題作)。清冽な冴えをみせる珠玉の6編。愉快でとぼけた連中が活躍する、正統派ハードボイルド小説集。
「パーティをやろうと思う」マイク・ハマーが提案した。「松本の死を悼んでね。一風変わったパーティだぜ」V8、3200cc、300馬力の化け物パトカーに、仲間を殺された5人の横浜っ子たちは、復讐を計画した。-高速道路での迫真のカーチェイス、小気味よい青春とその終わりを鮮やかに描いた傑作長編。矢作俊彦デビュー作。
「わたし、中学生かな、高校生かな」と少女は年齢も曖昧に答えた。噂に聞いた少女売春だ。彼は金がないのに欲望が動く。行為のあと、少女の隙に2万円を掠め取った。その札番号が郵便局強盗の奪った数字に一致。厳しい嫌疑を解こうと彼は少女を探し出すが、その口からは意外にも!「少女」を含め、逆転の妙に充ちた、魅惑の5編。
丸宮利秋は丸宮工業社長の長男で専務の地位にいるが、社内の地倉早苗と不倫関係にある。利秋が森羊之助常務と初めてのヨーロッパ旅行に出掛けてから、奇怪な事件に遭遇する。だが、同行の森は“旅行ノイローゼ”だと取り合わない。一方、東京の丸宮本社では大事件が起きていた。新田文学中、数少ないロマンミステリー。