1989年9月発売
六甲道夫の車に金髪女の運転する車が後ろからゴツン。勤務先のホテル・デュークは程近い。六甲は実績を買われ、より大きなホテルの探偵にスカウトされていた。女は魅惑的な体を預け、許しを請う。六甲の欠点は色好み。当然、情事に陥る。そこをロシヤ人に激写され、国際機密会議の盗聴に協力を迫られた。手に汗握る連作劇。
有楽町で、白昼堂々、三億円強奪事件発生!犯人は外人グループか?フリーライター・滝恭介は、女優の不倫の張り込み中、怪しい外人を目撃し、事件にくらいついた。背後には、国際犯罪コネクションの巨大な影が?一路、パリへ飛んだ滝の身にも魔手が迫る!サスペンスの雄が、現実の事件を素材に描く、書下ろし渾身作。
亡父から真面目だけを取り柄に育てられた西並玄一郎。彼は、彼の婚約者の父親であり、父の友人であった赤堀養治から旅行バッグを託された。その数日後、赤堀の他殺体が自宅で発見された。そして、西並が預かっていたバッグも何者かに盗まれていた…。『邪魔な男』で新境地を拓いた著者の洒脱な人間ミステリー第3弾。
ミステリー研究家久我京介先生は、またまた、めんどうな事件に巻き込まれてしまった。アシスタント明夫の級友が殺され、その恋人までも自室で不審な死を遂げたのだ。そこは完全な密室。学園で出会った双子の秘密。助教授と女学生の不審な行動…推理パズルの第一人者が、推理小説の豊富な知識を駆使して、読者を悩ます。
経済不況に苦しむベトナムは、日米協力のもと、かつて米石油メジャーが試掘した海底油田の再開発を図った。それを阻もうとする旧南ベトナム勢力とソ連。第二次ベトナム戦争の危機!砦洋介率いる特殊部隊の任務は、戦争の勃発を未然に防ぐことにある。サイゴン陥落時に最後の一機で戻った著者が、描く、現代不正規戦。
“丸の内の仕置人”として恐れられる国税査察官Qこと九門隆二。総合商社「丸商」の裏金調査、莫大な出所不明金の摘発に乗り出していた彼は、この脱税事件に高級官僚も一枚かんでいることを知った。その矢先、名古屋の「星茶寮」で主計局長・氏家が変死。自殺か、事故死か?有能な佐田潜を部下に迎え、九門はさらに巨悪の正体に挑む。
湖畔の小さな町は帝都をゆるがすどす黒い陰謀の渦のなかへ…。だれが舞姫を溺死させたか?オランダの天才学者フーリックの世界的名作ディー判事シリーズ。大室幹雄の解説、「放浪する知識人」を附して贈る。
謎の骸骨の正体はだれか?老婆はなぜ復讐しなければならないか?なんと厳格な古代中国の「法」と刑罰。オランダの天才学者フーリックの世界的名作ティー判事シリーズ。大室幹雄の解説、「虎の妖怪学ノート」を附して贈る。
16世紀後半、プロテスタントのイギリスと、カソリックのフランス、スペインとは宗教的に激しく対立していた。イギリス船、アリオン号の船長の娘リリーは、父母に伴われ、サント・ドミンゴに祖母を見舞った帰り、何者かに船を襲われ、目の前で父を殺されてしまう。ようやく無人島に逃れ、命は助かったものの、母は熱病にかかり、この世を去る。わずか12歳のリリーは、小さな弟と妹をかかえ、誰からも忘れられたまま、その熱帯の島に取り残されるのだった。そして、いつしか7年の歳月が流れた-。
リリーの父母と運命を共にしたエリザベス女王の家臣ベイジルの弟、ヴァレンタインは、兄の行方を捜しつづけ、ついに、リリーたちを見つけだし、故郷イギリスに連れ戻した。16歳のリリーは、精悍なヴァレンタインに次第に心惹かれていくが、彼には、コーデリアという美しい婚約者がいる-リリーの想いは通じないかにみえた。平穏無事なその生活に突然、降ってわいたような事件が起こる。リリーの邸をわが物にしようと企むハートウェルを、誤って殺してしまったのだ!思いもかけないできごとに、ただ茫然と立ちつくすリリーだったが…。
マギーとチェース(「見はてぬ夢」に登場)の愛の結晶、タイの青春を描く待望のカルダーシリーズ第4弾。成長したタイは、父に反発をおぼえながらも、牧場に生きる男としての自覚を深めつつあった。しかし、都会育ちの美しい妻タラ・リイの野心と浪費にふりまわされる日々の中で、牧場育ちの素朴な娘ジェシィに、心の安らぎを求めるようになっていく。そんな折、タイの両親や妹キャスリーンまでも巻き込む恐ろしい事件が起こった。カルダー牧場の未来は、そしてタイの愛のゆくえは-。
出羽三山といえば羽黒山・月山・湯殿山を指すが、その昔は山伏修行の聖地の一角を葉山が占め、長恵院では奪れた葉山修験道の復興を悲願としていた…(出羽即身仏伝奇)。会津の数ある名産品のひとつに「絵蝋燭」がある。蝋の生産は、藩の貴重な収入源として専売制の下に急伸したものだが、絵蝋燭の開発のうらに…(「会津絵蝋燭奇談」)。-その他、浮世絵師歌麿の「幻の名作」異聞、日本酒造りの「杜氏」秘史、そして木曽の「娘宿」哀話という5話構成になる本編は、著者の曽祖父の弟にあたる竹邑亭雀子と号する文人趣味の人物が遺した草稿を現代文に書き直し、いささかの潤色を施して再話したものというが、1話1話が丁寧な細工物を見るような感興をそそる情趣深い佳編である。
19世紀、イギリス産業革命の激動の時代を背景に、祖父に引きとられた純情無垢な少女ネルの辿る薄幸の生涯を描く大作。祖父は骨董屋を経営していたが、ネル可愛さの余り一獲千金を夢見て賭博に手を出し、破産してしまう。骨董屋は高利貸クウィルプに差し押えられ、ネルは老人とロンドンをあとに、あてどない旅に出る。美と醜、善と悪、さまざまな対立を描きながら、波瀾万丈の物語の幕が上がる。
蛇の髪のメデューサ、火を吹くキマイラ、両性具有のスフィンクスといった怪物とともにくりひろげられる、得体の知れない人物ラーオ博士のサーカス。毒性強烈なユーモアと暴力的な詩情を秘めて、読者をひき込まずにおかないファンタジーの名作。