1990年6月1日発売
死んだ父親が愛用していた航海用具の六分儀。それが息子のジョナサンの前に突然現われた。警察から渡された六分儀を見て、彼はわが目を疑った。貨物船の船長だった父は第二次大戦中Uボートの魚雷を受け、船もろとも嵐の海に沈んだ。そのとき六分儀も一諸に沈んだはずなのだ。乗組員は全員死亡している。では、なぜ?警察の話では、六分儀はスコットランドの村で盗まれたものだという。不可解な謎を解くため、ジョナサンは恋人と調査を始めたが…やがて明かされる父と乗組員の驚くべき運命とは?海洋冒険小説とミステリを結合させた力作。
大変な事件が起きた!オズマ姫が突然いなくなってしまったのだ。そればかりではない。オズマ姫の〈魔法の絵〉、よい魔女グリンダの〈魔法の本〉、それにオズの魔法使いの魔法の道具も消えてしまった。オズの国は大騒ぎになったが、とにかく愛するオズマ姫をさがし出そうと、ドロシー、ベッツイ、トロット、そしてオズの魔法使いやつぎはぎ娘たちが捜索の旅に出た。ところが同じ頃、クッキー作りの名人ケーキが大切にしていた洗い桶がなくなり、彼女とカエルマンがさがしに出かけていた。いったい何が起きたのか?謎と冒険のシリーズ第12弾。
殺人を犯したことは1度もない。だが自らの手で正義の裁きを行なったことはある。8年前のことだ。大叔母のエマが怯えきった声で、同居している妹夫婦が自分を精神病院に追いやり財産を奪おうと画策していると電話してきた。あわてて駆けつけた私が目にしたものは、なんと頭を吹き飛ばされた大叔母と床に転がる拳銃だった。妹は自殺だと主張したが…。女の冷酷な復讐劇を描くエリザベス・フェラーズの表題作をはじめピーター・ラヴゼイ、マイクル・Z・リューインら現代イギリス・ミステリ界を代表する気鋭9人がものした傑作書き下ろし短篇集。
ニューヨークのどこかで、ある日、大がかりな犯罪が起こるー16分署署長カウフマン警視が逃亡犯から得た情報はそれだけだった。どこまで信用できるかわからないが、警察としては見過ごすわけにはいかない。非常事態に備え緊急動員作戦〈パンドラの匣〉が立てられた。だが厳重な警戒にもかかわらずメトロポリタン美術館が何者かの襲撃をうけ、高価な名画5点が奪われてしまった!カウフマンはただちにニューヨーク全市に作戦を発令、総力を挙げて未會有の捜査網をしいたが…。壮大なスケールで描くエキサイティングな警察小説シリーズ第1弾。
放火事件の続発するマサチューセッツの地方都市で、地元マイナーリーグ球団の選手が殺された。球団を取材中だったフリーの新聞記者ロフトンは、独自に事件を追いはじめた。やがて彼は殺人と放火を結ぶ議員がらみの不正をつかむが…。自ら不正事件に関わった過去を持つ男がひとり黒い陰謀に挑む姿を描く、アメリカ探偵作家クラブ賞新人賞候補の熱いドラマ。
動物学教授のクレイヴァリングはひとり南海の孤島へ船出した。伝説の巨大かたつむりを見つけ、歴史に名を残そうというのだ。だが運よく発見には成功したものの、船が流され、彼は島でたったひとりに…。孤立無援の男を襲う異常な恐怖を描く「クレイヴァリング教授の新発見」他、人間心理の歪みが生みだす恐怖と悪夢に彩られたサスペンスの鬼才の傑作短篇集。
インディアナポリスでソシアル・ワーカーの事務所のチーフとして働くアデル・バフィントンは、目のまわるような毎日を送っていた。おもな仕事である児童虐待問題に心を痛め、別れた夫との間の娘ルーシーの成長を見守り、恋人の私立探偵アルバート・サムスンと過ごす時につかのまの安らぎを見出す。ある日、アデルの事務所に強盗が押し入った。その男は事務所が取り扱ったケースのAからHまでのファイルの中から、どれかをコピーして立ち去った。目的不明の強盗事件のほとぼりも冷めやらぬうちに、新たな問題が事務所に持ち込まれた。若い母親が幼い女の子2人とともに失踪したというのだ。だが、まさかこれらの事件が背筋の寒まなるような驚くべき深淵を徐々に覗かせていこうとは、アデルにも予想できなかった…。圧倒的に人気を誇るハードボイルドの旗手が、サムスンの恋人、新ヒロインのアデルを鮮やかに送り出す最新長篇。
内閣情報室特務課・石板晃。彼は手段を選ばぬ非情な一匹狼だ。彼の行く所には女と血の香りが充満する…。文化大革命でC国を追放され日本へ逃れた南小路公麿は、密かに極秘フィルムを持ちだしていた。そのフィルムにはC国の世界征服計画に関する秘密が収められていた。野望の露見を恐れたC国国家保安部は公麿の愛娘を誘拐し、脅迫する。救出を命ぜられた石板は、相俸ベレッタを手に敢然と敵に立ち向かう。が、事件には意外な黒幕が…。息をもつかせぬ展開と、凄絶なガンファィト!会心のアクションノベル。
樹霊の生命の叫びを聴け!偉大なる知性を秘めた全能の〈父母の樹〉は滅びの時を悟って永い眠りから覚め、異能の少年・広久に使命を与えた。植物の逆襲がいま、はじまる…。警鐘のハードロマン巨篇。
夏のにぎやかさが去った9月、霧生湖の畔で若い女の死体が発見された。顔は鳥についばまれて無惨であった。派出所の警官である桐田は、湖の周辺に散在する別荘をあたったところ、事件前夜、銀行の保養所でオフラインパーティが開かれていたことを知る。パソコン通信の仲間が集まっていたのだ。その内の1人、「元姫」というハンドルネームの女が消えていた。死体が他殺か自殺か、「元姫」と同一人物かもわららぬまま、桐田の地道な捜査が始まったが…。大型新鋭が、智略の限りを尽して綿密に組み立てた書下し推理。
鎌倉時代も末、都では皇統が2つに分裂、皇位継承を争って権謀術教がめぐらされ、機に乗じて公卿世界への介入を企む幕府と、それに反撥し討幕の意志を鮮明にする宮方の、鋭い対立が表面化していた。一方、河内の土豪・楠木多聞正成は、父・正遠に従い横暴を極める荘官襲撃に赴くが、隣国の土豪・当器氏の騙し討ちにあい、父は死亡、領地も奪われ、捲土重来を期して都へ逃れていた。傑作歴史長篇。
皇統分裂と、機に乗じて介入を謀る鎌倉幕府。宮方に志を寄せる正成だったが、陰険な公卿社会を嫌って河内へ戻り、ひたすら兵力の備蓄に努めていた。やがて宿敵・当器一族を滅ぼし河内を収めた正成は、元弘元年、後醍醐帝笠置山に篭るの報に接するや直ちに本拠赤坂城に挙兵、笠置に向う鎌倉方数万の精鋭を迎え討った…。一代の英傑・正成の出自とその天才的な軍略家像を活写した傑作歴史長篇。
児童書の編集者・綿畑克二は、童話の『不思議の国のアリス』の世界をこよなく愛す青年だった。ある日、スナック「蟻巣」で眠ってしまった綿畑は、夢の中で美少女アリスと出会った。しかも彼はアリスの婚約者であり、殺猫犯人の容疑者として追われていた。やがて目が醒めた彼は編集長・明野重治郎が殺害されたと知らされるが、再び睡魔に襲われ、アリスの待つワンダーランドに引き戻される。長篇ミステリー。
ヴェトナム戦争の末期、SISの特務隊員サラ・ルーカスは、450万ポンド相当の金と米ドルを輸送中に強奪された。事件後10年が過ぎ、過去の経歴を隠してサラは、トム・カートライトと幸せな家庭を築いていた。ところがサラの突然の失踪。トムは妻の捜索に香港へ飛ぶが、見えない敵に行手を阻まれる。冷酷非情な人々の陰で蠢くヴェトナム戦争の亡霊に、決然と挑むトム。鬼才イーグルトンの入魂の筆致が冴える。
近藤勇、土方歳三、沖田総司、芹沢鴨、あるいは山南敬助、永倉新八、原田左之助、斎藤一などなど…新選組を率い、担い、争いながら修羅場を駆け抜けた。男たちが彩る壮絶多恨の人間絵巻。