1990年7月発売
窮極のキャッチフレーズ“買って”をオカマのセーラちゃんに教えられたコピーライターの僕。あらゆる言葉になることができたし、あらゆる物になることができるダブルワン。そしてオカマに変身してしまった“彼”の、愛と笑いに溢れた物語。1分ごとの笑いの激流におぼれないで最後まで“読んで”。
み…美恵ちゃん…娘たちの喉を突き破って金切声がほとばしった。ふくよかな女の胸には1本のナイフが突きささっていた。Z2を駆って芹沢顕二は単身、犯人を捜しに走る。そこへ現われた“青い仔猫”という美貌のライダー。そして盲目のピアニスト怜子。疾走する青春群像を生き生きと描く江戸川乱歩賞受賞作。
蛙にされてしまった平凡な予備校生のぼくは、断固として人間に戻りたいと思ってる。世界でたった一匹、字の書ける蛙のぼくは、やさしい麦子に助けられてグリム童話『蛙王子』の研究に取りくんだ。変化なし!絶望した麦子に見すてられ、ぼくはいっそう彼女のことが好きになった。群像新人文学賞受賞作。
私こと新進気鋭の刑事・ブンとベテラン刑事・総長のコンビ。対するはエリート警部補・荻原。双方がっぷりと4つに組んで連続殺人犯を追いかけます。我ら2人組の軽妙な会話とソリの合わない荻原との東西文化圏対立。姿なき殺人者と偽装された海難事故。事件は二転三転、破天荒な結末を迎える。
東京郊外の高級住宅が並ぶ丘の上を毎日観察する老人の狙いは何か。また都心のデパートや地下街に出没するピエロの正体は?そして江戸川乱歩の古い写真を持つ老女の素顔とは。現代の東京に表出した奇妙な出来事の展開はやがて40年前の雪の北海道で起きた惨事のナゾ解きに向けてひた走る。鬼才ならではの壮大で周到な野心作。
学生街のビリヤード場で働く津村光平の知人で、脱サラした松木が何者かに殺された。「俺はこの街が嫌いなんだ」と数日前に不思議なメッセージを光平に残して…。第2の殺人は密室状態で起こり、恐るべき事件は思いがけない方向に展開してゆく。奇怪な連続殺人と密室トリックの陰に潜む人間心理の真実。
大阪に住む友人の女流画家とその義妹の家に宿をかりた私。そこに偶然訪れた2人の女客。隣家から響く無遠慮な女の声。さりげない日常の中に、時代の枠に縛られながら慎しく生きる女たちの不幸と哀しみとを刻み込む、女流文学賞受賞作「女の宿」。ほかに名篇「水」、「泥人形」「幸福」など、人々の真摯な生きざまを見事に描き上げた13篇を収録。
雑木山の土塊の中から現われた髑髏。天を仰ぐその眼窩は、追いかけてくる鬼火から逃げ続けた30年を、ただ虚ろに眺めていただけなのだろうか。一人のスターの死をきっかけに過去の事件が暴かれる。「救けて、直ちゃん。怖いの…」非痛な声を残して死んだ大女優は他殺か自殺か。謎を解く鍵は赤一色に塗られたキャンバス。書下ろし長編ミステリー。
ケンイチとミサコがつきあいはじめたばかりの、高校2年の夏休み。風祭の頼みで母校・M中の水泳部のコーチをすることになったケンイチは、奇妙な事件に巻きこまれた。水泳部の顧問〈シンドバッド〉こと伊丹先生が部室で何者かに襲われ、しかもその部屋は密室だったのだ。水泳部の美少女・麗美と伊丹先生をめぐるさまざまな噂が渦巻くなか、事件解決にのりだしたケンイチとミサコは…。
他のスポーツはダメだけど、水泳だけには自信のあった千苑。準備体操もしないで泳いでたらプールのまん中で「助けて〜ェッ!」記憶はないけど、千苑を助けてくれたのが水城昌也というハンサム・ボーイ。そ、それも、MOUTH TO MOUTHでね。BFの航にはそのことを言いそびれているうちにTV局で昌也とバッタリ。なんとタレントとしてデビューするんだって…。
中学3年の池上花音。3年5組の教室はいつもの仲間たちー淳悦に一泉、頼子や可織たちーでにぎやかだ。でも受験生だもん、話題は志望高校のことだったりするのね。でも、そんな日々の中で、坂本先生が結婚し、おばあちゃんが亡くなって、花音はまたひとつ、心の階段を登っていく。そして、淳悦と一泉の間でゆれる自分の心にも、決着をつけようとするのだが…。
野々子と周太郎は幼なじみ。ケンカもよくするが、野球少年の周太郎をいつも野々子は必死に応援していた。そのかいあってか、周太郎は見事甲子園に出場。試合は1回戦で敗れたものの、エースの咲坂と並んで人気者になっていた。浮かれる周太郎に野々子は不安をつのらせる。まだ周太郎から「好き」という言葉を聞いていないのだ。そんな時、周太郎がプロ野球に行くかもしれないと聞き…。
未亡人のお母ちゃんがオトコを作ったのでこの夏は不良しちゃおう、と家出した歩美。もとBFの走一や親友の千泳の忠告を聞いても、見知らぬ男に処女をやっちまっても、歩美の心は迷路の中にいるように不安だ。そんなある日、捨て猫が拾われるように、マイという女性に歩美は拾われて…。愛を求めて、青春の迷路の中をさまよう16歳の少女の、涙と感動のひと夏物語。
あたしは、晩夏の閑散とした水族館にいた。そこで、ゲジゲジ眉のおじさんと、すっごい美形の紳士を見かけた。なにやら怪しげな2人の会話に耳を向けると…なんと三枝絵夢のこと、話してるじゃないの。絵夢!今や人気絶頂のアイドル…そして、あたしのただ1人の親友。なんかイヤな予感、なぁんて思ってたら、胤堂とかいう変な探偵と一緒に国際的テロ事件に巻きこまれていって…。
「金に尻尾を振って集まってくる連中じゃ、勤まりそうもない仕事なんだよ」バイト学生の水野竜一に深江は言った。自室の壁にペルーの地図を貼り、いつかその地にはばたきたいと夢みている竜一は、そのひとことで心を決めた。20億円もの金に目もくれない男たちが、自らの肉体と知恵を武器に巨大企業を追いつめてゆく。竜一21歳、暑くて危険な夏が始まった。
「あたしの誇りは竜よ。あたしの狼、冬に向かって走る狼」女は唇を重ねる。水野竜一が戻ってきた。2年間、ペルーでゲリラとなり、殺人術と大いなる誇りを身につけて。だが、かつて生命を賭けて共に闘った深江は行方不明だった。深江を探す竜一の前に、銃弾の暴力が立ちふさがる。仲間が死ぬ。老警部「おいぼれ犬」の姿がチラつく。巨大な、姿を見せぬ敵に、ゲリラ戦士竜一がついに牙をむいた。