1990年9月発売
カリフォルニアの山岳地帯-。動物保護施設の創設者ケンドールは、体の弱った動物をできるだけ自然に近い所で育て野性に帰す仕事をしていた。ある日、アメリカンライオン、クーガが険しい山の中にまよいこんでしまった。人の手で育てられたクーガは野生では生きられない。捕獲し、保護しなければならない。しかし、それには日頃動物を傷つけるとし敵対している名うてのハンター、チャズ・ドルトンに頼むしかない。ケンドールは勇気を振り絞って山小屋の戸をたたいた。
カニュエラは病弱な母とふたり、ロンドンの片田舎で人目を避け、暮らしていた。外交官の父は国家機密漏洩の疑惑をかけられ職を追われ、失意のうちに自殺してしまった。カニュエラは父の冤罪をはらすことを望みながら、生活を支えるため、秘書の職に就いた。ところが彼女を雇ったのは、偶然にも、父を罠にかけたラモン・デ・ロペスだった。深い恨みを胸に秘め、素姓を隠して働くカニュエラにロペスはアルゼンチンでの仕事を命じた。思い出と屈辱の、あのブエノスアイレスで…。
町を出た少年が迷い込んだのは、ゴーストでいっぱいのジャングルだった。耐えられぬ悪臭を放つもの、奇妙なかたちをして不思議なしぐさをするもの…。ヨルバ族に先祖から伝わる物語をふまえて、ドラム・ビートに乗せて紡ぎ出される幻想の世界。ナイジェリアに伝わる伝説をもとに紡ぎ出された幻想文学。『やし酒飲み』に続き西欧合理社会に衝撃を与えた傑作。
おとぎ話の世界には、古くからのいろんなきまりごとがある。たとえば…悪いドラゴンはセント・ジョージに滅ぼされるはず。良い娘は妖精から贈り物がもらえるはず。魔法をかけられた王女は王子に救われるはず…。ところがそんな“はず”をすべてはずして、思いがけない展開をみせるおとぎ話もある。イギリス・ヴィクトリア朝のひと味違う秀作をまとめた、文庫オリジナル版の楽しいフェアリーテール集。挿絵も多数収録。
漱石没後七十余年。その死によって中絶した遺作『明暗』を、漱石の諸作品からの引用をちりばめながら、漱石そっくりの文体、言い廻し、用語を駆使して完結させる。そんな無謀な試みを現代の女性が天衣無縫に実行してしまった。平成のまどろみを揺り動かすこれは事件だ。
世界最大のサッカー大会、ワールドカップ。開催国のアメリカは大方の予想を覆して決勝にまで駒を進めていた。だがそんな折りも折り、プロ・ティームのオーナーが競技場内で殺されるという事件が発生する。死体の頭部にはスパイクの跡。スポーツ記者マークは恋人を嫌疑から救うため、真犯人究明に乗りだすが…。あのペレがサッカーへの情熱を謳いあげた、異色のスポーツミステリ。
因習の村に伝わる奇妙な子守唄、その歌詞どおりの連続殺人劇が、通称八馬鹿村と呼ばれる山間の寒村に繰り広げられる。キチガイじゃが、とつぶやく老人、獄門寺や病院坂…横溝正史の作品を彷彿とさせる世界を舞台に、トリックの冴えをみせる「本歌取り」推理長編。ミステリ・ファンの絶賛を浴びた岩崎正吾の処女作であり、ここに「探偵の四季」4部作の幕が切って落とされる。
ジゼルは墓の中で目覚めた。どうやら霊魂だけの存在になってしまったらしい。でも天国に行けないのは、運命的に夫につなぎとめられているせい?夫は神経を病んだビジネスマン。そして自分を殺した男…。一方、癌に倒れ一旦昇天したものの、娘のことを気に病んだ母親は、救いの手をさしのべようと下界に舞い戻るが…。鬼才が、ユーモラスに、かつ辛辣に描く驚異の現代小説。
宇宙人たちによって、中世西欧社会そのままの惑星トランへ送りこまれたアメリカ人傭兵たち。現代兵器で地方王国ドラントスを平定した隊長リックは、今やこの国を統べる大貴族だった。だが惑星全土の政情は不安、緊張状態が増す中、狂僧フラドスが率いる大軍団がトラントスに迫る。死をも恐れず、ドラントスに関わるすべてを抹殺せんとする軍団を相手にリックたちの攻防はなるか。
ヴィースの戦いに勝利をおさめたドラントス・ローマ連合軍。だがこのとき、北方の『五つの王国』でも不穏な動きが起こっていた。名将ストリモン王子率いるタ=メルテモス軍が、ついにドラントス北部の国境を越えたのだ。そして戦いのさなか、リックの妻にしてチェルム領の女領主ティララが、敵の手におちた。アメリカ・ミリタリーSFの第一人者が放つ、人気シリーズ第3弾。
オカルト集団アラクネーの、〈目醒めの時〉が近づいていた。ついにダン・ブレイディはアラクネーの本拠地へと足を踏み入れる。町の名はハースト・アンダー。ここが彼の1年におよぶ闘いの最後の場所となるはずだ・・・。アラクネーに連れ去られたダンの2人の子供は無事奪還なるか?アラクネーが造営を進めてきた〈迷宮〉とは?そして,目醒める者は誰?オカルト知識を縦横無尽に駆使して描いたアクション・シリーズ,堂々完結。
星屑岬には、悲しい恋の伝説があるの。今は天国に行ってしまった、大好きなおばあちゃまに聞いたお話。そして、お話のあとにかならず「いづみ、早く16になりなさい」っていわれたけど、どうして?16歳の誕生日を前に、この言葉のナゾをとくために、海辺の街の駅に降りたわたしの前に、星彦・夏彦という名の兄弟が…。
廊下側の席にいるわたしにとって、山場健実くんの座る窓際は、パラダイス。高校入学以来、カンペキに片思いで、しゃべることもできないでいるけど…。夏休み直前、親友の咲子と、カレのやってるバンド・アークエッツのステージを見て大決心。健実くんを好きな気持ち、ギラつく太陽なんかに負けない!なのに…。
「ショート・ショート」32本一挙大公開!!横田順弥氏の奇才、いや鬼才横溢ぶりをとくとご覧じろ。よくまあ、こんなストーリーが作れるものだ、とあきれながらも、思わずひきずり込まれること請合い。なにしろ「荘戸翔人氏の短い人生」と題して、アッという間に9篇のショート・ショートを作ってしまう達人なのです。さあ、覚悟をきめてお読み下さい。