1990年発売
「中南米の麻薬組織による、コカインの日本持ち込みを阻止せよ」海原首相は特殊部隊の砦洋介に命じた。砦はまずコロンビアのコカイン地帯へ飛び、米軍特殊部隊と協力して、コカの葉絶滅作戦を開始。部隊の面々も日本へ向かう謎の貨客船を追跡した…。麻薬をめぐる政治、経済、軍事問題を、豊富なデータと綿密な取材で描く。
画家・小塩正彦の最高傑作である春画を探してほしいー。カウンセラーにして秘密捜査官の顔をもつ赤垣美晴は、群馬県川場村へ。そこで彼女は、二十年前に小塩が自殺し、絵のモデルをした三人の女性もことごとく殺されている意外な事実に出会う…。性と官能の深淵に鋭くメスを入れた好評“赤い闇の未亡人”シリーズ。
1992年6月、エルサルバドルで過激派が米海軍の最新型核ミサイル・トライデント2Aを略奪。協調路線をとる米ソにとって、この一件は、新デタント崩壊の引き金ともなりかねない。隠密裡に事件の処理にあたる米政府に対し、ソ連首脳はGRUの女工作員を米本土に潜入させ、真相究明にあたる…。-大物スパイと名女優の間に生まれた美貌のスパイ・アーニャをめぐる裏切りと陰謀。事件の背後にリビアの影とソ連上層部の確執が…。
そいつは、とうとうやって来た!それは人か魔物か。刑事の露無は、北海道の知床で物の怪に襲われた。魔物が住む世界へ行かぬかぎり、死が待っている…。物の怪の国への扉を開け!露無もまた魔人と化した-。
ライターとして駆け出しのジェシーにかつての無声映画の大スター、メルセデスの伝記を書くというチャンスが巡ってきた。そかし、メルセデスが出した条件は、ハリウッドきってのセクシーシンボルであるカム・ホールダーの家のバラ園に灰をまいてくる-という奇妙なものだった。そのために彼の邸宅に忍び込んだジェシー。ところが番犬にほえたてられアボカドの木にのぼって難を逃れる始末。と、犬を呼ぶ声がした。あれが、カム・ホールダー…。ジェシーは黒髪の男をじっと見つめたままその男らしさに声も出なかった。
カリフォルニアの山岳地帯-。動物保護施設の創設者ケンドールは、体の弱った動物をできるだけ自然に近い所で育て野性に帰す仕事をしていた。ある日、アメリカンライオン、クーガが険しい山の中にまよいこんでしまった。人の手で育てられたクーガは野生では生きられない。捕獲し、保護しなければならない。しかし、それには日頃動物を傷つけるとし敵対している名うてのハンター、チャズ・ドルトンに頼むしかない。ケンドールは勇気を振り絞って山小屋の戸をたたいた。
カニュエラは病弱な母とふたり、ロンドンの片田舎で人目を避け、暮らしていた。外交官の父は国家機密漏洩の疑惑をかけられ職を追われ、失意のうちに自殺してしまった。カニュエラは父の冤罪をはらすことを望みながら、生活を支えるため、秘書の職に就いた。ところが彼女を雇ったのは、偶然にも、父を罠にかけたラモン・デ・ロペスだった。深い恨みを胸に秘め、素姓を隠して働くカニュエラにロペスはアルゼンチンでの仕事を命じた。思い出と屈辱の、あのブエノスアイレスで…。
北辰一刀流千葉道場を継ぐ者として期待されている俊秀平手造酒は、深夜の道場内で1人なお剣の工夫を重ねていた。今では師範代の海保帆平をさえしのぐ腕の冴えをみせる造酒であった。師の千葉周作は、造酒を大和郡山藩へ二百石でお召し抱えになるよう推挙していた。ところが、郡山藩上屋敷を訪れた造酒の身体を診察した医者の緒方順庵は、造酒が労咳を病んでいることを告げたため、郡山藩への仕官は取り止めとなってしまった。浅草の水茶屋で働く女お紺を支えとして愛していた造酒であったが、お紺とも別れさせられ、心の憂さを晴らすべく無頼剣をふるい3人の勤番侍を斬って捨てた。-悲運の造酒はどこへ行く、造酒同様に千葉道場を破門になった先輩平田深喜と再会して…。
町を出た少年が迷い込んだのは、ゴーストでいっぱいのジャングルだった。耐えられぬ悪臭を放つもの、奇妙なかたちをして不思議なしぐさをするもの…。ヨルバ族に先祖から伝わる物語をふまえて、ドラム・ビートに乗せて紡ぎ出される幻想の世界。ナイジェリアに伝わる伝説をもとに紡ぎ出された幻想文学。『やし酒飲み』に続き西欧合理社会に衝撃を与えた傑作。
おとぎ話の世界には、古くからのいろんなきまりごとがある。たとえば…悪いドラゴンはセント・ジョージに滅ぼされるはず。良い娘は妖精から贈り物がもらえるはず。魔法をかけられた王女は王子に救われるはず…。ところがそんな“はず”をすべてはずして、思いがけない展開をみせるおとぎ話もある。イギリス・ヴィクトリア朝のひと味違う秀作をまとめた、文庫オリジナル版の楽しいフェアリーテール集。挿絵も多数収録。
漱石没後七十余年。その死によって中絶した遺作『明暗』を、漱石の諸作品からの引用をちりばめながら、漱石そっくりの文体、言い廻し、用語を駆使して完結させる。そんな無謀な試みを現代の女性が天衣無縫に実行してしまった。平成のまどろみを揺り動かすこれは事件だ。