1992年11月1日発売
ラブホテルの雑役婦に身を窶して養女マリアの消息を追っていた私に、「横浜でみかけた」と。情報提供者は横浜の貿易商・水原譲治。元学生アマレスラー。目撃談を聞いたあと私は誘われるまま彼の洋館に。白竜組組長の夫を亡くして以来4年半ぶりに男の腕の中で朝を迎え、東京に戻った私を待っていたのは同組の速水伸太郎。「ママ、力を貸して下さい」-。右翼の大立者の孫娘が誘拐され、身代金3億円の運び役に私〈白松美影〉を指名してきたというのだ。犯人の狙いは、マリアはどこに。
大永一年戦国時代。人々は殺りくと略奪に目を血走らせ、戦いに身を投じていた。『愚かなり人間』地上に渦巻く欲望と憎悪の念に引き寄せられた鬼が再びよみがえった。その名も“黒夜叉道鬼”という魔道士は、この世を闇の世界に変えるという野望のもと、地獄から妖魔どもを召喚する。一方、この刻を待つひとりの男がいた。かつて、道鬼を封じ込めた鴉天狗の子孫“カブト”である。彼は、妖剣“飛龍”を手に入れ、守護神“四神”を集結して道鬼を迎え撃つ。カブトと道鬼は光と闇、決して相容れることのない宿命であった。かくして、時代を越えた二人の男の永遠の戦いが始まる。
雪の夜、新進作家の山路昌夫が妻ともども惨殺死体となって発見された。山路は聖徳太子ガン死亡説をめぐる殺人事件をテーマにした作品を書きあげていた。容疑者として浮かんだ人物は、山路と対立していた先輩作家・吉岡だったが、吉岡には鉄壁のアリバイがあった。-アリバイ・トリックと暗号を駆使して存分に本領を発揮した著者会心の代表作。
時は戦雲迫る昭和初期、南満州鉄道が誇る特急「あじあ」号の中で日本人が刺殺された。次の日、北満新報の記者香崎鋭介は社長の密命を受け、その「あじあ」号から消えた男を探そうとするが憲兵隊に阻まれる。どうやら背後にはドイツ、ソ連、日本、中国の国家機密が隠されているらしい。そして各国が血眼で追い掛けている古代“火神伝説”の謎とは?
智久・典子姉弟と大脳生理学者・須堂の素人探偵トリオが、囲碁、将棋、コントラクト・ブリッジ、チェスの幾何学的迷宮世界の中で、ぎりぎりと脳髄をしぼるような複雑怪奇な謎に挑む。ミステリーとゲームの頭脳的融合傑作集。
平安中期、匂うばかりの美しさで、五節の舞姫に選ばれた天女の生まれ変わり、空前絶後の美女。小野小町は仁明帝・東宮・在原業平・僧正遍照など男たちとの恋に懊悩しながら、情熱的な和歌の才をますます発揮し、六歌仙の一人となる。書き下ろし長編歴史ロマン。
日系三世のミツオはロスの私立探偵。ベトナム戦時代の直属の上司カゾー曹長が、在米ベトナム人に刺殺された。戦後、九年の時を経たとはいえ、プロフェッショナルな兵隊だった男が素人に刺殺されるはずはない。ミツオは信頼し敬愛したカゾー曹長のために、“依頼者のいない捜査”に乗りだす。多民族国家アメリカの複雑な社会構造のなか、真相を究明する男の生き様。
社長秘書から、後妻として年齢の離れた社長の許へ嫁いだ真紀。しかしそれは、性の奴隷への道程だった。2人の息子とその友だちに犯され、娘の借金の肩がわりに証券マンに強姦された真紀。彼らの巧みな責めに、若き継母の花芯は無意識のうちに潤い、次第に快楽の淵に堕ちていく…。
お気楽に生きてきた私の前に現れた破滅型のギャンブラーとニューヨーク帰りのトレンド野郎。ドロドロの浮気騒ぎの果てに流れ着いたNYでの、愛のないSEXと快楽のためだけのDRUG。だが心やさしきゲイたちとのナイト・クラビングの中で私は少しずつオトナになっていった-。豊かさに惑える女の子の自立を描く世紀末のヴィルドゥングス・ロマン。
いくたびかの夏を過ぎて再会するかつての恋人との切ない別れ(「春の陰翳」)、対照的な兄弟がそれぞれに出会う甘い無垢な恋(「乾し草小屋の恋」)など。生の回復を掲げ、「性」の問題に大胆かつ真摯に取り組んできたロレンスが、田園地帯を舞台に、男女の恋をめぐる豊潤な心象風景をみごとに描く初期傑作短篇集。
迷宮都市はガルシア=マルケス、イタロ・カルヴィーノといったマジック・レアリズムの作家達の衣鉢を継ぐ新進作家による幻想短篇集である。ある閉ざされた都市の綺譚を描いた表題作「迷宮都市」、ゲームの規則に支配された奇妙な街の物語「Du」、孤独な女性が垣間見た白日夢の世界「失われた結婚式」、都市のアンダーグランド・ゾーンの魅力をさぐる「ストリップ・ショー」、謎めいた流刑地の歴史を考察する「ロベルト・デ・カステランの日記」他、全23篇を収録。