1992年12月1日発売
三陸鉄道の車中で、水産会社を経営する男が殺された。男の娘は父の死の前日、捜査一課の十津川警部に助けを求めていたのだ。父親あてに殺害を予告する脅迫状が届けられたというのだった。だが、それだけでは動くわけにはいかなかった。自責の念に悩む十津川をよそに、上野のホテルで第二の殺人が。
繁栄の終幕-バブル経済の崩壊を正確に予言する一通の極秘経済レポートを受け取った内閣情報調査室は、秘密セクション7を使い、不安定化工作を画策。続発するテロ、警察高級官僚が謎の死を遂げた翌日、ひとりの極秘捜査官が首相官邸に呼ばれた…。今日の日本を見事に予見した迫真の情報サスペンス。
デビュー以来今日までの輝かしい作品群を集成。40年前、花火の弾けた思い出が目の前に蘇える「花火」。村長が旅人に猫の頭をかぶる奇習について語る「猫かつぎ」。電車の中で毎朝会う美人の正体を知って驚く「地下鉄御堂筋線」。ミステリー、SFから時代ものまで、横溢する豊かな才能。
二昔も前に愛した女と旅先きで待ち合わせた男。だが、その彼の前に現れた“その女”とは?「椿のかわりに萩を抱きません?」と言い寄るその女の真意は果たして何か(表題作)。萩、柳川、会津、盛岡、異国北京、能登、と6つの地を舞台に展開する愛の虚実を、詩情豊かに描く秀作短編6編。
1800年6月、忠敬が渡った蝦夷は外にロシア、内に公儀・松前家・アイヌが策略を重ね、だまし合いの地だった。陰謀家の間宮林蔵、変な剣客平山行蔵ら、敵か味方か。アイヌ青年と仲良くなった忠敬に起る、事件につぐ事件、喘息をかこつ忠敬の愚直な一歩は、血みどろ泥まみれの闘いだった。全五巻。
退場。最後の試合でルールどおり毅然とした態度で、プロ野球審判の名誉をかけ信念をつらぬく“仏の昇さん”。野球、F1レース、サッカー、テニスなど、スポーツの世界を舞台に、いずれもプロであることに誇りを持ち、それゆえに孤独な男たちを、男だけの世界を描いて、快い余韻をひびかせる短編小説集。
欲望と人混みの街・新宿ー。アフリカ人の戦士が現れ、いきなり槍で中年男を刺し殺す。通りかかった都内最強の男・地虫平八郎の腕の中で息絶えた男は奇妙な黄金の勃起仏と地図を持っていた。さらに地虫の前にブードゥーの呪術師が立ちふさがる。地虫は拳法で銀髪の呪術師を迎え撃つ。黄金宮シリーズ第1弾。
21世紀初頭。九州の佐世保港と五島列島の中間に位置する青方開放刑務所には、「ラスプーチン」=羅南元春、「フリスキー」=明野由行ら怪しげな人々が収容されていた。ある日、海を隔てたところにある、予防拘置所のある立島刑務所で暴動が起きたという噂がたった。青方内の人間関係も、急変する。裏切り、密告、スパイ。真実かどうかもわからない情報に踊らされ、やがて…。権力と対峙し、真の自由を問う力作長篇小説。
ルナ人の魔術師メルドッグの追跡を逃れながら、東方にある両親の国へと向かうリュウの一行は、オラン人の国にたどり着く。貧しいながら心優しい彼らの中でしばしの平安を得たリュウは、自分の生き方について改めて考える。愛するミネルバと二人で静かに暮らすか、それとも虐げられている地球人たちのために戦う奉仕者、デミウルゴスになるか…。やがて一行のことはメルドッグの知るところとなり、激しい攻撃が仕掛けられる。リュウの中の闘士ティゲルが目を覚ます。彼のとるべき道は。
遠い昔、海に沈んだ大陸“螺・夢宇”。その災厄にすべての夢宇人は死に絶えたかにみえた…。時は流れ、モンゴルの大草原を騎馬民族が駆け巡る頃。吐蕃(チベット)を治めるビライ王家の冷酷無情な王子アビンは、強力な武器で近隣諸国を威圧していた。武器は王宮の地下で発見された夢宇の遺産である。一方アビンの刺客に国を追われた弟テムジンはモンゴル族に助けられていた。兄への復讐を胸に逞しく成長したテムジン。運命は彼を大草原の蒼狼、伝説の青戦士の道へ導いていくー。
極東航空には、鬼のヤタローと聖処女ウタゲという2大奇人パーサーがいる。二人とも完全主義者で容赦のない名物チーフだ。一方、極東航空を愛するあまり文句を連発するうるさい、うるさいパッセンジャーたち。この二つの“恐怖”を乗せてフライトする時、ドジスチュワーデスたちには、思いがけない悲喜劇が巻き起こる。様々な人生の縮図を乗せて繰りひろげるユーモア・フライト・ストーリー。
父、母、弟を戦争で喪い、10歳で孤児となった春日正明。同じ境遇の佐伯悦子と知り合い、結婚を誓い合ったものの別離を余儀なくされる。そして11年の歳月が経ち、正明は人妻となった悦子とホテルの一室で向い合った。悦子は夫の沢田を愛していないことを告白した。正明と悦子は再び結婚を決意するが、沢田は離婚に応じるのか?正明はかつての恩師・相川に相談するが。
ペンネーム阿騎浩太郎の名前で流行作家になっていた相川は、正明と悦子の結婚を全面的に応援することを約束した。一方、正明と悦子の関係に気づいた沢田は、二人に尾行者をつける。そして一度は正明と沢田はレストランで対決するのだが、離婚の話し合いは不調に終り、遂には卑劣な沢田は正明に刺客を放ったー。14歳の歳月を費やして、若き魂の軌跡を謳う感動の大河小説、堂々完結。
光源氏の死から10年の歳月が流れた。源氏の子ではあるが出生の秘密に悩む、厭世的でストイックな薫君。源氏の孫にあたる好色で闊達な匂宮。川霧のたちこめる宇治に隠れ棲む、源氏の異母弟、八の宮と娘たち、大君と中の君。そして異母妹、浮舟。二人の青年の愛の波間にたゆたう姫君たちの哀しい恋のゆくえはー。光源氏をめぐるヒロインたちの華麗で多彩な愛のかたちを描ききる、瀬戸内源氏の完結。
死ぬも生きるも運まかせ。たった一騎で戦場に斬り込み、朱柄の槍を振り回すー。戦国時代末期、無類のいくさ人として、また、茶の湯を好む風流人として、何よりもまた「天下のかぶき者」として知られた男、前田慶次郎。乱世を風に舞う花びらのように、美しく自由に生きたその一生を描く、第2回柴田錬三郎賞受賞の話題作。
「死んだら、埋めてください。大きな真珠貝で穴を掘って」そう言い残して逝った女の墓の傍で、男は百年待った…。不可思議な幻を紡ぐ「夢十夜」そして、美しさを追い、心のやすらぎを求めた「草枕」。絵画的で詩情あふれる文章の中に“理智の人・漱石”の側面をも覗かせる名作。
飛騨から信濃へ、峠道をたどる旅の僧が、山中の一軒家で一夜の宿を乞う。その家には美しい女と、その亭主が住んでいた。近くの流れに案内された僧は、女に体を洗われ、花びらに包まれたような気分になる。その夜、僧のまわりを無数の獣の気配がとりかこむが…。表題作『高野聖』など妖しく美しい幻想の世界を描いた5篇を収録。
ドラゴン族の魔法を封じ込めたといわれる、伝説の封魔の秘宝〈ガルーディナの玉〉。ランド侯配下の戦士ヴァーミリオン・ゼロは、アスカやルフィー、ライムら6人の仲間とともに、その秘宝を求めてツァレル山地へと向かう。そこに待ち受けていたのは、狂暴なモンスターや、秘宝を狙う他の冒険者たち。そして、秘宝を奪っていたのは、意外にも…。月刊ポプコム連載中の、読者参加型誌上RPGシリーズ。好評第3弾は、〈ガルーディナの玉〉をめぐるエピソードの完結編。