1992年6月発売
元中尊寺貫主の著者が晩年、渾身の筆を揮い、絶筆となった歴史大作。百年余にわたって古代の奥州に君臨し、中尊寺・金色堂に代表される黄金文化を築いた奥州藤原氏の興亡のドラマ。
ときには膝を打つほど面白く、ときには哀しいまでに美しく、またときには身も凍るほど残酷に…。人生をあざやかな形で描き出したフランス短篇小説の名手たち。詩人・堀口大学がこよなく愛し訳したアポリネールやラディゲ、アナトール・フランスなどの作品を集めたエスプリの香り高い一冊。
純白の処女の喉元に飾られた血の色の首飾り。さしこむ月光の中、下肢から血をしたたらせる狼少女…。赤頭巾、白雪姫、青ひげ、吸血鬼譚などに着想を得て、性のめざめと存在の変容とを描く、セクシュアルで残酷な短篇集。
「そんなばかな!」ストット教授がうめいた。今宵は吉例フクロウ数えの夜。シャンディ教授は仲間と楽しくすごしていたのだが、その目前を突如謎のシロフクロウが横切った。ふわり、ふわり。あとを追う一行を出迎えたのはロケット花火の一斉射撃。おまけに、そのどさくさにまぎれてメンバーの一人が刺し殺されてしまったから、さあ大変…。謎とユーモアが一杯のシリーズ最新作。
あの事件は、もう三十年以上も昔のこと。いまやモーテルと屋敷は復元され、観光名所としてオープニングをひかえていた。そんなある晩、二人の少女がここに忍びこんだ。暗闇のなかでは、あのノーマン・ベイツの人形が薄笑いを浮かべて二人を待っていた。だが、待っていたのは人形だけではなかった。甦る三たびの悪夢。『サイコ』『サイコ2』に続くシリーズ最新刊ついに登場。
風が吹くとき〈水子〉たちが泣く。〈水子〉の聖所は炭坑奥深くにあり、そこは侵す者には災厄が降りかかる。50年前の坑内事故もそのせいだ。この寂れた炭鉱町には、そんな言い伝えがあった。そしていま、炭鉱事業は再開されようとしていた。だがある日、炭鉱技師が坑内で墜落死を遂げ、あとに一人娘が残された。やがて風が吹きはじめ、町に死の影が…。サイコスリラー巨編。
闊達に生きる在野の豪傑、朝鮮版ドン・キホーテの活躍を痛快に描く「鳳伊金先達行状記」をはじめ、「大統領の食卓」「沈黙は金なり」など、小説、ショートショート、コント、ドラマの各ジャンルにわたり、頓智や艶笑、政治風刺のきいた朝鮮独自のユーモア文学の傑作を編んだ初めてのアンソロジー。
1583年、豊臣秀吉は、柴田勝家との天下分け目の賎ケ岳合戦で遂に勝利をおさめた。この合戦に功績のあった福島正則、加藤清正、脇坂安治ら七人の武将は、秀吉から等しく一番槍の感状と三千石の加増を与えられた。世に言う「賎ケ岳七本槍」である。-本書では、戦国時代の終息期のエリート武将である彼ら七勇士たちが、賎ケ岳合戦以後どんな生き方を選んだのかを、種々のエピソードを交え多面的に描く。異色の歴史小説、待望の文庫化。
男が女に殺される。男が女を殺す。こうした犯罪の多くはセックスがらみである。警察の取調べでは事件の真相は解明できない。本編の主人公・矢吹はつひは未亡人の犯罪心理コンサルタントで、警察に請われて、容疑者や犯人と面談する。レイプ事件、連続娼婦殺人事件、不倫夫殺害事件…。東京で次々と起こる犯罪の裏に潜む犯人の犯行に至る心理を矢吹はつひが鋭く抉り、明解に解決するエロチック・ミステリー。
ワルキューレは夢を見た。眼下に果てしなく広がる厚い雲の割れ目から噴き出す巨大で真黒な帯。それは地上に暮らす人々の苦しみと悲しみにゆがんだ顔が幾千も集まった絶望のかたまりだった。『かつて時の鍵を奮いし村人、マーベルを暗黒の地に導きたり』人々の胸の奥に住む悪の心をかてとして生き続ける悪の化身ゾウナは、絶海の孤島に城を築き、満月の儀式を始める。マーベルランドには、はるか昔から伝わる時の鍵の伝説がある。天の使いワルキューレはマーベルに元の時の流れをとり戻すことができるのだろうか。彼女をとり巻く精霊たちの宿命とは…。時の鍵のもつ真意がいま解き明かされる。
国際刑事機構のムッシュ・アムールこと妻恋警視にアメリカ大統領から、「西海岸にはびこる麻薬密輸ルートを撲滅せよ」との極秘要請が届いた。早速、美人部下を引き連れてビバリーヒルズに飛んだが、相手は兇悪な麻薬シンジケート、すかさず次々と妨害工作を仕掛けて来る。遂にはハリウッド有名女優の娘に虐殺予告まで届いて事態は深刻化する一方…。
満ち足りない日々を送る中年の主婦エヴリンは、ふとしたことから快活な老女ニニーと知り合う。ニニーが語るのは、数十年前のアラバマに生きた自由奔放な女イジーと物静かな美女ルースの物語。女たちの生き方、友情、愛を描いて、心に焼きつく不滅の傑作。
19世紀末。アイルランドの貧しい農民の子に生まれたジョーゼフは大地主に家を焼かれ、土地を奪われる。復讐を決意したジョーゼフは地主の屋敷に忍びこむが、反対に囚われてしまう。処刑寸前に地主の娘シャノンに救出されたジョーゼフは、シャノンとともに2人の共通の夢のために、新天地アメリカへ向かう。だが、たがいに反発しあいながらも惹かれあう2人に苛酷な運命が待ちうける…。
本書では、グロテスク・リアリズムの手法によって浮き彫りにされる「三言」的世界の諸相を、犯罪の視角、欲望の充足を目指すエンターテイメントの快楽、異界への志向、排除の構造、などの角度から探ってみた。
地球の環境破壊が深刻化した『鉛の時代』に人々の生活を守ろうと「ドーム・シティ」の建設が進められる。その計画を巡って国際連合は、対峙する宇宙開発局からバイオ・メタル・システムを奪取せんと企む。ルナ・シティでの攻防戦に、少年シタールが巻き込まれ…。近未来を舞台に巨大なスケールで綴られるアクション。