1993年4月発売
鎌倉で出会った少年は、一年前に交通事故で亡くした夫・和彦によく似た面差しを持っていた。若きピアノ教師・美袋由紀子は、その不可思議な少年・氷川橡にだんだん魅かれてゆく。一方、夫や兄のかつての同僚である産婦人科医・佐久野、柴崎が、次々と変死体で発見された。それぞれの現場には『運命の輪』のタロットカードが…。惺旺大学医学部に事件の鍵があるとみた警視庁捜査一課の須賀刑事は、氷川橡とその出生にかかわる十八年前の出来事にいきあたった。狂気の連続殺人にからむ数奇な運命。渾身の本格推理。
新しくきたチャドウッド伯爵に援助を断られ、オリヴィアは茫然としていた。先代の伯爵が亡くなってから一年、食べるものさえ満足にない村の暮らしは困窮をきわめていた。その帰り道、村の若者にナイフで刺されて重傷を負った伯爵をオリヴィアは助けるはめになった。村人たちの暴動をなんとかおさえなければ…。意識不明の伯爵を前にして、オリヴィアは一計を案じた。
通産省に就職が決まっていた東大生が、卒業式の二日後に原因不明の自殺を図った。事件の取材を始めた新聞記者が、遺書の中の謎の言葉に導かれて意外な真相に辿りつく。しかし、その先には、さらに驚くべき展開が待ち受けていた…。脆くて幼い現代の若者達。彼らを取り巻く犯罪の構図を、社会心理ミステリーの旗手が鮮やかに描く意欲作。
男は人を殺してみたくてしようがなかった。金なら腐るほどあるし、容姿は映画スターなみ。地位や名声にも恵まれている。それでも男は歪んだ欲望に衝き動かされ、一人の悪徳刑事を抱きこんである殺人計画を実行に移そうとしていた。そんな彼らに、いま一人の刑事が疑惑の目を向けたとき…。ひねりの効いたウィット、そして絶妙な人間描写。まさにレナードの真骨頂を示す名品。
常に小説の新境地を開くジュリアン・バーンズの最新作。今回は登場人物がすべて読者に直接語りかけるという斬新なスタイルがとられる。高校時代からの親友で何から何まで対照的な性格の2人の男が、ひとりの女性をめぐって恋の鞘当て。バーンズ独特の皮肉な視点で描く愛のゆくえ。フェミナ賞受賞。
「パストの覚醒」と呼ばれる天変地異を逃れ、わずかに残った土地のひとつ、ミイヤン・マース大陸の最南端に位置するエイファ半島は、文明の遺産である「かまど」のエネルギー、異変が目覚めさせたパストの魔法、そして文明が兵器として造り出した生物「龍」の微妙なバランスの上に均衡を保っていた。パスト教の聖地に近いシルクレブ湖の湖畔で、老龍匠・パザンの弟子として暮らす寡黙な少女ココは、ある日不思議な予感のもとに見慣れぬ金色の龍に出会う。北の蛮地に住むという幻の雷龍と運命的な邂逅をした少女は、兄を奪ったパスト教の宗主マフルスへの復讐を胸に秘め、しだいに龍匠としての己の能力に目覚めていくのだった-。新鋭が描く新感覚ファンタジーロマン。