1994年12月1日発売
夢にも見るほど憧れて慕う良寛さまに差し上げようと、今日も日がな一日七彩の絹糸で手毬をかがる若き貞心尼。-17才の秋に医者に嫁いで5年、夫の急死で離縁され24才で出家した長岡藩士の娘、貞心が、70才の良寛にめぐり逢ったのは30才の時だった。行商のいなせな佐吉に恋慕をぶつけたくなる貞心のもうひとつの心の安らぎと、師弟の契りを結んだ最晩年の良寛との魂の交歓を描く。
30年前の東京に迷いこんだぼくは、好きになった女の子のために、1959年に留まることを選んだ。だが、その7年後の東京で、父親がとんでもない窮地におちいっていることを知って、1966年夏に再びタイムトリップした。ビートルズ来日公演の舞台裏で父親がかかわる“もうひとつの事件”とは。いまや伝説ともなったビートルズ来日の異様な熱気と興奮に包まれた“あの夏”の冒険物語。
民族の悲願、独立国家の樹立を求めて暗躍する中東の少数民族クルド。かつて共和国が成立した聖地マハバードに集結して武装蜂起を企む彼らだったが、直面する問題は武器の決定的な欠乏だった。クルドがその命運を託したのは謎の日本人“ハジ”。武器の密輪を生業とする男だ。“ハジ”は2万梃のカラシニコフAKMをホメイニ体制下のイランに無事運び込むことができるのか。山本周五郎賞受賞作。
機は熟した。運命の糸に操られるかのようにマハバードには様々な人間が集まっていた。革命防衛隊副部長のガマル・ウラディ、隊員のサミル・セイフ、クルド・ゲリラのハッサン・ヘルムート、過去を抱えた女シーリーン、そして二人の“ハジ”も。それぞれの思惑が絡み合い、マハバードは今、燃え上がるー冒険小説の第一人者が渾身の力を込めて描く壮大なる叙事詩。山本周五郎賞受賞作。
電車の車内で、あなたは何をしていますか。時間を持て余した時、誰もがふと見上げる中吊り。JR東日本の中吊りに連載されて話題となった19編の「中吊り小説」が遂に一冊になりました。吉本ばななから伊集院静まで、当代きっての人気作家達が描く、恋愛小説、幻想譚、コント、エッセイ、メルヘンなどなど。単行本収録の8編に、文庫化にあたり新たに11編を加えたお得な完全版です。
16世紀にインカの帝王が国外へ送り出した財宝。その所在を記した工芸品はイギリスの海賊の手に落ちるが、その船もジャングルの奥深くへと押し流された…。1998年、ペルー南部で潜水調査中に失踪した考古学者たちの救出に向かったピットらは、国際的美術品窃盗団が盗品を隠匿している洞穴を発見。いよいよ窃盗団、ゲリラ、FBI、合衆国関税局を巻き込む壮絶な闘いが始まった。
激しい先陣争いの末に、ピットらはインカの黄金の所在地を突き止める。だが、窃盗団はルディ・ガンとピットのガールフレンドである下院議員を人質に取り、黄金の搬出に成功する。一味の目的地はモロッコ。ピットとジョルディーノが人質の救出に駆けつけた頃には、黄金を積載した飛行機はすでに離陸していたが…。機略と体力の限りを尽くし、ピットが再び国際的陰謀に立ち向かう巨編。
かつては外人部隊で勇名を馳せたアメリカ人クリーシィも今や五十歳目前、虚無感に陥りかけていた。そんな彼が、とあるイタリア人実業家の令嬢ボディガードに雇われ、十一歳の少女との心の交流を通じて人生に希望をとり戻してゆく。だが娘は何者かに誘拐・惨殺されてしまった。怒りに燃えたクリーシィは、たったひとり復讐に立ちあがるークィネルのデビュー作、待望の登場。
遭難のあとの熱い抱擁は夢だった。傷ついたスカーレットはサヴァナで知り合った父方のいとこのコラム神父らとオハラ一族の故郷アイルランドに旅立った。船中で妊娠を知ったスカーレットの歓び。しかしレットの一方的な離婚届と再婚の知らせに、身も心も引き裂かれたスカーレットはアイルランドに留まり、1875年晩秋に女児を出産。スカーレットと愛娘キャットの新しい生活が始った。
スカーレットがアイルランドのタラの地に再建したバリハラ館で、愛娘は日に日に賢さを顕した。いとこのコラム神父はフェニアン団だった。ダブリンの社交界にデビューしたスカーレットはフェントン伯爵から求婚された。1880年夏、スカーレットは友人の准男爵ジョンからレットの近況を知った。今ここアイルランドにレットがいる。彼が愛娘キャットの存在を知るのはもうすぐだ…。
「会社を倒産させようと思う」社長に打ち明けられた専務の松坂は驚愕した。不況のあおりで会社を支えきれなくなり、三週間後に受け取る手形を割り引いて会社に貸した金の回収と松坂の退職金に充当するという。経理の女と肉体関係を結び、甘い夢の見返りで帳簿を書き直させ、綿密な計画は順調に進むかに見えたが、思わぬ落とし穴が…。(逃亡の履歴書)。
あらゆる犯罪を憎み、非情なまでに冷徹な推理で犯人を追いつめる天才警視正・岩崎白昼夢。一人息子・翔が小学校入学を目前にひかえた年の暮れ、岩崎は鬼の捜査一課長から呼び出しを受け、子育でに専念するための休職中であった妻・みずえ警部補に復帰の指令が下された。彼女の復職を前に、岩崎は妻子を連れて、豪州での華麗なる休暇と洒落こむが…。
孤児で天涯孤独の大学生梓乃は、自分の出生の秘密をもとめて卒論に「姪子神」を選ぶが、それがそもそもの事件の発端だった。吸いよせられるように、瀬戸内の孤島へむかう梓乃と恋人の勇哉。そして、そこで梓乃たちが見たものは…。日本伝奇小説の旗手・嶋田純子があざやかに、官能的に織りなす、伝奇ロマンの愛の世界。