1995年11月10日発売
十六世紀初め、土豪たちがひしめく中国山地の小領主、毛利元就のもとに、「鬼」といわれる吉川国経の娘が輿入れした。権謀術数うずまく乱世にあって、ふたりは否応なく戦国の夫婦として生きていくことになる。互いに支え合い、やがて元就は頭角をあらわし名将への道を歩み始め、ふたりのつむぐ明るい未来は近づきつつあった。
中国地方は大内氏と尼子氏の二大勢力が根をおろし、そのはざまで元就はたえまなく翻弄されていた。しかし、政略結婚でありながらまれにみるほど愛された妻の天性の明るさに支えられて、元就は次第に実力をつけ、一歩一歩戦国大名への階段を上っていく。乱世を生きぬく武将とその妻を描いた、長篇歴史小説。
郊外の一戸建てに住む城戸家は仲のよい夫婦と息子の三人家族。春、妻が妊娠した。後妻の絢子にとっては新婚の象徴ともいえる出来事だ。だが、十五も歳の離れた兄弟が出来ることになった息子は当惑し、夫は「まさか…」という言葉が出そうになる。やがて、絢子には思いもよらぬ事が次々と城戸家に起こって…。ガラスの家族が演じる偽りの“幸福物語”の終幕は-。書下ろし恐怖心理サスペンス。
日本の強制収容所で終戦を迎えた9歳のダーチャ・マライーニは、1947年、家族とともにシチーリア島バゲリーアへ帰郷する。祖父母の暮らす壮麗な館。咲き乱れる花々。はるかにつづくオリーブ畑とレモン畑。愛も死も性も、破滅も栄華も、すべてがあらわなこの島で、少女は目覚めてゆく。やがてマライーニは、一族と訣別し、島を出て作家として歩みはじめる。シチーリアを遠ざけて生きた長い年月。だが、数十年の時を隔てて館に足を踏みいれたとき、埋もれていた少女時代の記憶とともに、幾多の祖先の姿までが、あざやかに蘇ってくるのだった。もう一つのイタリア、シチーリアの過去と現在を描き、本国で好評を博した秀抜なノンフィクション・ノヴェル。
「わたしは信仰を失った」そう自戒したイエス13番目の使徒は傷心の旅に出、先輩使徒たちを歴訪する。そして最後に、アフリカのメロエで、アリマタヤのヨセフの元奴隷に出会い、そこで目撃した事実とは…。そして現代、シカゴ大学の教授オハンランと大学院生ルーシーは、いまだ解明されていない古代メロエ語で書かれた福音書を解読する手がかりを得るために、ヨーロッパ、中東、アフリカを旅する。伝承によれば、その最終章に書かれている事実は、カトリック、プロテスタントばかりでなくユダヤ教、イスラム教をも大恐慌に巻き込み、終末に結びつくという。そのため、この福音書を巡る各宗派の争奪戦が繰り広げられることになった。ヨーロッパ、中東、アフリカ、アメリカを舞台に古代と現代が織り成す壮大な長編ロマン。
厳冬のシカゴの公園で、氷と雪に閉じ込められた男性の射殺死体が発見された。シカゴ市警の警部補ノラ・カラムは、被害者の指輪と腕時計に彫られた文字を手がかりに捜査を開始したが、事件の背後には、旧ソ連の宇宙探査機打ち上げ計画にまつわる驚くべき秘密が隠されていた。そして、捜査陣をあざ笑うかのように、同じ場所で第二の殺人が起きた。
仁明帝、東宮、在原業平、僧正遍照などとの様々な恋に懊悩し、情熱的な和歌の才能を発揮した六歌仙の一人、小野小町。絶世の美女とも謳われた華のごときその生涯を通して、平安時代の豊かな男女の関係のありようを浮かびあがらせた物語。
ー恋する者はたえず心の中で走り回っており、新たな奔走を企て、自身に対する策謀をめぐらしつづけてやまない(R・バルト)-“あちらこちらを走り回る”という意を表しもする“ディスクール”本来の「野性的な」実践を通して、“恋愛”をもっともピュアーなかたちで描き出した刺激的快作。
人間の飽くなき想像力が生み出した“ホラー”という暗黒の迷路。『フランケンシュタイン』『サイコ』『ゾンビ』『キャリー』『エイリアン』…古典・現代を問わず、あらゆるメディアにまたがって数多くの作品を一挙紹介。豊富な知識で語る案内人は、巨匠スティーヴン・キング。戦慄と恐怖の調べの中「死の舞踏」が今始まる。
戦国乱世を、智恵と度胸で生き抜き、太閤の位にまで登り詰めた、豊臣秀吉の一生と、彼をめぐる女性たちの姿を生々と描き切る…十四歳から苦楽をともにしてきたねね、永遠のあこがれお市、その影を追ってやっと側室のひとりとした茶々など、戦国期の女性像。
恋人に促されてアリスがたどり着いた場所は、人里離れた地の一軒の屋敷だった。そこには、仮面で顔を隠した主人と5人の少女たち。さらに、放尿、緊縛、レズ、と次々起こる出来事…。少女たちと男が交錯し、求め合い、絡み合う。ゲームの持つ淫靡で繊細な世界観を、新進気鋭の作家・藍里司が鋭敏な感覚で描写する。フェアリーテールが送る衝撃的名作を、ゲームを越えたクオリティとボリュームで小説化。