1995年6月9日発売
受け月受け月
人が他人のために祈る時、どうすれば通じるのだろうか…。鉄拳制裁も辞さない老監督は、引退試合を終えた日の明け方、糸のようなその月に向かって両手を合わせていた。表題作ほか、選考委員の激賞を受けた「切子皿」など、野球に関わる人びとを通じて人生の機微を描いた連作短篇集。感動の直木賞受賞作。
殺す風殺す風
ロンの妻が最後に彼を見たのは、四月のある晩のことだった。前妻の件で諍いをした彼は、友達の待つ別荘へと向かい──それきり、いっさいの消息を絶った。あとに残された友人たちは、浮かれ騒ぎと悲哀をこもごも味わいながら、ロンの行方を探そうとするが……。自然な物語の奥に巧妙きわまりない手際で埋めこまれた心の謎とは何か? 他に類を見ない高みに達した鬼才の最高傑作。
鈍い球音鈍い球音
東京タワーの展望台から一人の男が忽然と姿を消した、トレードマークでもある口髭とベレー帽を残して──。折しもプロ野球日本シリーズ開幕直前、消えたのは弱小球団を大一番まで導いた監督その人だった。一転窮地に追い込まれた球団は代理監督を立ててシリーズに臨むが、白熱する試合の裏では更なる不可解な事件が。野球小説とミステリの興趣が間然するところなく結びついた快作。
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