1996年7月31日発売
今から三十年前のパリ。二人の男が一人の女に恋をした。しかし女が選んだのは別の男。失意の二人。一人はそのまま失踪し、もう一人は東南アジアへ旅立ち、マレーシアのゴム園の臨時経営者に雇われ、汗みずくで成功を手にした。そして時は流れ、現代に。相続人の夫妻がゴム園に乗り込んできて、地位に不安を抱いた男は、現地人労働者達を煽動して反乱を企てる。男は武器を調達するため三十年ぶりにパリに戻り、暗黒街とつながる甥を巻き込み、ル・アーヴルから出る貨物船に潜り込んで、いざ出撃。
21世紀、偶発核戦争の勃発により人類文明は崩壊した。残されたのは地球上空を巡る三つのスペース・コロニーと月基地のみ。だがそのおのおのは補給を絶たれ、孤立無援の状況に陥っていた。ロシア人研究コロニーは他国との協力をこばみ、交信を絶った。アメリカの工業コロニーでは生存のため、合理性の権化のような指導者によって常軌を逸した非常手段が取られようとしていた。孤絶した各コロニーに生き残る途はあるのか。
唯一食糧を自給できるフィリピンのコロニーから使者として送りだされたラミス少年は、真空中を帆走する生物を操ってアメリカの工業コロニーに辿りついた。あとはロシア人のもとへ赴くだけだ。アメリカ人により開発された超強靱なハイテクワイアーの存在を知った彼は、大胆きわまりない策を実行に移すー軌道上のコロニーをひとつに結びつけるために。気鋭の科学者作家コンビがサスペンスフルに描く、傑作宇宙冒険SF。
本書は、70年代のもっともすばらしい私立探偵小説といわれる『さらば甘き口づけ』の続篇にあたり、国際推理作家協会が主催するハメット賞を受賞するなど高い評価を得た作品である。魅力的な登場人物たち、想像力豊かで奔放なプロット、詩情豊かな語り口など、クラムリー節は相変わらず健在だ。ハードボイルドの最高峰クラムリーの入魂の最新作。
「あのとき宇宙から地球へ逃亡してきたレプリカントは、六人いたのよ」サラ・タイレルの言葉に、デッカードは愕然とした。「タイレル社に侵入しようとしてまず一人が死んだ。そして、あなたが四人殺した。これで五人、でも、もう一人、六番めのレプリカントがいた。あなたにそいつを捜しだして欲しいの…」あのめくるめく事件から9カ月、オレゴン山中の山小屋でのささやかな安息の日日も、レイチェルそっくりの女性、いまやタイレル社の総帥となったサラ・タイレルのこの言葉によって終わりをとげた。拒絶すれば、死-レイチェルの死だ!かくして、2020年8月、荒廃したロサンジェルスを舞台に、デッカードの新たなる探索が開始された。なんとしても謎のレプリカント-六番目のネクサス6型レプリカントを捜しだすのだ、愛するレイチェルを、そして自分自身を救うために…。
アードウィック伯爵は激怒していた。内密に婚約していたヘロイーズから一方的な破棄を宣告されたからだ。そんな折り、馬車の事故に遭遇し、弟連れの美しいルピータを救いだす。二人の父親とは旧知の間柄で深刻な事情があることを知った伯爵は姉弟の後見人をかってでた。そして、婚約者と出席する予定だった注目の仮装舞踏会へルピータを同伴しようと思いつく。その当日、華麗なるクレオパトラに扮して、ルピータがあらわれた…。