1998年1月30日発売
世紀末日本文芸の堕天使が恥と挫折まみれのダメ人生を笑いのめす最高小説集!金がなく職もなく潤いすらない無為の日々。そんな私に人生の茶柱は立つのか?!その過激な堕落の美学で絶賛を浴びた「夫婦茶碗」、金とドラッグと女に翻弄される元パンクロッカーのワイルド・ライフを描いた「人間の屑」。ポストバブル世代の福音書。
エクアドル東部のアマゾン上流、「牧歌的な村」エル・イディリオにも開発の波は押し寄せています。生活を脅かされた先住民や動物たちはさらに奥地へと移動しています。そんなある日、外国人の惨殺死体が運ばれてきます。人間たちの横暴によって追いつめられた山猫(オセロット)が人間を攻撃してきたのです。動物たちを知りつくしている老人も山猫討伐隊に加えられます。自分の身と生活環境を守るために人間を襲った山猫に、老人は引き金を引くことができるのでしょうか…湿った森の豊潤な世界を舞台に、人間の野蛮さを静かに訴える珠玉の小品。
次世代電子機器を飛躍的に小型軽量化するプロジェクトのデモ(評価会)当日、ロボットが暴走、死者が…究明調査を行なう若手技術者の堀川俊介は、衆人環視のなかでの密室殺人の疑いを抱く。彼の心には、昔、大地震に襲われたさい、少女を見捨てて逃げたトラウマがあった。一方、幼いころの記憶を失っている葛城翔子は、同棲相手の柳瀬昇の行動に不安と不審を感じていた。柳瀬は、堀河らが進める開発にスタッフとして参加していた…。禍々しく錯綜した人間関係を背景に、最先端技術の開発を巡り、技術者同士のプライドを賭けた凄まじい角逐が織りなす、著者渾身の書下ろし企業ミステリー。
見知らぬ国の法廷で、自由への闘いを挑むアフリカの男たちと、言葉の壁に苦戦するアメリカ人弁護士。やがて彼らは、互いの不信感を乗り越え、静かな友情を結んでいく-。奴隷制廃止にむけての歴史的転機となった事件に取材した、ヒューマン・ドラマ。
地獄はどこにある?仕立屋ジューヌと愛する妻コルブリューヌ。冥界の領主との約束は果たして守れるのか-。忘れることの恐怖を主題に、人間存在の深淵を抉りだした、現代フランス文学の鬼才による美しい愛の物語。忘却と記憶、顔と言語、無意識と欲望を根源的に考察する哲学的エッセイ「メドゥーサについての小論」を併載。