1999年11月発売
ビリーには誰もが惚れこんだものさ-心やさしく、筆まめな男、気のきいたおしゃべりで周囲を楽しませる陽気な男。第二次世界大戦から帰ってきたビリーといとこのデニスは、ロングアイランドの海辺で、アイルランドからやって来ていた娘エヴァとその姉メアリに出会い、恋に落ちた。夏が終わり、きっと戻ってくると約束してエヴァは故郷へ帰っていった。ビリーは連日、エヴァに宛てた手紙を書き、もどってくるときの資金まで工面して送りつづけた。だがある日、エヴァがアイルランドで亡くなったとの知らせが…。それ以来、ビリーはあの弾けるような輝きをすっかり失ってしまい、デニスや周囲の者は心を痛めた。後年、アイルランドを訪れたビリーがそこで見たものとは…。ひとりの女性をひたむきに想いつづけた男と、彼をとりまく人々の人生を通し、生への限りない希望を謳いあげる珠玉の物語。全米図書賞受賞作。
32世紀、“連邦(ヘゲモニー)”の“崩壊(フォール)”から約300年後、人類星域はふたたびひとつにまとめられ、カトリック教会を主体とするパクスの支配下にあった。辺境の惑星ハイペリオンの若者ロール・エンディミオンは、死刑判決を受けたものの謎の老人に助けられ、驚くべき依頼をされる。もうすぐ“時間の墓標”から出てくる少女アイネイアーをパクスの手から救いだし、少女が宇宙の命運を決める“教える者”となるまでいっしょに旅をしてくれというのだ。さらには、史上最強の権力を誇るパクスを滅ぼし、教会を権力の座からおいやってくれという。できるかどうかわからないものの、頼みを引き受けたエンディミオンは、少女アイネイアーとアンドロイドのベティックとともに星から星へと宇宙をめぐり、ついに惑星・地球にたどりついた。そして、さらなる冒険へと旅立とうとしていた。いっぽう、新教皇ウルバヌス16世ひきいるパクスは、大天使型戦艦の機動艦隊を非キリスト教徒であるアウスター討伐に送りだす。さらに“テクノコア”の恐るべき手先たちがアイネイアー追跡を再開したのだが…ヒューゴー賞をはじめ、英国SF協会賞など数々の賞に輝く、壮大な未来叙事詩ハイペリオン・シリーズ、待望の完結篇。ローカス賞受賞。
JR大宮駅北側の陸橋から、高崎線上り列車めがけて投げ落とされた、身元不明の死体。警視庁捜査一課の馬田権之介刑事は、二ヶ月前にも同じ場所で主婦の投身自殺があったことを聞き、その関連性に首を捻った。一方、“日本アンタレス旅行社”に勤務する水乃サトルは出張先の諏訪で、かつての同僚安場今日子から、行方不明の父親昭一の捜索を依頼される。昭一は郷土史研究家として有名で、武田信玄の墓を探索中であったという…。稀代の美形かつ変人名探偵・水乃サトルが挑む、驚天動地のアリバイトリックの真相は。
耽美派女流作家の巨匠、重松時子が薬物死を遂げてから、すでに四年。彼女と縁の深い女たちが、今年もうぐいす館に集まり、時子を偲ぶ宴が催された。なごやかなはずの五人の会話は、謎のメッセージをきっかけにいつしか告発と告白の嵐に飲み込まれ、うぐいす館の夜は疑心暗鬼のまま、更けてゆく。やがて明らかになる、時子の死の真相とは?期待の新鋭、待望の長篇ミステリー。
1999年のクリスマス、イスラエルに流星が降り、軍の秘密のバイオテクノロジー研究所が一瞬で破壊される。さらに2000年が到来した瞬間には、聖地エルサレムが大地震に見舞われる。そうした混乱のなかから、不思議な能力を持つ一人の美しい娘ジーザが現れ、次々と奇跡を起こしていく。人々は彼女こそ救世主だと讃えるが、一方で、彼女は破壊された研究所の実験体ではないかという疑念が浮かび上がる。果たしてジーザは神の遣わした真の救世主なのか?それともバイオテクノロジーの怪物なのか。
ミス・リードが校長に就任した南イングランドのフェアエーカー村小学校の掃除婦ミセス・プリングルは、気難しいが比類のない働き手。ミス・リードが初めて村の学校のロビーに泥足を踏み入れたとき、開口一番冷やかなスタッカートで、「そこ、掃除したばかしなんですがね!」。それが、何年にもわたって続く戦闘の第一弾であった。ミス・リード着任のいきさつから、村のタフな好敵手ミセス・プリングルとの出合いと交渉。主人公ミス・リードと心優しい村人たちとのふれ合いを、辛辣ななかに暖かな眼差しをたたえてユーモラスに描く。中村妙子訳ミス・リード・コレクション第5冊。フェアエーカー物語シリーズ。