1999年4月9日発売
水鳥の関 下水鳥の関 下
娘の千とせとともに、実家の本陣・汐見家で恋しい清次郎と結ばれる日を待つお美也だが、清次郎は藩主の口添えで他家の養子となり、二人の縁は遠のいていく。たとえ生涯結ばれることがなくても、清次郎を信じて生きていくと心に誓うお美也…。運命の荒波に抗い、幸福を模索する女の人生を細やかな筆致で描く会心作。
長城のかげ長城のかげ
楚漢戦争とよばれた項羽と劉邦のたたかいは混乱をきわめ、臣下は主にそむき自らの利に奔ってなお不名誉とされなかった。貴族の血胤たる項羽にたいし平民出身の劉邦。しかし帝位は天が命ずるものである。本書は、覇をあらそうふたりの英傑のすがたを、友、臣、敵の眼に映ずるまま、詩情ゆたかに描いた名篇集。
昨日の恋昨日の恋
文化三年の大火で孤児となった爽太が芝露月町の鰻屋「十三川」に引き取られてはや十三年。おふくとの間に二人の娘をもうけ、幸せに暮らす身だ。が、爽太には若主人の顔とは別に、同心朝田主馬から十手を預かる岡っ引きの顔があった。表題作ほか「おろくの恋」「残り火」など江戸下町情緒溢れる連作短篇七篇。
カノンカノン
学生時代の恋人が自殺する瞬間迄弾いていたバッハのカノン。そのテープを手にした夜から、音楽教師・瑞穂の周りで奇怪な事件がくり返し起こり、日常生活が軋み始める。失われた二十年の歳月を超えて託された彼の死のメッセージとは?幻の旋律は瑞穂を何処へ導くのか。「音」が紡ぎ出す異色ホラー長篇。
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