1999年7月15日発売
「右手を見せてくれ」。スーパーで万引犯を捕捉する女性保安士・八木薔子のもとを訪れた刑事が尋ねる。3年前に別れた不倫相手の妻が殺害されたのだ。夫の不貞相手として多額の慰謝料をむしり取られた彼女にかかった殺人容疑。彼女の腕にある傷痕は何を意味するのか!?第42回江戸川乱歩賞受賞の本格長編推理。
時は天正十八年。豊臣秀吉麾下二万余の軍勢に対し、わずか数百人の手勢を率い北条方の小城・忍城を守る美貌の麻也姫。姫を陰に陽に護るのは、忍びの者として天下に鳴る風摩組。中に割って入る戦場荒らしの七人の香具師は、麻也姫の貞操を狙う。香具師vs.風摩忍法、武州の地で機智と詐術を巡す縦横の戦い
時はご維新、所は東京。異国文化の流入に揺れる文明開花のご時世であった。もと岡っ引きの善七は、上司の市中取締組の宮本少警部と殺人事件の捜査にあたるうちに、裏にひそむ陰謀の渦中に…。やがて事態は善七の女房のおせん、息子のステ吉、火消しのかしらのサクジ、謎のアメリカ人たます、黒人の花魁ばるばなどを巻きこんで、思わぬ方向へと展開しはじめるー架空の明治時代を舞台に、軽快な語り口がさえる奇想活劇。
2021年、世界中でなぜか子供が生まれなくなり四半世紀が過ぎた。絶望と無気力が蔓延するなか、イギリスでは国守ザンが絶対権力を握っていた。ザンのいとこで大学教授のセオは、反体制組織の女性と恋に落ち、組織のメンバーからザンの執政の恐ろしい裏側を知らされる。やがて組織がザンに目をつけられ、その女性が助けを求めてきた時、セオは思わぬ逃亡生活の渦中へ…ミステリ界の頂点に立つ著者が新境地を拓いた話題作。
偉大な詩人エミリー・ディキンスンの没後百年シンポジウムは不穏な空気につつまれた。参加者の間でディキンスンの写真の真偽をめぐる激しい対立が起き、式典で大役を務めた学生が失踪したのだ。これらの間には何か関係が?元刑事のホーマー・ケリー教授が調査に乗り出すなか、遂に死者が出た!ちょっぴり辛辣なユーモアに彩られたネロ・ウルフ賞受賞作。
それは確かに手負いの雄鹿のはずだった-。だが、銃声がおさまったあと、野薔薇の茂みの向こうに倒れていたのは、まだ若い女性の死体だった。山中にひとり住み、密猟で生計をたてていたムーンにとっては、逃げ場のない罠にかかったような事態だった。前科があるので、通報すれば刑務所入りはまぬがれない。だが幸いにも、現場は人影のない山奥の石切場、彼女もどうやら家出でもしてきたらしく、この近辺の人間ではない…ムーンは手近の洞窟に死体を隠し、知らぬ顔を押し通すことにした。近くにあった彼女の持ち物のなかには思いもかけぬ大金があったので、これも持ち帰った。こうすれば、事件が表沙汰になることもなく、そのまま忘れさられるはずだった。しかし、彼女の恋人と思われる男が出現し、事態は一変する。あわてて死体を隠した洞窟へと走ったムーンは、そこで愕然とする…。一発の銃弾をきっかけに、徐々に追い詰められてゆく男の、恐怖と焦燥。人跡も稀な山中で展開される、異色サスペンス。
わたし眠るのが恐いんです。結婚を目前に控えた市川倫子と名乗る女が、量子のカウンセリングルームを訪れた。幸せの最中にある彼女がなぜ悪夢を。量子が倫子の夢を「追見」すると、ある忌わしい記憶が。難事件に挑む三上量子と、彼女を手助けするもと夫の私立探偵・四方晴彦の活躍を描く新感覚サイコミステリーの第一作『浅い夢の記憶』を併録。
警視庁捜査一課に赴任してきたばかりのノンキャリアである西条洋一。女性器近くの内腿に“S”の刻みをのこし、必ず29日に起こる連続婦女殺人事件を追う一方で、ベテラン刑事・大滝の思惑で監察医・高木伊織と共同生活を始める。徐々に高木の不思議な魅力に惹かれていく西条だったがやがて連続殺人事件の捜査線上に、高木の姿が浮かび上がる…。洋一に襲いかかる容赦のない戦慄と苦悩。世紀末ミステリー・衝撃のデビュー作。